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過去と今日の執着

私は幼い頃から二十歳までずっと闇の中にいた。それは毎日生きていたくない、というただ真っ暗な闇。それなりに楽しいことはあったけれど基本的にはずっとそうだった。

この先の人生をいくら想像してみてもいいことはひとつもなくて、生きている意味が分からなかった。私を必要な人はこの世に一人もいないと疑わなかったし、むしろいなくなった方が、みんなにとって良いとさえ思っていた。

そんな私が恋愛に夢中になれるはずもなく、人を好きになることも殆どなかったし、好きという感情自体よく分からなかった。高校生のころ彼氏という名前の存在は出来たけれど、それは幻想のようなもので付き合ったらなんだか全然違った。ほんの二ヶ月。手を繋いだだけで終わった世界、あれは恋愛とは呼べないと思う。だから二十歳で出会った今の恋人が、花火大会で手を繋ぐことと異性と二人きりのカラオケとプリクラ機以外は、全部はじめてだった。闇から救い出してくれたと思う。衝撃だった。誰かに想われるってこんなにも満たされるんだ、明るくて眩しくてこんなに幸せでいいのかなって少し不安になりながら、LINEが届くのが嬉しくってたまらなくて、くれる言葉は全てが愛おしくて、毎日がキラキラと輝いていた。ああみんなが楽しそうだったのはこれだったんだ、疎ましく羨ましくてたまらなかったのに、面倒そうだと自ら遠ざけたものが、この手の中にあって。どこへいっても何をしても楽しかった。だって大好きな人と想い合っているんだから。

付き合って四ヶ月で一緒に暮らし始めた。私の日々と彼の日々が同じ家の中にある。とてつもないことだった。一緒にご飯を食べたり、たまにデートをして一緒の家に帰る、コンビニまでの夜の散歩。それだけでよかった。


だから今の私は求めすぎているんだと思う。幼いころからのコンプレックスが執着へと変わり、相手にもそれを求めてしまう。私の幸せが恋人の幸せとは限らないのに。生きるのって本当に難しいな。
光を知るともっともっと明るいところへ行きたくなる。なのに私の暗い部分は変わらず私の中にあって、どうやっても変えることができない。恋人は私の暗い部分を慰めることはできないと言った。大好きな人がやりたくないことを求めている自分に悲しくなった。変われない私と折り合いを付けられない感情。切なさと虚しさに、どうやって向き合い、追いやればいいのだろう。ああ私はきみに見合う女の子になりたいな。

私の執着は結婚して幸せな家庭を築きたい
大好きな恋人とずっと一緒にいたい
毎日笑顔で幸せに暮らしたい

多分私が求めているものは結婚したからって手に入るものじゃない。やっと最近分かってきた。自分の気持ちを噛み砕いて見えてきたものに、理由を付けてやっと。

結局お互いの気持ちが同じ方向を向いていないと結婚は出来ない。だから今は出来るはずない。
恋人に言われた言葉を思い出すとただ結婚したいと言っていた私が馬鹿みたいで悲しくなったけど、私はそんな私のことだって肯定したい。
そこだけは誰も認めてくれなくても私自身が認めることにした。いつも自信がなくて自分を否定してばかりだけど。
少しだけ前に出る私にとっての大きな一歩。

夢に見たものから少し離れて、今の自分にもう少し集中してみる。
恋人のため、恋人が、じゃなくて私の人生は私中心に回す。寄りかからないで一人でも、行く先が決められる私でありたい。