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【夫のターン】在宅勤務について語るときにぼくが語ること

 こんばんは。2週間ぶりのヒロタアタルです。
 いよいよ私が勤める会社でも「在宅勤務」が推奨されている。編集という稼業は、昔で言えば、えんぴつと紙、そして自分の頭脳があれば、だいたいのことができると言われた。時代が流れ今、PC、PDF、携帯電話あたりがあれば、もう無敵だろうなんて、たかを括っていた。在宅開始1時間で自分のなかのわがままが頭をもたげてくる。「やっぱり紙で校正したい……」、「フリクションじゃないと朱字は入れたくない……」などなど、日常、当たり前にやってきたことができないもどかしさに、身悶えし、在宅勤務1日目を終えた。たまらず、終業後、購入したのがA3のスキャナー複合機、これで紙で校正ができる。この良さを同僚にslackで伝播しすぎた末に、ついた渾名は「プリンター会社の回し者」。この渾名をこれ以上広げたくないので、この場でスキャナー複合機の利点を語るのは必死に抑えよう。

 前置きが長くなったが、在宅勤務生活で一番感じるのは「スキャナー複合機」の有用性ではなく、「表現力」そして「読解力」の重要性である。在宅勤務で、激増したのが「文字によるコミュニケーション」だ。LINE、メールはもちろんのこと、ぼくがスキャナー複合機を啓蒙してまわったslackも文字ベースのコミュニケーションツールだ。どれを使うにせよ、文字、文字、文字の連続で、読解力がとてつもなく必要とされる。日常会話であれば、顔や声色、身振り、手振り、そして語調など、発言の意図の理解をサポートするシグナルがたくさんある。たとえ、メールでわからなくても、その人の席に突撃して意図を確認することができる。在宅では主にメールなど文字だけでやりすごさねければならない過酷さがある。誤読や相手の解釈が思いもよらぬ方向にいくこともある。ぼくのスキャナー複合機のよさを語るslackも、ぼくの意図とははなれ、相手には「回し者」にうつったのだから、ホントに難しい……。

 ぼくの文章の受信者も同じ悩みを抱えているかもしれない。そんなことを考えると、「読解力」と「表現力」はいくら鍛えても鍛えすぎることはないと、いまさらながら、自宅の天井を眺めながら思っていたのである。そんな思考につかれ、そのまま、後ろにぐっと倒れて寝そべったとき、たまたま目にとまった書籍がこれである。

 小西利行『伝わっているか?』(宣伝会議、2014年刊)

 タイトルがズバリ、ぼくの悩みによりそった本だ。メールのやりとりがメインの今だからこそ、何かを伝える前には「伝わっているか?」と自問して、発信しなければならないだろう。

 見知った人とのやりとりであれば、その人のキャラや長所(もちろん、短所)も知っているから、メール文面だけでも「〇〇さんらしい文章だなぁ。きっと、こんなことが言いたいんだろうなぁ」と文脈や意図を推測して理解することができる。しかし、この在宅勤務が続けば、はじめて仕事をする人には必然的にメールでアタックすることも増えるだろう。そんな折、文章を書く前には相手にどう伝わるかを想像し、シミュレーションして表現することが求められる。そういえば、折しも今朝、妻がSNSでのコメントの読解や返信に往生していた。SNS全盛の今、「伝わっているか?」を考えるのは必須の行為なのだなぁと痛感する。
 
 積読を背にPCに向かいながら、現代を生きるみなさんに、この1冊をおすすめする。電子書籍もいいのだろうが、この本も紙書籍で持っている。校正も、本もやはり、ぼくはまだ紙がいい、このことも痛感する宵である。メールで丁寧語を書きすぎて飽きてしまったのか、今日はなんとなく「である調」でお送りした。他意はないのことを念のためお知らせしておく。あしからず。

2020年 4月吉日
ヒロタアタル 拝

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