見出し画像

タピオカは今 ~3種のデンプンからタピオカを作る〜

食品加工を全力で楽しむ人、いしもとめぐみ です。
タピオカという言葉に、もはや懐かしさを覚えてしまうのは私だけでしょうか。
そんなことを言いつつ今更タピオカ??とお思いかもしれません。実はnoteを始める以前に手作りタピオカに挑戦していたんです。

それは昨年の夏の終わり。
実はそれほどタピオカに興味はなくて、でも一応流行には乗っかっておこうと思い、それならば、と自分で作っちゃいました。

1.タピオカの原料は?

タピオカの原料は、南米が原産のキャッサバという芋です。
キャッサバ芋に含まれるデンプンという成分を粉状にしたものが、タピオカのもととなるタピオカ粉です。
タピオカ粉はタピオカスターチという名前などで市販されているので、その粉さえあればタピオカは手作りできます!

2.タピオカの作り方

まずは基本的なタピオカの作り方を紹介します。

《材料》
タピオカ粉 50g
黒糖    15g
水     50g

《作り方》

① 鍋に水と黒糖を入れて火にかける。加熱しながら混ぜて黒糖を溶かす。

② ①が沸騰したらタピオカ粉を加えて、火を止めてすぐによく混ぜる。

③ 生地がまとまってきたらボウルに移してよくこねる。生地がまとまったら直径1cm弱ほどの大きさにちぎって丸める。丸める間に、大きめの鍋にたっぷりの湯を沸かしておく。

④ ③を湯に入れて、時々かき混ぜながら弱火で40分ゆでる。ゆで上がったらザルに上げて流水で冷やす。

今までの投稿に比べれば、シンプルなレシピです。
でも工程④が地味に長い… タピオカの粒って小さいのに、40分もゆでるんです!
でもこれは、タピオカの主成分であるデンプンの糊化(こか)に必要な操作。そう、タピオカのもちもち食感の要となるのがデンプンの糊化なのです。

3.タピオカに必要な「デンプンの糊化」

デンプンは多くの食材に含まれている成分です。糊化を利用する食材としてわかりやすいのがお米です。

お米は、炊く前は硬い状態です。これに水を加えて加熱(炊飯)するとふっくらやわらか、もちもちの状態になります。まさにこれがデンプンの糊化です。

ちなみに、糊化とセットで覚えておきたいのがデンプンの老化です。
炊き立てのごはんは美味しいですが、それを放置すると冷えて再び硬い状態に戻ってしまいます。ご飯を食べた後に洗い物をせずに放置していると、お茶碗のふちにそんな変わり果てた姿の米粒が残っていたりしますよね。…私だけ?
ふっくらやわらかなごはんが硬いお米に戻ってしまう、このことをデンプンの老化と言います。

糊化する前の状態のデンプン(硬いお米)をβ−デンプン、糊化したデンプン(ふっくらごはん)をα−デンプンと言います。だから糊化のことをデンプンのα化と言ったり、老化のことをデンプンのβ化と言ったりします。

β−デンプン + 水 + 熱→糊化(α化)→α−デンプン→老化(β化)→β−デンプン

これがよく分からなくても、お米を炊飯するとふっくらごはんになって、洗い物をしないと硬いごはんになるというイメージがあるとわかりやすいと思います。
洗い物はすぐにやりましょう。

ここまでお米で説明してきましたが、キャッサバ芋のデンプンをぎゅっと集めたタピオカ粉でも同じことが起こります。
作り方の工程④で、タピオカ粒をゆでていますね。ここで熱を加えながら水(湯)がタピオカ粒に浸透することでタピオカデンプンの糊化が起こり、タピオカ粒がもちもちの状態に変わります。

でもタピオカは、冷えてもお茶碗のふちのお米のように硬くはなりません。冷たいミルクティーに沈んでいるタピオカも美味しく食べられますよね。
これはタピオカのデンプンには老化しにくい、つまり硬くなりにくい性質があるためです。(あまりに長時間冷やしていると、やはり老化して硬くなります。あと液体にずっと浸っていると、水分を吸ってぶよぶよになってしまいます。お店で購入したタピオカドリンクは、美味しいうちに早めに飲み切りましょう!)
このようにお米のデンプン、タピオカ(キャッサバ)のデンプンなど、デンプンの性質はデンプンの種類によって多少異なります。

4.3種類のデンプンからタピオカを作ろう!

普通にタピオカを作るだけでは面白くありません。
タピオカ粉はデンプンです。身近なデンプンと言えば…片栗粉

片栗粉は料理のとろみ付けによく使いますね。片栗粉は昔、ユリ科のカタクリという植物の球根のデンプンから作られていましたが、今ではじゃがいも(馬鈴薯)から作られているものがほとんどです。

