【フェムテック②通信】フェムテックを取り巻く社会動向(男女格差是正)
先日、海外から来た方から「日本のフェムテックを取り巻く現状を教えてほしい」と言われ、ありものの資料をまとめてお渡しした。改めて振り返ると、海外と比較して、日本におけるフェムテックの広がりの特徴は「広義」だと感じる。「フェムケア」と呼ばれるものも一部フェムテックに含まれているのが日本の特徴。
なぜ日本がこのような動きになっているのか?
そのひとつの答えとして、フェムテックが「男女格差是正」の動きにつながっている。
日本の女性は、生理痛や更年期など女性特有の不調を「病気ではないから」と我慢する傾向にあるとも言われており、その根底にあるものとして、幼いころから培ってきた「昭和のジェンダー観」がある。
そこで、いくつかのデータをもとに、なぜ今フェムテックが重要なのかをお伝えしたい。
フェムテックを取り巻く社会背景
【背景①】女性の年齢階級別労働力率推移の変化
40年以上前は、20代後半で顕著に減り、M字カーブの底をなしていた日本女性の労働力率(ピンク色)。
しかし、2018年(黄緑色)には、20代後半の女性の労働力率は83.9%となっており、その後も働き続ける女性が増えている。
女性の高学歴化や社会進出が進んだ現代において、以前のような社会システムではサポートできない状態になっているのが現状。
働き続けるライフスタイルにおいて、システムを変えていくのはもちろんだが、昔の価値観をどう変えていくのか。苦戦しているのが今の日本なのではないだろうか。
【背景②】女性労働力率の国際比較
日本の女性労働力率は、他の先進諸国に近づいてきているが、高い水準ではない。北欧諸国の高さが目立つ。
女性労働力率で常に上位のスウェーデンは、IKEAやBABYBJORNなどの企業が有名だが、人々が自律的に生きる。自分の人生を自分で決められるような社会体制が整っている。
「自分の人生を自分で決められるような社会体制」というのがキーポイント。「なにかやりたい」と思ったときに、支え合うような仕組みがスウェーデンでは整っていることが、女性労働力率が高い要因であり、日本もそういった考え方を浸透させる必要がある。
【背景③】管理職における女性割合
日本での管理職に従事する女性の割合は、欧米諸国に比べて低い。女性労働力率と同じく、ノルウェーやスウェーデンなど北欧は高くなっている。
さらに、女性管理職比率が5割を超えるフィリピンでは、「家事や子どもの世話はみんなでやる」「女性が働くことが当たり前」という考えが浸透しているため、「価値観の変容」が日本でも求められていると感じる。
大企業のフェムテックに関するご相談で多いのが「決裁者が男性のため、フェムテックについて理解してもらえない」というもの。ベンチャー企業でも、VCは9割男性とも言われており、同じ状況かもしれない。
まずはこういったフェムテックを取り巻く社会背景から、日本のジェンダーギャップ解消や女性活躍推進の観点で、フェムテックが注目されていることを伝えていく必要があると感じる。
筆者も、40代以上の男性が多い講演では、こういったジェンダーギャップの話しから入るようにしているので、参考にしてほしい。
女性特有の健康課題に関する男女のギャップ
【ギャップ①】女性は職場における理解を求めているが、男性の半数は気づいていない
2022年4月に出た【健康経営とフェムテック】正社員男女の健康意識に関する実態調査によると、「女性特有の健康課題(月経や更年期等)に関する悩み」について、女性からは「職場における理解や気遣い」「生理休暇等を取得しやすい環境」等の支援を求める声が多いが、男性の半数がその存在自体に気づいていないという結果が出ている。
ただ、これは生理や更年期が発言しにくいものであるため、当たり前の結果だと感じている。
フェムテックに関する情報発信をさんざんしている筆者でも、生理痛とそれに伴う眠気が酷くても、男性には言えなかった。
企業の健康経営の観点からも、人材育成の一貫として、女性特有の健康課題について知る仕組みが必要と感じている。
【ギャップ②】女性従業員が抱える健康課題と仕事への影響
女性従業員の約5割が女性特有の健康課題などにより職場で困った経験があると回答しているが、管理者が対処に困った経験のある女性従業員の健康課題や症状はメンタルヘルスと回答している。
「女性の身体への理解は大事なマネジメントスキルのひとつである」ことを企業や個人が理解することが、フェムテックを理解する第一歩なのではないだろうか。