MEGUMI ITO

エッセイを見せる。芸術家でいることや子育て、人との繋がりを私の世界観で伝えられたら嬉し…

MEGUMI ITO

エッセイを見せる。芸術家でいることや子育て、人との繋がりを私の世界観で伝えられたら嬉しい。www.ito-megumi.com ドイツ生まれ、スイスと鎌倉で育ち、パリ在住。オーストリア国立応用美術大学に留学後、照明アーティスト。ウィーン、パリ、東京、インターナショナルに活躍する。

最近の記事

父の死

 八月三日。  日本にいる兄から電話があった。珍しく二度も立て続けにかけてきた。    八月三日は毎年、父の家に花火大会を観に大勢の人が集まる日だった。家のテラスからは、熱海の海の船から放つ花火がちょうど目の前に見えるので、人を招んで観るようになり、いつのまにか大勢の人が来る自慢の恒例のパーティーとなっていた。集まる人たちは大体毎年同じ顔ぶれで、お菓子を持ってきてくれるご夫婦や、釣り仲間の建築家や写真家など、加えて大学の教え子達だったりした。毎回大勢の人が集まるので、父の奥

    • 振るえるって何?

       昨日の夜 YouTubeで「振るえる」ことについて話しているのを見つけた。 よく引き寄せの話を聞くけど、いまいちピンと来なくて、私には100パーセント理解出来ない事なんだと、半分諦めていた。  要するに波動だという事も、潜在意識に入れ込んでいくというのも分かった。でもなんだかしっくりこない。どうやったら良いの?   それによると人が感動したり、涙する時、人は宇宙と繋がって三位一体になるらしく、そこで心が振るえるらしい。そして素直に自分に従って心が振るえる事をすれば良いら

      • プライドの話し

         母がとてもプライドの高い人だった。こういう人は周りに迷惑をかけることが多い。自分のプライドのせいで周りは見えないし、おまけに自分の考えをみんなに押し付けるから、合わせるのに追いつかないから困る。こういう人が私の周りに一定の時期になると、まるで虫がわくように出てくる。  中学の時もそんな子がいた。彼女は私を捕まえて私にもプライドの高い、ではなく、お高くとまった人と言った方が合ってるか、になるのが良いと押し迫る。私はまだナイーブ(うぶという意味で) だったから、それもカッコい

        • ネスト

           この作品はだいぶ前に作った小さいネストから成長して巨大に化けた物。  私はテキスタイルを美大で専攻していた。本当はファッションが大好きでファッション科に行っても良かったけど、自分が作った洋服しか着られなくなるのかと思うと何となく寂しくて、テキスタイルだったら布や繊維一般を味わえると思ってテキスタイルを選んだ。  そこから縫ったり織ったり、染めたり、色んなテクニックを学んだ。今も美しいタペストリーや洋服や、布など見るとワクワクする。  例えば、パリにあるアレクサンダーマク

          恋の予感

           最近デートアプリを始めた。男の人の写真が出てきて右や左にやる、オンラインショップのお買い物形式。欲しい人をその中から探す。このアプリは何度も友人に薦められてきたけど、何となく気が向かないので躊躇していた。それがお節介な友人が半分無理矢理私のアカウントを作った。でもやっぱり二週間で脱落。何となく虚しいし、アプリで会える人などあまり当てにしてない。  それでも一人だけが残った。その彼はイタリア人。フィレンツェの人で九月からパリに引っ越してくるらしい。せっかくパリに住み始めたから

          手首の手術

           十何年前くらいから右側の手首の内側にボコっとした物が出来た。特にたくさん手を使った日は眠れないこともある程激痛があった。私は物を作る仕事をしているので、そんな夜がしょっちゅうでとても厄介だった。でも仕事の量が多すぎて、いつのタイミングで手術が出来るか、そうこうしているうちにいつもチャンスを逃していた。やっと今週その日が来た。  手術を受ける病院にはもう行ったことがあった。それは友達が手術をした後、彼女をピックアップした病院がここだったから。パリ市内だけどちょっと遠くて、

          手首の手術

          知ってた? DOGの反対はGODだよ。 by 圭

          知ってた? DOGの反対はGODだよ。 by 圭

          美意識

           自分が信じる事をすればいい。  これがこれからの私の世界。ビアンナーレでもあった、良い作品はやはり百パーセントを出し切っている。今週はそんな事を考えたい。そして何処のアングルからでもアプローチ出来るようにしよう。これからは私が全てを決めていく。今まで通りやる事を step by step やっていけば良い。書く事もやれば良いし、これから新しいキャラも作っていく。今までのことは感謝で受け取り過ぎていく。そして新しいステージができる。もっと大きくなる。    大きな家に住んで

