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峰なゆか(2020)『AV女優ちゃん1』の感想

峰なゆかさんの『AV女優ちゃん1』を読んだ。2020年12月に扶桑社から出版された本である。

ジャンルとしてはコミックエッセイに相当するのだと思う。フィクションとノンフィクション、おそらく著者自身の体験や他人のエピソードが編集されたもので、大変わかりやすかった。

そして、AV女優という職業の過酷さはもちろんのこと、あまりに安すぎるギャランティに驚く。これでは一生分の貯金などできやしない。

これまで、AV女優のインタビューは、多くの男性ライターによって書かれてきたが、それと比べれば、リアリティと迫力が段違いである。

痛いだけ、寒いだけ、苦しいだけ、まずいだけ、気持ち悪いだけ、という感覚が率直に描かれており、AVのファンタジーの世界にどっぷり漬かっている人たちには、ぜひ読んでほしい。私たち、生身の人間は大体同じで、特別な人など、それほど多くない。ノーベル賞受賞者、オリンピック選手やシルクドソレイユ、中国雑技団のようなパフォーマンスができる人が限られているように、凡人ができることではない。真似もするものではない。

しかし、描かれていることの衝撃にばかり、注目が集まっては、もったいない。

ネームの流れ、画面の構成、構図、人物描写などを見れば、彼女が手練れであることがわかる。漫画が大好きで、漫画をよく知っている人だ。漫画的表現や技法がふんだんに使われている。元AV女優が漫画家になったのではなく、漫画家がAVに出ていた、と言った方が適当ではないだろうか。

巻末の田嶋陽子との対談で「再就職できないのは、専業主婦もAV女優も同じですね」と言っていた彼女だが、これからどんどん漫画を描いていってほしい。

子育てエッセイでもいいし、SFものでもいい。職業漫画家として、さらに成功できる人だと思う。

このコロナ禍で、みな片手にスマホを持っており、漫画を読む人は増えている。彼女にとっては、ちょうどいい転職だったのではないだろうか。


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