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本気で「良い!」を伝えつづければ、そこに人は集まる。コミュニティを仕掛ける3人に聞く、これからのコミュニティ運営

コロナ禍でコミュニティを取り巻く状況が変わり、コミュニティの在るべき状態が変わった今。オンラインコミュニティやオンラインサロン作りがますます盛り上がりを見せています。一方で、コミュニティ運営は一筋縄ではいかず、解散してしまうものも多々。

そこで今回は、場を通じて人や情報のつながりを生み出すコミュニティを仕掛ける3人のゲストにお話を伺うことに。

「初期の立ち上げ時、メンバーはどのようにして集めるのか?」
「メンバーとのコミュニケーションで気をつけるべきことは?」
「コミュニティの新陳代謝を促すにはどうすればいい?」

現在コミュニティを運営されている方や、これからコミュニティを立ち上げようと考えている方は、ぜひご覧ください!

【ゲストスピーカー】
5時こーじ 氏

「朝渋」代表 / 株式会社 MorningLabo 取締役
幼少期より22時に寝て朝5時に起きる生活をしていたという原体験から、2016年朝活コミュニティ「朝渋」を立ち上げる。本業のかたわら、本の著者を招いたトークイベントを毎朝実施し、累計1万5000人を動員する規模に発展させる。2018年、勤務先の企業を退職し、「朝渋」 に本格コミットへ。早起きを日本のスタンダードにすることを目指す。著書に『昨日も22時に寝たので僕の人生は無敵です』(小学館)。

高橋 龍征 氏
場づくリスト / conecuri合同会社 代表社員
早稲田大学第一文学部卒業後、ソニー、サムスン電子や起業を経て、学びの場づくりやコミュニティ構築のアドバイザーへ。2007年に行きつけの寿司屋で隣り合った客と意気投合して「ご近所会」を立ち上げ、数年で築地本願寺で300人規模の宴会をやるまでに発展させる。ソニーのアルムナイ発起人、早稲田大学OB会の幹事、地方創生NPOの理事も務め、コロナ後はオンライン化の知見共有グループを立ち上げ、4,000人超にした「場づくりの実践家」。事業開発やコミュニティ運営で培ったノウハウを用いたセミナー企画の方法論は、著書『オンライン・セミナーのうまいやりかた』(クロスメディア・パブリッシング)として出版。noteでもさまざまなノウハウを言語化して発信している。

なつみっくす 氏
一般社団法人母親アップデート 代表理事
自身が母子家庭で育った経験から、「母親だからできない」をなくすため、2019年1月 「母親を、もっとおもしろく。」をビジョンに母親アップデートコミュニティ(HUC)を立ち上げる。 2020年8月一般社団法人母親アップデートを設立。2002年より日本ヒューレット・パッカード株式会社に勤務し、アカウントサポートマネージャーを経て、現在は企業向けマーケティングに従事している。「多様な価値観をミックスする」を信念とする。

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――まずは、コミュニティの立ち上げから、初期メンバーを募るまでのお話を伺いたいです。現在5年目を迎える早起きコミュニティ『朝渋』の場合はどのように始まったんですか?

5時こーじさん:
当時僕は社会人2年目の普通の営業マンだったので、特にコミュニティを立ち上げた経験や、「早起きを世の中に広げていきたい」という思いはなかったんですよね。

ただ、当時仕事でお付き合いがあった複業研究家の西村創一朗さんに、早寝早起きのプチコンサルを頼まれて。毎日寝る時間と起きる時間を送ってもらい、質問があったら全部答えて…というのを1ヶ月続けたら、彼が早起きになったんですよ。

すると、西村さんから「この早起き習慣は革命的だから、もっと社会的に活動したほうがいい!」と言われて、「5時こーじが語る『なぜ世界のCEOは朝5時に起きるのか』」というテーマでイベントをやることになったんです。

集まってくれたのはなんと30人。しかも、スーツをびしっと着たプロフェッショナルな方々ばかりでした。その方たちに対して講義をしてみたら、スタンディングオベーションで大絶賛してくれたんです。

