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ニューヨーク紀行⑭ 自分の意思で動くということ

日本でもアメリカでも電車に乗れば話題は事欠かない。
今日はもうひとつ、ニューヨークメトロでハッとさせられた話をお届けしたい。

いつでも突如ステージとなる列車

ストリートのパフォーマーが多いのは、地上や駅のコンコース、ホームで認識していた。

しかし、そこだけには収まらなかった。

列車の中でもパフォーマンスは繰り広げられている。

上記は私がいつも楽しく読ませていただくKeiさんの投稿。
ニューヨークにとっては、これが日常茶飯事のようだ。
(日本でこれをアリとするポテンシャルを持つのは大阪だと思うけど…無理かなぁ 笑)

ブロンドヘア女子と、ベビーカー父さん

5つほど先の駅で降りるため立っていた。
連結部分に立っているので、ニューヨーク地下鉄の人間観察にはうってつけだった。

私たちと同様に、2mほど空けて綺麗なブロンドヘアが特徴的な女性がドア付近に立ってるだけで、他は皆ロングシートの座席にまばらに座っていた。

20歳そこそこのブロンドヘア女子は、手首にタトゥーを入れて、ドアに寄りかかり、ガムをくちゃくちゃしている。

つんとした鼻先と、風を起こせそうなボリュームの付けまつ毛。
平たい顔族の私には羨ましい凹凸だな…と思う反面、スマホに夢中な彼女は、なんだか馴染みのある光景で、安心感があった。

すると途中、彼女が寄りかかっていたドアから、ベビーカーを押しながら、背の高い白人お父さんが乗ってきたのだった。

突如始まる演説

背が高いのに猫背のお父さんは、我々を背に突如演説を始めたのだった。

目線は、ブロンドヘア女子を至近距離として、ロングシートに座る乗車客を捉えている。

ゴォォオオオオと唸る列車の中で、声を張り上げて何か一生懸命に話していた。

途切れ途切れに聞き取れたのは、

「今、私は失業している。(ベビーカーに座る)この子に今日食べさせるお金もない。どうかお金を恵んでほしい。」

というようなことだった。

お金を集めるお父さん

その姿はショッキングだった。

英語を正しく聞き取れていなくとも、お父さんは幼い子のために、列車を乗り換えては演説してお金を集めているのだけは分かった。

これまでも国内外で物乞いを見たことはあったので、正直なところ本当にこのお父さん言うことはほんまか??と少し疑う気持ちも持っていた。

海外は「嘘でもなんでもやったもん勝ち」みたいな物乞いがいるものだと勝手に思っていたからだ。

我々はその光景から目を離すことができないまま「どうしたらええんやろうなぁ、、、」と話していた。

ブロンドヘア女子がかっこよすぎた

ゆっくりと、左右を見ながらお父さんは歩を進める。
スマホを見ていたブロンドヘア女子はというと、興味なさそうに相変わらずガムをくちゃくちゃしていた。

お父さんは我々には背中をむけたまま離れていく。


次の瞬間だった。

さっきまで携帯をいじっていた彼女は、アウターのポケットをごそごそとしたかと思えば、お父さんの方へスタスタと歩いていく。

お父さんの肩をポンポンと叩くと、数ドルお金を渡したのであった。
渡したら、何事もなかったかのように元の立ち位置に戻る彼女。

「・・・・!」

思わず旦那くんと顔を見合わせた。
言わずもがな。その姿は一気に私たちをホレさせた。

自分の意思に、他人は関係ない

この一連を思い出す今も、彼女のかっこよさは鮮明に蘇る。

「私は、自分がしたかったことをしただけ。なにか?」

とでも言いそうな、飄々とした雰囲気だった。
本当にそのとおりだと思う。(何も言ってないけど)

「こんな時どうしたらええんやろ?」と正解を探した自分が情けない。
助けたいとか、関係ないとか、自分が思ったままに行動したらいいじゃないか。

とても、大事なことを教わった気がする。


あぁ、これだからニューヨークはまた行きたくなるんや。


つづく。


Photo by https://unsplash.com/@withluke


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