よふかし

夜が好きだ。

なんだかよくわからない虫が鳴いてる。
空調が苦しそうな音で動く。
黄色い電気と煙草で薄暗く淡く光る部屋。
暑いのに私にべったりとくっついて眠る恋人。

儚く短い夏の夜。

可愛い恋人の寝顔を見つめる。

眠っているはずなのに。
私が離れると嫌がる。
握った手を振りほどくと私の手を追って探す。
頭を撫でると満足げに微笑む。
話しかけるとうーんと唸って返事をする。

眠っているはずなのに。
なんだこの可愛さは。
暑いし重いし動けないけど。
でも愛しくてたまらない。

この人は寝ていても起きていてもよくできた人だ。

私の不安を全部吹き飛ばす言葉をくれる。
もしかして私の心の中が見えているのだろうか。

どんな私でも好きだと言ってくれる。
それがすごく嬉しくて、怖い。

筋トレを始めた。
カロリーも糖質も気にするようになった。
言動に気をつけるようになった。

私に嫌われたくないと泣いたあなたに
嫌われたくないから。
冷めてほしくないから。

愛しくて美しいこの人に見合うように。
私も美しく強くありたい。

そんな思いで眠りにつく夜。

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