当時は普通の24歳の営業マンで、決められた商材を売ることしかやったことがないなか、自分で価値を作って旗を上げてみたら、誰かのためになったという体験がすごく衝撃的でした。

そこで、本格的にコミュニティを作ることになり、20人集まったところからスタートしましたね。

――なるほど。はじめから自然に人が入ってきたんですね。

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5時こーじさん:
実は初期から、本の著者をゲストに招いたトークイベントをやってるんですよ。SHOWROOMの前田裕二さんや、オリエンタルラジオの中田さんなど、誰もが知っているようなビジネス界隈の錚々たる方たち。

その方たちは新刊を出したときに本をPRしたいので、「朝渋でイベントやるよ」とありがたいことに毎回ツイートしてくださる。すると勝手に『朝渋』の名前が拡声器のような形で広がり、人が集まるんです。そんなWin-Winな関係を築きながら、足場を大きくしてきています。

――その仕組みは早い段階から思いついていたんですか?

5時こーじさん:
そうですね。僕が「早起きしませんか」と言っても誰も振り向いてくれないけど、著名なゲストの方がSNSで呼び掛ければ、興味のある人が集まってくれる。

そして、実際にイベントに参加してみると、「早起きするってこんなに素敵なことなんだ」と気付いて、さらに朝活してみようと思ってくれた人がコミュニティのなかにどんどん入ってくる。このサイクルをずっと続けながら4年半のあいだにイベントを200回やって、今は250人弱ぐらいのコミュニティを運営しています。

――すごくいいサイクルができているんですね。高橋さんはどのように初期メンバーを募っていきましたか?

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高橋さん:
とにかく言いまわることと、ここぞと思ったら口説きにいくことをやっていましたね。あとは「本気かどうか」が大切だと思います。主催者自身が思い入れのない会に人を誘おうと思っても誘えないんですよ。

僕はもともと社交的ではなく、飲み会の幹事すらやったことないような人間だったんですけど、「ご近所に仲間を作ること」に魅入られてしまったので「ご近所会」を作りました。「素晴らしいものだから、皆さんどうぞ」と自然に思えるかは大事だと思います。

――なるほど。なつみっくすさんはどうですか?

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なつみっくすさん:
私たちは経済メディアの『NewsPicks』の番組観覧をきっかけに、自主的に立ち上げたコミュニティです。

私は母子家庭で育っていたこともあって、「母親だからできないんじゃないか」「自分の可能性に蓋をしているんじゃないか」と自分だけがモヤモヤを抱えていると思っていたんですけど、観覧に参加したとき「私だけじゃないんだ」と気付いて、その場でコミュニティを作りました。

当時集まってた観覧者40人のうち30人が最初に種火となって始まったので、メンバーの募集は全然していません。自然発生的にというか、カルピスの原液みたいな感じで、原液から漏れ出してくるものを見つけてもらう形で徐々に増えていきましたね。

――議論がその場だけでおわらず、コミュニティにまで発展したのにはどのような理由があるんですか?

なつみっくすさん:
私自身が当時モヤモヤMAXで、なにかきっかけを探していたというのが大きいです。家事育児・仕事を両立させなければいけない母親としてのモヤモヤ、女性が活躍できていない社会に対してのモヤモヤ…半分怒りもあったかもしれません。

当時高めの熱量でアンケートを書いたら、抽選に通って、スタジオでも一番前に座って、本気モードで参加していたら、「こんなに場の熱量があるんだから何かやったらいいんじゃないですか」ってMCの方が言ってくださったんですよ。

そこから自然と自分のスイッチが入って、それをいい意味で受け取ってくれる人がいたから、一緒にやっているという感じですね。

――コミュニティを立ち上げるって事業に近いですよね。

5時こーじ:
今はビジネスとしてファンコミュニティが流行ってるから、コミュニティを立ち上げるにあたって社内の未経験の方が抜擢されるケースもあると思うんですけど、なかなかうまくいかないこともありますよね。高橋さんはどう思いますか?

