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新任インハウスデザイナーに試して欲しい!一人デザインスプリントのススメ

先日、苦肉の策で一人デザインスプリントを行ってみたところ案外良い結果が得られたのでその時の事をまとめたいと思います。

結論から先に言うと、一人デザインスプリントをやってそのままにしてたわけではなく、チームにシェアして内容をブラッシュアップしていくという手法です。

私はデザイナーとして2019年8月からforStartupsという会社で働いています。それまでは自分の会社を起業して14年間業務委託で受託案件に携わってきました。そんな私が11月から14年のデザイナー人生で初めて契約社員として、会社のMission、Vision、Valueにコミットしようと思ったのは…また別のお話になるので、
今回はそんなforStartupsの社内で使用している業務支援ツールの開発にジョインした際に、プロダクトへの理解をどう深めていったのかをまとめる事にしました。

forStartupsは成長産業支援事業を行う事業会社です。私は入社後、TechLab(開発チーム)のデザイナーとしてアサインされました。TechLabの前任のデザイナーさんは既に退職してしまっていたので、特になんの引き継ぎもなし。私が担当する事になったのはHR領域の社内業務支援ツールで、私のミッションはそのツールのデザイン改善です。

一口にデザイン改善と言っても、”ガワ”であるUIを変えることはデザイン改善の本質ではありません。
そこでまずはユーザーである社員の方々に現行の使用感や困りごとetcのインタビューを行うことにしました。このパートに関しては、同じ8月入社のコミュ力高めの素晴らしいエンジニアの方が率先して行って頂けていたので、そちらのデータを参考にする事が出来ました。

HR領域のツールというのは前職でも携わっては居ましたが、今回改善するツールは独自の業務フローなどがある程度確立されており、尚且つ独自の社内用語などもあり、初見の人間にとって理解の難しいものでした。

そこで私が行ったのが、「一人デザインスプリント」でした。

デザインスプリントとはGV(Google Ventures)が公開している、プロダクト改善の為のフレームワークです。
https://designsprintkit.withgoogle.com/introduction/overview

「とっととチームでやれば良いじゃ無い」という声が聞こえてきそうですが、実際にデザインスプリントをやろうとすると5日間かかるんですよね…私が体験したIBMのデザインスプリントでも少なくとも3日間。TechLabの業務はこの開発以外にも多岐に渡るので、チーム全体を3〜5日間拘束することは不可能です。

そこで私はIBMのフレームワークを部分的に使い、一人デザインスプリントを行いました。2営業日に渡って作業しましたが、同時に他のタスクもこなしていたので、大体8時間位で終わって居ると思います。

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実際に使用したToolkitは下記になります

・デザインスプリントの為の準備
・ペルソナ
・共感マップ
・ストーリーボード
・目標の丘

ToolkitはIBMのサイトに記載がありますので、詳細はそちらを参考にして頂くとして、ざっと簡単に説明します。

デザインスプリントの為の準備
ここは「私たちは誰のために何をするのか」を明確にするためのパートです。

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この部分はこのプロジェクトに関わる人間全ての口から同じ答えが出てくるようにするためのものです。共通認識というやつですね。
しかし今回は一人デザインスプリントですので、この段階では私だけの認識ですが、チームの人達の事を考え「あの人ならこんな風に言いそうだな」と言った共感を前提にひねり出します。

ペルソナ
コチラに関しては幸い社内ツールですので、社内にいるユーザーを想像しながらペルソナを作って行きました。
forStartupsには入社後全員がそれぞれ書く「ライフストーリー」という半生記みたいなのがあったので、それを参考にしながらペルソナを設定していきました。

共感マップ
こちらも上記同様「あの社員さんならこれやるな」とか、日頃の行動から見ていた事を前提に落とし込んで行きました。

ストーリーボード
会社としてのミッションが明確にありましたので、そこに向かって個人の目標(OKR)を達成する一社員の成功体験を想像することで落とし込む事ができました。

目標の丘
ここが一番苦労するところです。これは「Who What Wow!」を考えるパートで、「だれが(Who)、どんなふうに(Wow!)、なにをする(What)」を考えます。ついつい改善というとHow思考で「ここに新しい解析を入れて数字を出そう」とか、「目立たせるために赤にしよう」とかってなりがちです。目の前の問題を強引でもいいからとにかく解決する手法に偏る頭を、一旦機能や手法から切り離し「Wow!な体験」、つまり驚きや新発見を伴う体験にしようという視点を持つためのステップです。

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良く例に挙げられるのが、子ども用MRIです。
それまで子どもがMRIを受ける際は鎮静剤を使っていたそうなんですよ。
でも鎮静剤を使う事は、子どもにとってもその親にとっても楽しいことではない、ではどうすればMRIを「Wow!」な体験に出来るのか??
ここではユーザーに寄り添いユーザーの視点に立つことが大切です。その結果、子ども達の夢である「元気になって外に出たい」を叶える事がWoWだと分かります。その結果、MRIでもちょっと冒険に出かけるような体験をデザインした事で、鎮静剤の使用率をほぼゼロにすることに成功したそうです。

同様のアプローチで今回私も社員にとっての「Wow!」を考えました。社内ツールですので、一般的なtoCのサービスと目指すところが若干違います。しかしツールを使う社員が増えつつある状況の中、現場寄りというか、個人の体験に寄せたWow!が必要になって来ると考え、「できるだけ無駄な思考リソースを使わない」事を実現させる方向性でまとめました。

さて、ここまでまとめた後はチームでのシェアです。
そこはあまり時間が無かったので、場のデザインなどはきちんと出来なかったのですが、基本的に意識すべきはリラックスしたムードです。
お茶を飲みながら、お菓子を食べながら…会議ではなくあくまでお話をするイメージを心がけます。
とはいえ、コミュ障なので私が一番緊張して見えたとは思いますが…

ともあれ熱いメンバーのおかげで対話はスムーズに進める事が出来ました。
その際にはAdobeXDを使って実際にスライドを編集しながら行い、上記の5項目を2日に渡って約1.5Hずつの計3時間で完了。
敢えてポストイットやホワイトボードは使用しませんでした。これもデザインシンキングには必須アイテムなのですが、時間短縮の為割愛。
インハウスデザイナーの場合は受託案件で担って来たような提案型のファシリテートは必要ないと考え、とにかく聞き役に徹底しました。

全員が意見を出し合い、耳を傾け、1つの言語に落とし込んで行く。
この作業はチームワークをより強固なものにしますし、お互いを理解することに繋がります。そしてなにより最終的なアウトプットとして言語化されることで、全員が同じ目標とゴールを共有することが出来るのです。自分自身も当初の目的であったプロダクトに対する理解を深める事ができたので、新任インハウスデザイナーの方にはオススメな手法です。

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