その他の簡単に手に入るデンプンでは、コーンスターチがあります。カスタードクリームのとろみ付けなどに使われます。こちらはトウモロコシのデンプンです。

せっかくなのでタピオカ粉、片栗粉、コーンスターチの3種類のデンプンを使ってタピオカを作ることにしました。

画像1

画像2

画像3

粉の状態を比較。触ってみると、どれもきゅっきゅっというような独特の抵抗を感じる手触り。タピオカ粉は少しさらさらとしています。

画像4

工程③、ゆでる前の状態。手前:タピオカ粉 左奥:片栗粉 右奥:コーンスターチ
タピオカ粉と片栗粉は生地の状態が似ていますが、片栗粉の方がぶりんと弾力があり、コーンスターチの生地はねばねばと手にくっつきました。コーンスターチは表面が滑らかになり、乾燥して若干ひび割れができました。

それぞれ別の鍋で、時間差でゆでていきます。
ゆでていると溶け出した黒糖で湯が少し茶色くなり、とろりとした粘度もついてきました。

40分経過。

画像5

タピオカ粉から作ったタピオカです。ゆでて流水で冷ますと透明感が出てきました。キラキラしていてキレイ。流石、映えますね。表面はつるんと滑らかで、噛むとやわらかく、もちもちとした弾力があります。

画像6

片栗粉(じゃがいもデンプン)から作ったタピオカです。半透明で、もちもちした弾力はありません。小さめのものは中心までやわらかくなっていましたが、大きめのものは中心が少し固く、ぽそぽそ、崩れるような食感でした。

画像7

コーンスターチ(トウモロコシデンプン)から作ったタピオカです。この色、この質感、もはやこんにゃくにしか見えません。白く濁っていて、他の2種類より固めの食感でした。

以上の結果から、ちょっと考えたことを書いてみます。

5.タピオカについてちょっと考えた。その1

なぜ、工程②でデンプンに加えた砂糖液は沸騰させた状態のものなのでしょうか。冷たい状態の砂糖液ではダメなのでしょうか。

試しに、加熱していない水とタピオカ粉を同じ割合で混ぜてみました。

画像9

生地のようにはまとまらず、さらっとした液体のままでした。これは、あんかけなどの料理でとろみをつけたいときに加える、水溶き片栗粉と同じ状態です。

片栗粉は同量〜2倍量の水で溶いてから、熱々の料理に加えてとろみをつけます。そう、これも糊化。片栗粉というデンプンに水と熱が加わり、粘りのあるα−デンプンになるのです。

工程②で沸騰させた砂糖液をデンプンに加えたのは、一気にデンプンの糊化を進め、デンプンを粘りのある状態にして生地としてまとめやすくするためだと思われます。しかしこれだけでは糊化に必要な水と熱が不十分なため、ゆでるという操作が必要になるのです。

6.タピオカについてちょっと考えた。その2

タピオカ粉とコーンスターチから作ったタピオカは、だいたいどの粒も食感がそろっていましたが、片栗粉から作ったものは少しの大きさの違いで食感が異なっていました。なぜ片栗粉だけ食感に違いが出たのでしょうか。

デンプンには糊化開始温度というものがあります。
言葉の通り、でんぷんが糊化し始める温度のことで、デンプンの種類によって違ってきます。タピオカ粉は58.5〜70℃、片栗粉は55〜65℃、コーンスターチは62〜74℃が糊化開始温度なので、この3種類の中では片栗粉が最も低い温度で糊化し始めることになります。

工程を振り返ると、沸騰した砂糖液へ片栗粉を一気に加えています。片栗粉は糊化開始温度が低く糊化しやすいので、熱々の砂糖液が加わってすぐに糊化が始まった部分と、水分が十分にまわらず糊化できなかった部分があらわれて、生地の中でムラになってしまったのではないでしょうか。

もっと長時間ゆでれば中心まで水と熱が伝わって、中まで糊化してやわらかくなったのかもしれません。
気にはなりますが、片栗粉タピオカはおいしくないので実験しません!笑

7.手作りタピオカについてまとめてみた。

タピオカ粉は、ゆでて水と熱が加わることでデンプンの糊化が起こり、もっちもちのおいしいタピオカになります。
片栗粉やコーンスターチもタピオカ粉と同じデンプンからできていますが、それぞれ違う性質を持つデンプンなので、おいしいタピオカにはなりません!

タピオカは、タピオカ粉から作りましょう♡

画像8

せっかくなので、茶葉を煮だして丁寧に淹れたミルクティで、お家タピオカミルクティを作りました!
3種類のタピオカをそれぞれミルクティに沈めてみました。なんでしょうね、思ったよりも、映えない…

今回は連休で暇を持て余していた相方にも手伝ってもらいましたが、タピオカ生地を丸める工程③に、とんでもなく時間がかかりました。
ちねちね、ちぎっては丸め、ちぎっては丸め、40分かけてゆでて、やっとの思いでタピオカミルクティが完成しても、ちゅるちゅるちゅるっと一瞬で口中へ消えてゆきます…
世の虚しさを感じる実験になりました。

さて、今回のためにタピオカ粉450gを一袋買いました。
この実験で50g使いました。あと何gのタピオカ粉が残っているでしょうか?

タピオカブームも終わりつつある昨今。
ちねちね、ちぎっては丸め、ちぎっては丸め、40分かけてゆでて、なんてもうやってられません。
タピオカ粉消費企画を考えているので、そのうちレポートを投稿します。
乞うご期待。ではでは。

この記事が参加している募集

#おうち時間を工夫で楽しく

95,469件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?