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高橋さん:
先に組織を作って回そうとしても、うまくいかないことが多いですね。そのコミュニティに対して思い入れを持てるか、実際に自分で考えて動いてくれるかを行動を通して見て、ふさわしい人をアサインする方がうまく回る可能性が高いです。

とりあえず手を挙げるだけの人はいくらでもいるけど、そういう人に任せちゃうと、ちょっと違うかな、という場合に、人を変えるのが難しいんですよね。

5時こーじさん:
「コミュニティリーダー」の称号はかっこいいですからね。僕も大阪の支部を展開しようと考えたことがあって、リーダーを募集したら30人ぐらい集まったんですよ。

そこで、まずは朝渋でやっているイベントに2ヶ月間オンラインで参加してみて、合うと思った人だけ残ってください、と言ったら全員辞退したんです(笑)。みんな称号がほしいだけなんですよね。

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――ちなみにコミュニティは何人の時点がひとつの「壁」だと感じましたか?

5時こーじさん:
僕が旗を上げたときに、全員に伝わらなくなる数字が30人だと感じました。

30人を超えてからは、小リーダーみたいな人が出てきて、コミュニティのコアになるような人にコンセンサスを取ってから、物事をスタートしたりするのはあると思いますね。

なつみっくすさん:
私はまずは種火を熱くしたいという思いがあったので、初期のころに思いがけず人がたくさん集まったため、100人で募集を止めたことがあります。今は230人ですが、いい意味で落ち着いていますね。

高橋さん:
人間が安定的な社会関係を維持できるとされる「ダンバー数」があるんですよね。1人の人間が見られる数が100人から150人ぐらい。ちょうどそのくらいだと思いますね。

――なるほど。
フェーズが進み、人が増えるにつれて、メンバーとの距離感はすごく重要になってくると思います。距離作りで心がけてることがあれば教えてください。

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なつみっくすさん:
コミュニティオーナーとメンバーの線よりも、メンバー同士の線をいかに増やせるかだと思います。

メンバー同士を自己紹介で共通点を見出して繋げるとか、メンバー同士が繋がれるような機会を提供したりとか。私自身はあまり深くも狭くもなく、なるべく差が出ないように接するようにしています。

高橋さん:
僕もやったことはメンバー同士を繋げることだけですね。

前に出て仕切ることもなくて、「そういえば主催者って誰だったんだろうね?」ぐらいの場をずっと作っていましたね。心がけていたのは、初めて来た人にも何十回も来ている人にも同じように接すること。

常連感が出てくると、コミュニティは腐った臭いを発してくるんです。そして、常連感を作ってるのは主催者の無意識の言動です。特定の人を贔屓するのは絶対にしてはならない。不安な気持ちを抱えながら新しく来てくれた人を大事にし、誰に対しても公平であることを心がけるのは大事ですね。

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5時こーじさん:
僕が接点を持っているのは全体の運営をするチームの6人と、毎月入ってくる25人の新人をサポートするチームの3人が中心ですね。メンバーと直接繋がることはやらないという意思決定でやっています。

生徒と先生ってプライベートで会わないじゃないですか。それに近い感覚です。出会う角度は決まっているから、プライベートを混ぜないほうがお互い健全だと思っています。

面白いのが、新人サポートチームに対してはオンボーディングが大事なので、仕事として依頼してるんですけど、運営チームは完全にボランティアでやってもらっているところと、3ヶ月に1回解体して組み直しているところです。

運営に選ぶ人の基準は、今一番『朝渋』にコミットできるか、『朝渋』を良くしたいと思っているかです。そうすると、今の課題感で動いてくれるようになる。

ずっと運営が変わらないと古株感が出てしまうので、運営マネジメントに新陳代謝が起こるような設計にしています。

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――コミュニティを継続するにはパワーがいると思うのですが、パワーを出し続ける、継続する秘訣はありますか?

