特別支援学校からの発信「自分の得意な認知を知ろう」
私たちが世の中の事象を判断したり解釈したりする過程は、実は人それぞれ違います。同じ世界を前にしていても、その認知の仕方が人それぞれ違うのです。
大学時代、進学塾で講師のアルバイトをしているとき、人にはそれぞれ得意な記憶のタイプがあることに気づきました。見て覚えるのが得意な子、繰り返して書いて覚える子、語呂合わせを唱えて覚える子、理屈をつけて説明されると覚える子。
僕自身も高校生のときに、「目で見て、声に出して読んで、耳で聴くのがいい」と言われ、毎日お風呂で速単(Z会の速読英単語)の英文をブツブツ読み上げていました笑。
認知(インプット)の優位
私たちはいわゆる五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)を活用して外界から情報を得ています。
(画像は認知機能の見える化プロジェクトより)
中でも視覚と聴覚から多くの情報を得ており、どちらか得意な方があるはずです。これをそれぞれ、視覚優位と聴覚優位といいます。
(画像は兵庫県立芦屋特別支援学校より)
あなたは視覚優位?聴覚優位?
(画像は認知機能の見える化プロジェクトより)
例えば、「赤ちゃん」と言われてみなさんは何をイメージしますか?
赤ちゃんの映像が浮かんできた人は視覚優位かもしれません
(画像はダ・ヴィンチより)
「おんぎゃー」などの鳴き声が浮かんできた人は聴覚優位かもしれません
(画像は記者作成より)
また4×9みたいな計算を問われたときに、
「4×9=36」みたいに文字式や九九表の画像が頭に浮かんでくるなら視覚優位かもしれません
(画像は総合学習サポートセンターSelfishより)
「しく、さんじゅうろく」のように言葉で唱えるなら聴覚優位かもしれません
(画像は発達ゆっくりっ子の365日。より)
また珠算を習っていた人は、算盤の珠が頭の中で動いたり、指先を動かす感覚で計算される方もいらっしゃると思います。
このように誰しもに得意な認知があるのですが、発達障がいのある方の多くは、視覚優位か聴覚優位かどちらに大きな偏りがある場合が多いのです。なので、その子の得意な認知を把握して、その子にとってわかりやすい方法で提示する工夫をするべきなのです。
視覚優位
視覚優位とは、目で取り入れた情報処理が得意なタイプのことです(視力が良い悪いとは異なります)。発達障がいの方には視覚優位の方が多いと言われています(だから視覚支援が大切と言われるのですね)。
(画像はナゾロジーより)
など、目で見た情報処理が必要とされる活動を得意とすることが多いようです。
(画像は〜医療・介護従事者のための〜ビジネススキル入門より)
一方で、極端に視覚優位に偏っていると、
など、視覚情報に頼れない場面が苦手であったり、視覚の過敏さで困ってしまうこともあるようです。
学習や仕事の際は、
などのように図や写真などを手がかりに覚える工夫をしましょう。
(画像は関塾タイムスより)
英語学習の際は、単語を見て⇒音の理解に結びつける、アメリカ式のアナリティック・フォニックスが有効という話を聞きました。
(画像は子育て共育日記より)
また視覚の過敏さには、以下のような対策があります。
(画像はTwitter@morimo51513923より)
(画像はコクヨより)
(画像はねとらぼより)
聴覚優位
聴覚優位は、耳から得た音声情報を覚えたり、考えたりすることが得意なタイプです。発達障がい=視覚支援と言われますが、発達障がいの方の中にも聴覚優位の方はいます。
(画像は毎日が発見ネットより)
など耳から聞いた音声や言語による情報処理を得意とすることが多いようです。
(画像は〜医療・介護従事者のための〜ビジネススキル入門より)
一方で、極端に聴覚優位に偏っていると、
など、聴覚情報に頼れない場面が苦手であったり、聴覚の過敏さで困ってしまうこともあるようです。
学習や仕事の際は、
などのように音声や言語などを手がかりに覚える工夫をしましょう。
(画像は関塾タイムスより)
英語学習には、文字の音を先に習い、個々の文字の音を組み合わせて単語にしていく、イギリス式のアナリティック・フォニックスが有効という話を聞きました。
