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イレブン・イレブン・イレブン −ニューヨーク式プロポーズ−

このところゾロ目の話が続いているので、前回の「迷ったらGo!」で旦那さんと出会った2年後のゾロ目ストーリをひとつ。(ちょっと内容が被りますが、ブログ「ニューヨーク、夢の街(11.11.11の出来事)」もよかったら併せてお読みください。)

2011年11月11日。今から十二支を一回逆戻りした年のイレブン・イレブン・イレブン。皆さんにとってはどんな一日だったでしょう。

私は普通に仕事に行きました、笑。当時はニューヨークに住んでいて、同棲中だった恋人(今の旦那さん)と朝のニュースを見ながら
“Oh, it’s eleven-eleven-eleven, must be a lucky day!”(「11.11.11じゃないの、ラッキーな日に違いないわねぇ!」)
なんて話していたのを覚えています。

その日の夜は旦那さんのお友達が誘ってくれたというイベントに行くことになっていました。
“See you after work!”(「仕事の後にね!」)
仕事の後、彼も私も一旦アパートに戻ってから一緒に出かけることにしてそれぞれ出勤しました。
 
帰宅後。いつもだったらのんびりと準備をする彼を私が急かすというのがお決まりのパターンだったのですが、何故かその日は逆に彼が早く早くと私を急かすのです。そして、急かした割には
「イベント会場がタイムズスクエアの近くだからちょっと寄りたい」
などと言う。

余談ですが、旦那さんはタイムズスクエアのエネルギーと雰囲気が大好きで、職場が近かった頃には時々足を運んでは日光浴ならぬエネルギー浴をしていたそうです。一方の私はというと、常に混み合っていて真っ直ぐに歩くのも困難なタイムズスクエアはできれば避けたいエリアでした。しかも11月のニューヨーク、夜はかなり冷え込むのです。

地下鉄の駅を出ると彼はタイムズスクエアのど真ん中に位置するTKTSの赤い階段に向かって歩いて行きます。
「えーっ!本当に行くの?イベントに直行しようよ」
寒いのが苦手な私は文句を言いながら渋々彼について行きました。行き先のイベント会場を聞いておいてそこで待ち合わせしておけばよかった…。

レッドカーペットを敷き詰めたような階段にはいつものように観光客が所狭しと腰を掛けていました。
「ほら、やっぱり凄く混んでるじゃない。今日は履き慣れないヒールも履いてるし、もう行こうよー。寒いよー。友達ももう会場で待ってるわよ」
と駄々っ子モードの私。それでも夫はかまわず私の手をとって階段を登りだしました。

「上まではいやだー。疲れちゃうもの。この辺でいいじゃない」
最後まで粘りましたが、抵抗虚しく結局かなり上の方まで引っ張られて来てしまいました。私の横に立って頬を紅潮させながらタイムズスクエアを見渡す彼。そんな彼を見ると、あぁ、本当にここが好きなんだな、と思いました。色とりどりに輝くネオン、行き交う人々、イエローキャブ。「ニューヨーク」と聞いた人がまず思い浮かべるであろう景色を一望できるその場所に私たちはしばらく無言で立っていました。

と、突然彼がクルリと私の方に向きを変え跪きました。えええぇぇぇ?あまりに突然で声も出ず、大きく開いた口を両手で覆って立ちすくむ私。私の目ってこんなに大きく開くんだ?っていうくらい目が丸くなっていたと思います。彼がポケットから指輪を取り出す光景は驚きの気持ちとセットになって今でも鮮明に覚えています。少し前に日本で私の両親に挨拶を済ませていた彼なので、「そのうち」くるとは思っていたものの、まさかあの場で「その時」が来るとは。

“Will you marry me?” (「結婚してくれますか?」)
“… Yes!!!”

迷いはありませんでした。動けないほどビックリはしていたけれど。

返事をすると同時に、周りからうわっと大きな歓声が上がりましたた。どこかにピューっと飛んで行ってしまっていた私の魂が急にタイムズスクエアに呼び戻された感じでした。うわあっ、反応はやっ!と周りを見ると、あれ?今日のイベントに招待してくれた友達のTLがいる!あれあれ?あれぇっ?その隣も、そのまた隣も…友達だらけ!気付けば、彼と私は四十人ほどの友人たちに囲まれていました。後にも先にもないほどの驚き、しかもダブルのサプライズ。私は必死で状況を把握しようとしました。目をパチクリさせているうちに、
「おめでとう!」
と友人が大きな花束を渡してくれました。どっと目頭が熱くなり、タイムズスクエアのネオンが滲んで見えました。
 
旦那さんはこの特別な日を大好きな友人たちに囲まれて迎えたいとTLに相談、私に内緒で計画を進めていたそうです。帰宅後の彼の様子が明らかにいつもと違っていたのはそういうことでした。

「最後の最後まですごく緊張してたんだよ」
と、照れながら旦那さんは言いました。そりゃそうでしょう。しかし甲斐あって大成功だったね!一方の私は、辞書の「驚く」という見出しに写真がつくなら一番に採用されそうな反応をしておりましたが。

それにしても、周りが友人だらけだったのに階段を登っている間も全く気付かなかった自分にある意味感心してしまいます。皆見つかるまいと必死で顔を隠していたのでしょうけれど。こっそり撮ってくれていたビデオを見ると、
「来た来た!」
とか
「イエスって言った?」
なんていう友人たちや周りの観光客の声が入っています。そして、赤い階段の上で撮った記念写真にはホッとした表情の夫と涙目で花束を抱える私が皆に囲まれて写っています。

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