映画『MINAMATA』(2020)の感想

映画『MINAMATA』を映画館で観てきた。監督はアンドリュー・レビタス、主演のジョニー・デップは製作にも関わっている。115分のアメリカ映画である。言語は、英語と日本語で、不自然な日本語はまったくなかった。(というのも、真田広之が現場で監修してくれていたらしい)

ジョニー・デップもすでに58歳で、還暦に近い。若い頃から売れている人なので、おじいさんに近いおじさん役であることに驚いたが、全然違和感はない。体のだらしない感じも様になっている。

ジョニー・デップもDV裁判で敗訴してしまってからは人生が変わってしまったのだと思う。燦然と輝くハリウッドスターの地位からは下りるしかなった。だからこそ、公害をテーマとした映画を作ろう、という気になったのかもしれない。

(結婚生活に挫折したであろうブラッド・ピットにも、哀愁を感じる)

わたしは写真家のユージン・スミスは、名前だけ知っていた。この映画で、ここまで水俣病の問題に深く関り、当事者になっていたことをはじめて知った。

ジーンと呼ばれる彼は、アルコール中毒でやさぐれ、家族とうまくいっておらず、仕事も悲惨な状況にある。そこから、アイリーンという日米のハーフの女性に「水俣病の問題を世界に知らしめてほしい」と依頼され、熊本県水俣市へ旅立つ。

日本側のキャストも豪華で、真田広之、浅野忠信、加瀬亮が、公害の被害者として出演している。チッソの社長を演じた國村隼はずっと目が怖い。英語はうまい。

ユージン・スミスが気まぐれにカメラをあげた少年は、天使のように愛らしかった。

そして、アイリーンを演じた美波さんは、媚のない美しい女性を見事に演じていて、どてらを着ていても、本当にきれいだった。

エンドロールでは世界の公害の歴史が流れるのだが、こんなに多いのかと衝撃を受けた。

確かに、我々はお金がなければ生活ができない。でも、資本主義だからといって、何をしてもいいことにはならない。金持ちはより金持ちになろうとする。キリがないのだ。そして、水俣の人々のように、ちゃんと闘えるかどうか。わたしには自信がない。彼らが闘ってくれたおかげで、わたしたちは学ぶことができた。そのことに感謝しなければならないと思っている。

そういえば、石牟礼道子の『苦海浄土』も、まだ読んでいない。近いうちに読まないと。「読まなければならない」リストを消化しているうちに人生が終わってしまいそうだ。

大学の授業で、先生に読めって言われたのに、まだ読んでないんだもの。本当、まずいよ。

ダークウォーターズ』は、アメリカの現在進行形の公害訴訟の映画なので、あわせて観るとよいと思う。

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