また聴覚の過敏さには、以下のような対策があります。
(画像はおくたま経済新聞より)
それ以外にも(言語優位や身体感覚優位など)
視覚優位、聴覚優位以外にも、言語優位や身体感覚優位というものもあります。認知特性を6タイプに分類した本田式(こちらで診断できるようです)というものもあります。
(画像はみくりキッズクリニックより)
(画像はNomark-Logより)
(画像はtogetterより)
●言語優位
目で読んだ文字情報や耳から聞いた言語情報を処理するのが得意なタイプです。
(画像はしげのくらより)
イメージを言語化するのが得意、論理的に理屈を説明される(「コロンブス以降の大航海時代の結果、火縄銃とキリスト教が日本に伝来した」など)と覚えやすいなどの特徴があります。
文字や語呂合わせなどで学んだ内容をまとめるのがおすすめです。
(画像は関塾タイムスより)
●身体感覚優位
『自分の感覚を大切に受け止めてから、表現する』 という特徴があります。元巨人の長嶋茂雄さんをイメージするとわかりやすいかもしれません。
(画像は〜医療・介護従事者のための〜ビジネススキル入門より)
周囲の視覚優位や聴覚優位の方とコミュニケーションで齟齬が起きてしまうのを防ぐために、身体感覚優位な人と話すときには、その人が感じている 『身体感覚』が共有できていない・理解できないと感じた時には 都度確認して、お互いのイメージが同じになるようにする必要があります。
(画像は〜医療・介護従事者のための〜ビジネススキル入門より)
身体感覚優位の方は、漢字などはひたすら腕を動かして書くと覚えやすいかもしれません。言葉での説明よりも、まず体験して、実際にやってみるのが一番分かりやすいかもしれません。
(画像はハートフル国語塾より)
自分の得意な認知を活かそう
当たり前の話ですが、その子の認知特性によって、得意な勉強方法にも違いが出ます。
例えば、平安時代の仏教について、天台宗を開いたのが最澄、真言宗を開いたのが空海であると覚えたいとき、次のようになります。
(画像は関塾タイムスより)
でも、なぜか昔からそうやってきたという理由で、ひらがなや漢字は書き取り練習で繰り返して書いて覚える、九九は暗唱して覚えるのような固定観念がまだまだあります。
でも、ひらがなや漢字を視覚的なイメージで覚えたり、唱えて覚えたり、あるいは九九を九九表を目で見て覚えてもいいはずです。というか、そちらの方が苦労せずに覚えられる子が沢山います。
(画像は特別支援教育「すぐに使える!プリント+ビデオクリップ」より)
以前、紹介した盲学校発の唱えて覚える漢字学習についての記事です。
ひらがなの書き順を音声やクラリネットの音で覚えようという書き順動画教材もあります。
さまざまな学習方法が世の中に溢れています。自分の認知特性を知り、自分に合った学習を取り入れてみてください。
まとめ
いつか書こうと思っていた認知特性についての記事です。長くなったので、ワーキングメモリと継次処理・同時処理についてはまた別の記事で紹介予定です。
繰り返しになりますが、人によって得意な認知は異なります。なのにまだまだ学校現場には、画一的な学習方法が沢山あります。
指導する教員、保護者、もちろん学ぶ子どもたち自身が、自分の得意な方法を知り、多様な方法の中から自分に合った方法を選べるようになればいいなという想いを込めて、記事を書いてみました。
子どもたちが自分に合った学び方を知るための役に立てば幸いです。
参考にしたサイト
1.関塾タイムス2021年4月号特集「タイプ別 おすすめ勉強法」
3.武田塾「【認知特性】視覚優位 聴覚優位 から考える勉強法を紹介します!」
4.〜医療・介護従事者のための〜ビジネススキル入門「あなたの優位感覚は何か?」
6.Nomark-Log「認知特性とは?「頭のよさ」テストで才能を見つけて、勉強や人生に役立てよう」
7.togetter「写真タイプ、言語映像タイプ...記憶方法の6種類を把握しておくといろいろ捗りそう!音で覚える人やビジュアルで覚える人など」
表紙の画像はしげのくらから引用しました。