          ザッハーの作品

           2017年に仕上がったシャンデリアは、5メートルもあって二階から一階までを突き抜けて吊られている。五千個のクリスタルは全て私が一つずつ付けた。過酷な作業もあり大変だったが、満足いくものをデリバーできた。  最終日には百を超える作業者から一気に少数になり、最後の仕上げに没頭した。私は凍えるお店の中で朝方まで作業に掛かった。そして少し休憩し、十一時オープンのギリギリまで梯子に乗り最終チェックをした。  (いつも最後まで梯子に乗っているのは私で、それを知っているチームは私を降ろ

          ザッハーの作品

          叫美 2

           先週からずっと風邪を引いて少し気が弱くなっている。 そんな時はどうしようもなく、ただただ疲れた体を癒すだけ。 観たいと思っていた映画にとことん没頭して、待つだけ。  今日から少しずつ外に出てみようと思う。掃除をして、買い物に出かけた後は、大分直ったのを感じて少し安心する。  人は何故生きているのだろうか、とか、いろいろと考えた。きっとこんな時間もある。  これからどうしようかと悩み、考えた。私の道はこれで合っているのか考えた。まるで思春期の頃に考えたのと同じ。私は成長

          ドイツ語

           ドイツ語はリズムがありはっきりしている。誤魔化したり曖昧な感覚は少なく、とにかくストレート。それもそれで良い気がしている。 Es geht sich nicht aus という表現がある。これは「どうにもならない、終わってる、お手上げ」という感じ。大袈裟な時も軽い時も、とにかく何かが叶わない時に使う。  留学した当時、毎月送るように言われていた父への手紙を郵便局に出しに行った時、お釣りを乱暴に、しかも投げるように渡されびっくりした。その時に、肩を窄めながらEs geht

          ヴェニス

           ヴェニスに来ている。中世紀から栄える水の都はいつも神秘的だ。  最初に来たのは私がまだスイスに住んでいた頃で、丁度カーニバルのお祭りの日だった。私は双子の片割れと随分怖い目に遭ったのを覚えている。  ある時息子と片割れがたまたま夢の話をして、私と片割れは熱を出すと同じ夢を見るのを知った。その夢は、魔女が暗い長い螺旋階段をどんどん上に登っていく夢。私はその魔女を追いかけて、追いかけても消えてしまう、そんな悪夢だった。ヴェニスには高い塔も螺旋階段もある。カーニバルの奇妙な仮

          プラハ

           チェコから日本に届くはずの物が届いていなくて、大変なことになってきた。その事で緊急会議が設けられた。もちろん私が頼んでいる業者だから私の責任でもある。  こちらの厄介な点は、何と言っても仕事なのにまるで他人事。敢えて言うと東欧のメンタリティは未だ古風で、男尊女卑?社会主義の名残りみたいなのがあっていろいろなコンプレックスがある。  少し前、パリのプロジェクトで同じ業者にガラスを頼んで、請求書がうまく届かなくて支払いに時間がかかってしまった事があった。彼女は今だ!と言わんば

          叫美 (さけび)

           自由とは選択肢があるということ。権力や他人の価値に捉われない、みんなが誰をも尊重しあいながら生きる、各々が自分の責任を持てること。  こんな風に人類が発展してたら、今頃どんなに素晴らしい文明革命が起きていたことだろう。だって、戦争に武器を売買する情け無い人達がいるから。そのお金もエネルギーも本当はイノベーションに必要なのに。もし、もう既にプラン済みの世の中なら、これからどうする気だろう。  私達にはそれを変えられる事ができるのだろうか。  全世界を救うには、簡単に実行

          叫美 (さけび)

          私の歩く道

           私は物作りで生活を営んでいる。いつも厄介なのは値段をつける作業。用意する物と私の労働時間とアイデア料を足せばいいだけだが、自分の魂までくっ付いていくから案外難しい。まるで人前で裸になり、私はいくらですか?ってきくようなもの。いっその事物々交換が良い。もしくは誰かが勝手に決めてくれてもいい。でも誰が決める? 無闇な値段も納得できないし。  普段は希望価格を伝えれば納得してくれることが多いが、たまに値切ってくる人がいる。そんな時は何だか虚しくなり自己価値が低くなるのを観る。と

          私の歩く道