特別支援学校からの発信「あなたは継次処理派?それとも同時処理派?僕はどちらかというと同時処理派なんですけども」
前回は、視覚優位、聴覚優位、言語優位、身体感覚優位など、人によって違う認知特性について紹介しました。
その認知特性とも関連するのですが、今回は継次処理と同時処理という、物事について考えたり、情報を整理したり、記憶したり、理解したり、作業の進めたりする際の方法の2つのタイプについて紹介していきます。
あなたは継次処理派?それとも同時処理派?
いくつか質問をしていくので考えて、自分がAかBのどちらに近いかを答えてみてください。
①使っている腕時計は…
②スケジュール管理をする時は…
③目的地までのナビゲーションは…
④テストなどの問題を…
⑤物事の説明をするときは…
⑥工作では…
⑦昨日の夕食はと聞かれて…
Aが多かった方は「継次処理」タイプが優位、Bが多かった方は「同時処理」タイプが優位と言えるようです。
誰しもが継次処理と同時処理どちらも行なっていますが、発達障がいの方には優位な処理に偏りのある方が少なくありません。また親子や兄弟でも優位な情報処理タイプが同じとは限りません。
ではそれぞれの特徴をみていきましょう。
継次処理タイプの特徴
継次処理は、情報を1つずつ順序立てて理解するのが得意なタイプです。マニュアルや手順書に従って、1つずつ手順を進めていくイメージです。
事務仕事など、手順が大事になる仕事が得意な人が多いイメージです。
(画像はチェックリストシステムアニーより)
一方で、苦手なこともあります。
今日の出来事を話すなら、あった出来事を最初から時系列に話していくタイプです。言いたいことのクライマックスは、一番最後に出てきます。
また道順を説明する際には、 地図だけでは経路は覚えにくいので、地図と一緒にメモを見たり、道順を読んだり、聞いたりすることで覚えられます。
(画像は宮城県総合教育センターより)
聴覚優位の方や言語優位の方は継次処理タイプのことが多いそうです。
同時処理タイプの特徴
同時処理は、情報の全体を捉えてから、部分同士を関連付けて理解するタイプです。
僕の中では、研修会で学んだ「主婦・主夫の方が、同時並行で料理を進めている」…みそ汁のお湯を沸かしながら、皮をむいて切って水にさらしたジャガイモを電子レンジでチンしながら、野菜やお肉をまな板で切っている…みたいなイメージです。
私事ですが、はじめは継次処理で一品ずつ作っていましたが、今では同時処理で段取りし、並行して進められるようになりました。
(画像は「共働き夫婦」の時短レシピより)
一方で、苦手なこともあります。
会議や会話では、「とにかく結論は何か」「息子は何を言いたいのか」を先に聞きたいタイプです。
また道順を説明する際は、言葉よりも地図を見た方がわかるタイプです。
(画像は宮城総合教育センターより)
視覚優位の方は同時処理タイプのことが多いそうです。
どちらのタイプにも伝わるように
授業や仕事を進めるとき、私たちは知らず知らずに自分の得意な認知特性や認知処理タイプで進めてしまいがちです。
継次処理、同時処理の2つの力は全ての人が持っていますが、多くの人は得意な力を無意識に優先して使っています。そして発達障がいを抱えている方は、どちらに強く偏っていることが多いのです。
そのため、授業など集団に対して情報を与える時には、言葉や文字だけで伝える、絵だけで伝えるなど、偏って伝えると十分に伝わらない子たちが出てくるはずです。
などのように、継次処理・同時処理どちらのタイプにも伝わる説明を意識しなければなりません。
両方の処理タイプへ伝わる工夫をして、二刀流でどちらも提示する、ということを覚えておいてください。
具体的な支援・指導方法の紹介
継次処理タイプ、同時処理タイプそれぞれに配慮した具体的な支援・指導の方法を紹介します。
1.掃除
継次処理タイプには、作業の手順を順番に示した表を提示します。
同時処理タイプには、まず掃除が終わった状態(ゴール)の写真を見せ、続いて掃除の手順に従った写真(ほうきで掃く→ゴミを集める→掃除用具を片付ける)を示します。
(画像は宮崎市立宮崎小学校より)
2.棒グラフ
継次処理タイプには、棒グラフのかき方を順に示して、最終的に棒グラフがかけるようにします。
同時処理タイプには、3年1組の好きな食べ物の表と完成した棒グラフを示すことで、目指すべきゴールを共有し、1組のグラフと同じようにすれば2組のグラフがかけるようにします。
(画像は宮崎市立宮崎小学校より)
3.時計
継次処理タイプには、既製の学習用時計を活用して学習を進めます。
同時処理タイプには、自作の時計を活用して学習を続けます。
(画像は皆与志養護学校より)
4.板書例(円柱の表面積を求めよう)
継次処理タイプには、円柱の表面積の求め方の具体的な手順を示す。
同時処理タイプには、授業の目的(めあて)の「円柱の表面積の求め方を考えよう」をまず確認する。また表面積の全体像を視覚的にイメージできるよう、円柱の展開図を示す。
(画像は宮城県総合教育センターより)
5.ワークシート例(心肺蘇生法)
継次処理タイプには、対応の流れをチェックリスト形式で順序立て示します。
(画像は宮城県総合教育センターより)
6.学習支援
継次処理タイプは、1から順番に、手順を踏んで学習させる。できたページ数分、プリント枚数分のシールを表などに貼り達成感を感じさせる。漢字は書き順が掲載されているドリルやワークを使用する。計算問題は筆算しやすいように枠がある問題集を選ぶ。
(画像は子育てパパがなにかやらかしています。より)
同時処理タイプは、単元ごとにプリントを分け、勉強したいところから取り組めるよう工夫する。また小テストなど小さな目標を掲げてそこに向けて勉強のモチベーションを上げる。
まとめ
今回は継次処理と同時処理という2つの情報処理タイプの特性について紹介しました。
当たり前ですが、同時処理タイプの子に1つずつ丁寧に教え込んだり、継次処理タイプの子に全体像をパァーッと伝えて「じゃあやってみて」ではなかなか上手くいきません。
でも、前回の認知特性も今回の情報処理特性もみんなそれぞれ違うはずなのに、そのことを知らないと自分の特性がスタンダードになってしまい、不幸な押し付けになってしまうことがあるかもしれません。
特別支援といえば視覚支援!なんて聞いたこともありますが、視覚支援が合わない子だっています。
自分の得意なタイプを知ること、子どもの特性を知ってそれに合った方法で支援していくことは、当たり前ですがすごく大切なことです。
以前別の記事でも紹介した「#私の情報処理の勝ちパターン」についてのツイートを掲載しておきます。
認知についてちょっと書いてみようという思いから始まった記事ですが、自分自身の再確認にもなりました。次のワーキングメモリは難しいのでちょっと不安ですが…笑。
人によって得意な学び方や考え方が違うという当たり前のことが広まり、自分に合った方法で学び考えるのが当たり前になりますように。
参考にしたサイト
2.親子DE発達凸凹86「第357号 あなたは「継次処理」「同時処理」どちらのタイプ?」
3.こども発達支援研究会「同時に考える力と順番に考える力〜同時処理と継次処理〜」
4.東京都教職員研修センター「子供一人一人の『分かり方の特性』を生かした指導をしましょう」
5.note「同時処理能力・継次処理能力とは何だろう?どう学習に活かす?」
表紙の画像はよつばCOLORSブログより引用しました。