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#映画感想文『ドリームガールズ』(2006)

映画『ドリームガールズ(原題:Dreamgirls)』を観た。

監督・脚本はビル・コンドン、出演は、ビヨンセ、ジェニファー・ハドソン、ジェイミー・フォックス、エディ・マーフィー。2006年制作、131分の豪華なミュージカル・音楽映画である。ザ・スプリームス(The Supremes)がモデルで、そのデビューから解散までが描かれる。

公開当時、「ビヨンセがジェニファー・ハドソンに食われている!」と話題になっていた。実際、見てみたら、しっかり食われていた!(笑)

この映画は、黒人音楽が南部ローカルに流通しているだけの状況から、白人(マジョリティ)の市場に乗り出していくさまが描かれている。はじめは、その戦略を練り、興行を成功させていくプロデューサーのカーティス・テイラー・ジュニアが頼もしいのだが、成功するにつれ、綻びが出てくる。

エフィ(ジェニファー・ハドソン)と付き合っていたはずなのに、ディーナ(ビヨンセ)に手を出す。彼女たち専属の作詞作曲家のCCを騙したり、搾取しているシーンも描かれる。妻のディーナの挑戦を全否定して、やらせなかったりする。カーティスは、単なる社長ではなく、やはり家父長的な立場を取り、女性と弟分的な男性から収奪しているように見え始めるのだ。

(これは、映画『リスペクト』『エルヴィス』でも共通して描かれており、やはりアーティストが売れると、アーティスト自身のパワー、発言権が強くなり、パワーバランスが崩れてしまう、ということなのだろう)

興味深かったのは、ジェームス(エディ・マーフィー)が腰を振って歌を歌うシーンで、紳士淑女の白人たちが不快感をあらわにして客席を立つシーンだ。今年(2022年)、公開された『エルヴィス』でも描かれているのだが、年頃のお嬢さんたちの心を鷲掴みにしたのは、その腰振りだったのである。それは黒人のR&B、ソウルミュージックでは、よくあるふるまいだったのだろう。白人のエルビスがやると、白人の女の子たちは、いけないものを見てしまったような顔をしても、発狂するかの如く喜んでいた。しかし、黒人がやったら、ドン引きで、罰せられたりするのだ。(まあ、エルビスも罰せられていたのだが、白人なので、名誉の負傷程度で済む雰囲気だった)ああ、人種差別ってのは根深いな、と思う。その一方で、黒人が作り上げた音楽文化の強靭さも垣間見ることができる。

この映画の凄さは、何と言っても、ジェニファー・ハドソンなのだ。日本でビヨンセはディーバと呼ばれ、声量がすごいとも言われていた。ただ、ジェニファー・ハドソンを前にすると、「声が細い」という評価になってしまう。テレビで見ても、ジェニファー・ハドソンの声は凄まじい。喉とか、横隔膜とか、腹式呼吸を超えて、彼女の身体のすべてが楽器のようなのだ。ただ、ここまで際立った存在になってしまうと、脇役はできないので、大変だろうな、と思う。アレサ・フランクリンの伝記映画リスペクトを見て、また再確認もしたくなった。

やっぱり、音楽映画・ミュージカル映画は最高だ。歌で罵倒しあうとか、悲嘆にくれるとか、表現として極上だと思う。どんどん見ていきたい。

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