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月と地球、それぞれの立場での政治的な思惑と個人的な感情で紡ぎ出される糸みたいな物語

シドミード展もあったことだし、同タイミングで∀ガンダムを見てみようと思い立った。もう15年近く前に途中まで見た記憶。あまり盛り上がらない中でも、洗濯するガンダム*1 という印象だけが残っていた。

で、久しぶりに見てみたら、月のお姫様が来て帰る話としてはかぐや姫でもあり、そっくりさんが立場を入れ替えるというとりかえばや物語でもある。
で、やっぱり洗濯をするガンダムの話だった。これに限らず、なんかガンダムと共に生活するシーンがチラホラあるんだよね。相変わらず説明はしょりすぎで基本伝わらないけど芸がこまかい、みたいな富野節は健在。ぼーっと見てると、あれ?どうしてこうなってんの??とかこれなんの話?ってなる感じも相変わらずだな、と。

王道バトルというよりは、政治的な交渉や立ち回りが多い作品で、なかなか人物の機微がわかりづらいのでどうしたもんかなと思っていたら、ノベライズ版があるではないですか。

映像作品としてのスターウォーズにハマれなかったけどノベライズ読んだら面白すぎてびっくりした経験から、何かと映像作品のノベライズが気になりだしている。映像作品だけで味わいきれない部分を小説で補完するような楽しみは富野ガンダムにはすごく有効な気がするから。

で、読んでみたらびっくり、結末が全然アニメ版とは違うわけです。*2 まぁそういうこともあるのかもしれないけど、全く予期してなくて不意打ちを食らった感じ。あくまでもアニメという原典に沿ったノベライズという定められた枠の中で展開する平和な小説かと思いきや、そんな設定は物語の力でぶち壊してやるぜ、という展開。同じ世界かと思ったらパラレルワールドに迷い込んでいたことに読みながら気づく。アニメと並行して読んでいたから最初はアニメの理解が深まる感覚だったのだけど、途中からこれは!?という違いが鮮明になってきて……なかなか新鮮な読書体験だった。

福井晴敏の小説版の方が、登場人物の業が深く描けている。本作自体が月と地球、それぞれの立場での政治的な思惑と個人的な感情で紡ぎ出される糸みたいな物語だから小説向きな作品だとは思うんだよね。

グエン・サード・ラインフォードは同性愛者という視点でロランを見ており、だからこそ彼はロランのことをローラと呼ぶし、キエルお嬢さんの気持ちには答えられない、というより迷惑くらいな感じ。とかはアニメよりもよりはっきりと描かれている。これのおかげでグエンは自分の欲望に忠実そうで、かつ、何考えているのか分からないという不気味な存在感を増していた。

キエルも月の女王の代役をこなす素直で気丈、頑張り屋さんなお姉さんというアニメ版のキャラとは違い、より人間らしく葛藤している。グエンにもハリーにも振られるし、感情に振り回されてる感じ。その辺が実に泥臭くて良かった。

最後に、シドミード展で撮ったターンエー貼り付けておこう。
膨大な作品が一堂に会する見応えのある展覧会だったよね。


洗濯するガンダム *1


結末が全然アニメ版とは違う*2


 


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