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信仰の最前線で感じる出羽三山の変化と未来【地域の先達にインタビュー②】

こんにちは!めぐるん社の水澤です。

日増しに暑くなり、夏を実感する毎日ですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?

前回記事に引き続き、「地域の持続可能性を深堀する」ことをテーマとした出羽三山に深く関わる皆様へのインタビューをお届けしてまいります。

粕谷典史(かすやのりふみ)さんの声をお届けした前回に続き、本記事では阿部良一さん(あべよしかず:出羽三山神社宮司(ぐうじ))の声をお届けします。聞き手は、めぐるんCEOの加藤丈晴(かとうたけはる)とわたくし水澤です。

出羽三山神社第25代宮司・阿部良一さん

出羽三山や神社周辺で感じられた、時代の変遷に伴う変化

めぐるん水澤)数十年前と現在を比較して、出羽三山や神社周辺で感じられる変化はありますか?

阿部宮司)地域の人間としても、これまでと同じやり方では(地域の運営を)進められないと認識はしている。20年ほど前、当時はまだ参拝・観光客は来ていたものの、将来に対する危機感は持っており、当時の世代も様々な取り組みをしていた。東日本大震災やコロナなど色々あり「生活が成り立って初めて信仰が成り立つ」ことを実感した。

神社として看板を背負っているところではあるが、現実的な話をすると、神社の運営にもお金がかかる。なんでもできるというわけではない。

人の幸せを祈るために、まずは家族をはじめとして、自分の生活を成り立たせる必要がある。

加えて、世の中の動きに影響を受けている。

戦前生まれの世代が社会の主軸をになっていた昭和は、神や仏の概念が当たり前にあった。だけど、高度経済成長を挟んで生活が豊かになってくると、これまでのお参りに加えて、レジャーなどの娯楽要素も生まれてきた。特に現在の10代〜20代の若者を見ていると、「ありがたい」という意識が薄れ、超越した存在に対する恐れ、敬いが薄くなってきているように感じる。世代の特徴は地域と出羽三山とのつながりにも影響していて、近頃はその繋がりが薄くなってきているように感じる。これまで出羽三山を中心としてなされてきた地域の運営が、信仰離れによって変化を迎えている。

めぐるんがもたらした変化

めぐるん水澤)めぐるんが出羽三山で活動をはじめたことによる変化は?

阿部宮司)色々な人を連れてきてくれるというので、ありがたい。

これまでも神社と神社に関わる皆様が「こんなことがありますよ」と発信をして、いろいろな取り組みをして、人が来てくれるのを待っていた。一方で、めぐるんは外部から来た人たちということもあり、だからこそできること、進められることがある。めぐるんが今まで山に来なかった人を山に連れてきてくれていることで、神社の門戸をより開いていてくれている。これはありがたいこと。

今までの神社では成し得なかったことを、めぐるんが進めてくれている。神社としても、有形無形の文化を後世に伝えて行ったり、働く環境を良くしたいと思って、世代を超えて取り組んできた。地域と出羽三山との関わりを保つためにも、(めぐるん社には)これまで通りに進めてもらえるとありがたい。

めぐるん加藤)どんな人たちが、新たに来ているという印象があるのか?

阿部宮司)観光客の数としては、海外からの人が増えている。

また、めぐるんの活動では観光客ではなく「祈り」を求めるお客さんを誘致している印象を持っている。

出羽三山の開山の祖・蜂子皇子(はちこのおうじ)を祀る蜂子神社を参拝する、
海外からの旅行客の皆様

めぐるんに対する期待

めぐるん加藤)めぐるんへの期待があれば教えてください。

阿部宮司)これまで通りのことを進めてもらえれば良い。突拍子のないことや、(地域に見合っていない)派手なことをする必要はない。

未来の世代へのメッセージ

めぐるん水澤)未来を生きる世代に対して、何か伝えたいメッセージがあればお聞きしたいです。

阿部宮司)自分の能力を、世の中のためにどう活かすか、ということを考えてほしい。神社だけではなくて、世のため人のために働くことは(一般的に)難しい。生活が大変な中ではなおさらだ。でも、感覚だけは持っていてほしい。自分が働いて稼いだものを、どう活かすのか?生業がないところに信仰はない。あなたができることを、外部に対して発信してほしい。

また、震災や戦争を通して、助け合いを大切に思う感覚があったと思う。個人の生活スタイルを尊重する風潮があるけれど、社会に対して外向きになることを意識してほしい。

ここ(出羽三山)の教えは連綿と伝えられてきた。ここには有形無形のものを伝えるための方法論が存在している。もし出羽三山にくる機会があれば、そんなところに気持ちを共鳴させてくれると嬉しい。ここに来た時くらいは、いろいろ食べて体験して、喜んで帰ってほしい。

歴史ある神社とその文化の最前線に立つ方としての覚悟と信念を、
お話を通して伺うことができました

最後に

これまで脈々と受け継がれてきた信仰文化を守るためには、まず自分たちの生活を安定させる必要があると阿部宮司は強調します。かつての仙人のように霞(かすみ)を食べて生活しているわけではなく、今の社会システムの中で生きている以上、糧を得て生きていく必要があることを再認識させていただきました。「神職についているからといって信仰だけで食べていけるわけではない」という言葉が、個人的にとても印象深く残っています。また「個人を重視しがちな私たちがいかに外向きになれるか」という問いは、ストレス要因が多い現代社会の中を生き抜いていく上で、重要な示唆ではないかと私は感じました。

温暖化や大規模な自然災害、疫病など世界の変化は、出羽三山にも大きな影響を与え、今、転換期を迎えています。これまで地域を形作ってきた人々に代わる人々を呼び込みことで、先人の皆様が脈々と伝えてこられた出羽三山の文化を継承する一翼を担うこと。その役割を担うめぐるんの存在意義を、再確認する機会となりました。阿部宮司、ありがとうございました!


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

本ページでは「持続可能な観光」をテーマに、山形県鶴岡市を拠点とするめぐるんの活動と、地域にとっての持続可能な観光について発信していきます。

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では、また次の記事でお会いできるのを楽しみにしております。


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