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ポメラDM250 を購入しておおよそ9か月。未だに小説が書けないまま……。

 未だに使い方を模索中。

 インターネットに接続できないのは良い。
 キーボードの打鍵感も良い。
 じゃあ、なにが不満なのか。
 自分でもよく分からない。

 モニターの電源をつける。キーボードに手を添える。両瞼を閉じ、深く息を吸う。そして、ゆっくり息を吐く。閉じた瞼を開き、暗転させたポメラの真っ暗な画面に視線をやる。頭のなかで組み立てた物語の道筋ストーリー・ラインが見えない。言葉の滴が落ちない。文章の雨が降らない。脳内に広げれた映写幕スクリーンが真っ白なまま。映写機に固定された露光皮膜フィルターも微動だにしない。露光皮膜には静止画がいくつも焼き付いている。

 カメラの前に差し出されたカチンコが鳴らない。部分的に造られた撮影部屋が、照明の明かりを切り、足下に設置された間接照明だけがオレンジ色の光を照らしている、人の目にはかろうじて撮影部屋にレイアウトされた調度品の輪郭だけが窺える。今まさに演技を開始しようと、定められた配置に佇んでいる。


「さあ、合図を出せ!」


 演者たちの神経が撮影班の合図を待っている。どのくらい待てばいい? 何時間待てばいい? いや、何年待ち続ければいい? 同じ場所を何度も何度も演者たちが移動する。激しく揺れ、砕け散る調度品。金属同士がふれ合う甲高い音に閃光。いつになったら次の場面が変わるのか。そして気づけば、撮影部屋はなにもなかったように最初に戻る。

 演者も撮影班も、誰も分からない。もどかしい気持ちだけが残る。頭のなかの撮影班を解放させてあげたいけど、文字起こしをしている作者自身にも分からない。監督の怒鳴り声が聞こえてくる、何をしている。

「合図を出せ。幕を開けろ。今すぐにッ! さあ早く!」


 何がキッカケで書けなくなったのか。今となってはあやふやだ。ずっと恋い焦がれて、夢見続けた憧れの場所へ、自分の分身を送り出したあとに見た青い空は、今でも忘れられない。

 サファイアのように濃く、澄み渡った青い空だった。

 憧れていた小説家が審査員を務めていた出版社主催の賞に応募できて満足してしまったのか?
 出番を待っている演者がまだいる。
 ドキドキわくわくする世界の扉が、うっすら扉を開けて待っている。
 次はどんな世界に冒険に行きたいのに……なぜ文章に出来ないんだ?
 どうやったら手を伝って、打鍵盤の上を言葉を乗せた指が舞うのか。

 書けなくなって、どのくれいの年月と時間が流れた。
 光も通さない真っ暗な空間をもがき続けながら進んだ。

 いまわたしはどこに居る?
 どこに向かっている?
 この進行方向で合っているのか?
 歩くのも疲れて、その場に座り込む。もうどこに向かえばいいか分からない。

 これがスランプ?
 こんなことで物語が書けなくなるものなの?
 なにも書けないのが、こんなに息苦しいなんて思ってもみなかった

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