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高橋さん:
確実にできるのは、負荷を最小にすることです。そうすれば、どんなに主催者のエネルギーが落ち込んでても最低限のことはできます。

あと、「いつでもやめてやる」と思ってないと、続けることが目的化して、歪む気がします。『ご近所会』も毎月の月例会をやっていたんですけど、規模が大きくなったとき、「これは自分の目指す状態じゃないな」とやめたんです。

もちろん人の繋がりは腐るものではないので、繋がるべき人とは繋がるしそうでない人とは繋がらないだけなので。「やめる」選択肢はつねに持ってないといけないんじゃないかな。

5時こーじ:
「こっちをちゃんと向いてくれる人」と関わることが大事だと思いますね。

「早起きにさせてください」という受動的な人を中心に考えてしまうと、「何かしてあげなきゃ」という気持ちになってくるので、その人は深追いせず、こっちを向いてる人に向き合うのはアップダウンしない秘訣だと思います。

メンバーが増えてくると、「こうしたらいいんじゃないか」という声をたくさんもらうんです。でもそれを全部聞いてると、コミュニティとして大きなものにはできないと感じているので、うまく突っぱねながら、自分が信じるものを表現しつづけるのはコミュニティリーダーに必要なことだと思いますね。

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なつみっくすさん:
コミュニティマネージャーはアップダウンがないほうがいいと思っているので、自分の栄養になることが何なのかを意識するのが大事だと思っています。私はメンバーに変化が生まれた瞬間を見るのが好きで、それが自分の栄養になる。それを安定的に保つようにしています。

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――コミュニティのフェーズによって、メンバーや主催する方自身の思いが変わってきたりすると思うんですけど、変化をしていく過程で、どうやってメンバーに伝えてきましたか?

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5時こーじさん:
さすがに200人を超えてくると収拾がつかない感覚があったので、しっかり価値観を共有するためにクレドを作ったんです。

今では「朝渋ではこれを大事にしていますよ」というのを、新人が入るたびに1時間かけて僕がプレゼンしています。ぶっちゃけ全然共感してくれない方も2割はいて、2、3ヶ月で退会するケースも全然あります。

ただ、この価値観の土台に共感した人は、早起きを通じてコミュニケーションを取っていくので、クレドができてから、新人も古株の人もフラットになりつつあると感じていますね。

なつみっくすさん:
私たちの場合は自分ごとにしてもらう機会をめちゃめちゃ作っています。たとえば、運営メンバーの20人を定期的に組み直したり、イベントを作って自分の言葉でこのコミュニティのことを話してもらったり、「3分プレゼン」の機会を設けたり。自分の言葉で喋れるようになる人が増える印象はありますね。

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高橋さん:
僕は書くのが向いているので、書いたものを何個も作りますね。

コミュニティに入った人に対して、「このコミュニティをどういう考えで作っているか」という思いを最初にメッセで送ったり、Facebookで1000字程度の投稿を22日間連続で投稿して、それを外にも見えるようにnoteでまとめなおして共有したりています。

こういう対応と行動によってメンバーと自分に刷り込んでいくのかなと思いますね。

――ありがとうございます。これからは人数を増やしていきたいのか、新陳代謝を促していきながら継続したいのか、次の展開のイメージはあるのでしょうか?

なつみっくすさん:
私たちの場合は、幸せの輪を広げる人が私たちのコミュニティからどんどん生まれればいいと思っているので、関係人口を増やすのに注力していますね。メンバーを急激に増加させるイメージは今はないです。

5時こーじさん:
うちは500人までは挑戦したいと考えていますね。

『朝渋』では出社前の2時間でランニングや読書などのいろんな活動していて、部活動も60あるんですけど、今は250人いるのである程度ニッチなことを企画しても2、3人は手が上がるんですよ。それが、どんな偏愛でも10人は興味があるという状態になったら面白いと思っています。

――うーん、やはりコミュニティ運営をされている方のなかには覚悟と狂気を感じます。皆さん、本日はありがとうございました!


ライター いしかわゆき @milkprincess17
meetALIVE プロデューサー 森脇 匡紀 @moriwaking
meetALIVE コミュニティマネージャー 小倉一葉 @osake1st
meetALIVE コミュニティサポーター 植田成美 @763community

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