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歩くランドセル達と一緒に

昨年夏。息子が所属する子供会の役員さんから連絡がありました。
「来年度の役員をお願いします」
あれ?いきなりご指名ですか?うちの子供会は6年生がいなくなる為、今度5年生になるうちが候補に挙がるのは承知していたけれど。話を聞くと他のおうちは皆さん既に他の役などをなさったため、来年度は免除になっているとのこと。そういうことでしたら、と役をお受けしました。

引き継ぎやら事務的なことはさておき。新学期になって最初のお勤めは、集団登校の引率です。昨年度の役員さんの時は4月いっぱい学校まで連れ添ってくれたので、私もそうすることにしました。息子が小さかった頃、途中まで一緒に歩いていたのを思い出しちょっと懐かしくなりました。それに2月の渡米以来(ブログ Meg for Life 「旅のhiccup (ヒコップ)」)お土産のチョコレートを食べ過ぎてしまった体が運動を欲しているからちょうどいいウォーキングにもなりそう!

もうひとつ、楽しみなことがありました。実は私、この季節の風景である「歩くランドセル」が可愛くて大好きなのです。体の半分くらいあるランドセルを背負って登下校する子供達の初々しい姿。ランドセルって結構重いですよね。
「頑張れー!」
って応援したくなります。夫の出身国であるアメリカでは子供たちが学校まで歩くなんて距離的にもありえないし、ましてや小さな子供だけで外出なんて危なくて不可能ですから、まだ小さな「歩くランドセル」たちを見るたびに夫婦で顔をほころばせております。

さて、子供たちと歩く気満々の初日は…なんと大雨!昨日入学式を終えたばかりの新一年生たち、この間まで幼稚園や保育園の送迎バスで登園していた子供たちにこんな激しい風雨の洗礼が待ち受けているなんて。湿気と不安のレベルがぐんぐんアップしていきます。

子供会の集合場所に着くと、初日で新一年生に付き添って来てくれたお母さんたちの方が不安そうな顔をしています(そのお気持ち、わかります)。風もあったので、傘は持たせずに雨ガッパだけで登校の子もいますが、ズボンが既に濡れているのが見た目にもわかります。7時半の時報とともに学校に向けて出発します。初日なので、荷物も多めの新一年生は途中から
「重いよ~」
…だよね。並んで歩く子供たちの列のすぐ横を追い越していく車からは水飛沫が飛んできて子供たちにかかります。(避けてくれる運転手さんももちろんいるのですが。)
「あーん、濡れちゃったよ~!」
…だよね。

学校までの距離はそう遠くはないのですが、校門がオリンピック競技のゴールのように見えました。みんなよく頑張った!
「いってらっしゃーい!」
十数名の我が子たちに手を振る母親のような心境でした。

翌日は晴れ。よかった!今日こそ楽しい集団登校…と思いきや。息子と歩く集合場所までの道で会った新一年生のTちゃん、
「お母さんが、今日からお仕事だから、(集合場所まで)一緒に来られないのぉ(えぐえぐ)」
前髪をおでこの上で「じゃりン子チエ」風に結ぶTちゃんの頬を涙が伝っています。そうかぁ、それは寂しいよね…。
「Tちゃん、昨日の雨、すごかったよね。学校についてから濡れたところ気持ち悪くなかった?」
「濡れちゃったけど大丈夫だった!」
「子供会にもうひとり同じ名前のお姉さんがいるの、知ってる?」
「えー、そうなの?」
少しずつ、Tちゃんの気持ちが学校に向いていきます。子供って強いですね。Tちゃん、次の日には元気そうにお母さんに
「行ってきまーす!」
と手をブンブン振って息子と私に合流してくれました。

その次の日からも、「道に広がって歩かない」などの指導をするのが第一のミッションと知りながら、ついつい私の方が無邪気な子供たちと楽しんでしまう日々でした、笑。
「先生はぁ、どんなお菓子が好きぃ?」
(心の声)「いや、先生じゃないんだけどね、かわいいなぁ」
「この早口言葉言える?なまむぎ なまごめ なまなま…なまなまご!あれ?」
ぷぷぷ。

2年生なのにまだまだ甘えん坊で手を繋ぎたがるIちゃん。この間大阪で買ってきたというキーホルダーを見せてくれたり、子供会の集合に遅れないように朝早く起きたんだよと話してくれたり。

上級生のお姉ちゃんにベッタリくっついて歩いていたKちゃんはある朝、歩くスピードを緩めて後ろの方を歩く私に近づくと
「あのね、水筒をおっきいのに変えてもらったの」
小さな声で教えてくれました。
「その色、もしかしてミッフィーちゃん?」
と聞くと
「うん!」
と嬉しそうに答えてくれました。

とってもシャイで最初の10日間くらい声を聞いたことがなかったHちゃんも最近は笑顔で
「おはよう」
と挨拶してくれるようになりました。

笑わないけれど目力バツグンの男の子Yくん。声をかけるとぼそっと呟くような返事が返ってくる小柄な子です。先週、列の後ろを歩く私に先頭のYくんが何か合図しているので指差す方を見ると、そこにはツバメの巣が!巣の中では雛鳥がピーピーと鳴いていて、母鳥が巣に戻ってきたところでした。思わず
「みんな!ツバメの巣だよ~!」
「わぁ~っ、ホントだ!」と子供たちと大盛り上がり。

他の子供会でも、息子が在園時に始めた幼稚園の「えいごであそぼう」(ブログ Meg for Life 「キラキラの目」)で私を知ってくれている子供が
「Hello!」
と声をかけてくれることも。照れくさいような、でも嬉しい!

無邪気にキャッキャとはしゃぎながら歩く下級生たちとは逆にトボトボ、しょんぼり歩いているイメージだった上級生たちですが、列の後ろから見ていると下級生のことを気にかけて外側を歩いてくれたり、無邪気な質問に答えたりしています。校長先生のお話だと、新一年生の下駄箱まで一緒に行ってあげたりしているそうです。なんとなく面倒臭そうに歩いている上級生ですが、途中で同級生のお友達に会うと表情がパッと明るくなります。

いろんな子がいて、みんな個性があって。そして、コミュニケーションて大切だな、と思うシーンが本当にたくさんありました。

子供たちからパワーをもらいながら歩いた集団登校も明日で終了です。寂しいような気もしますが、いつまでもくっついて行くと怪しいおばさんになるので、笑。雨の日も毎日交差点で立哨してくれるおじさん。毎朝校門まで出てきて笑顔でお迎えの挨拶をしてくれている校長先生。子供たちのことを思う大人たちに見守られながら、まっすぐに、しなやかに、そして強く育っていってほしいと願うのでありました。


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