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第11話 夜風

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 今回の生まれ変わりの中で、いちばん厄介な課題とはなんだろう。
「この人とだけは相容れない、この人を理解して許すなんて絶対に無理。」
幼い頃は確かに愛情があったはずなのに、時と共に静かに静かに反発し、いつしか世界でいちばん理解が及ばない存在になってしまったもの。

 許せない母を赦す。

 世の中には、一緒に買い物に出かけたりお茶をしたり、仲の良い母娘もたくさんいる。なのにうちの母ときたら…

 母を受け入れられなくなったこと、少しだけ書いてみたい。


 私の生家は自営業で、母は忙しい人だった。
虫歯になっても乳歯なら生え変わるという理論なのか、仕上げ磨きをしてもらったことがなかった私と二つ下の弟は、幼稚園のうちから全部の奥歯が銀歯になった。
 子供心にコンプレックスで、大きくなってからもどうしてこの時期きちんと歯磨きをしてくれなかったのか、よくも取り返しのつかないことをしてくれたと鏡を見るたび恨みを募らせた。

 また、我が家には住み込みで稼業を手伝ってくれる二十歳離れた従姉妹がいたのだが、ご飯作りも裁縫も、家事は彼女に教わった。
 スーパーへの買い物も、ちょっとしたお出かけも、学校での出来事を話すのもいつも従姉妹と一緒だった。

 母と一緒にいたくてもそもそも時間もなかったが、思い込みを事実と混同する癖のある母の会話は悪意なく思春期の私を傷つけるので、自然と会話はしなくなった。

 それなのに母は周りと比較しては「あんたはちっとも話してくれない。友達みたいな母娘になりたかったのに」と、そうなっていないのは全部私のせいだとこぼすのだ。

 そのうえさらに辛かったのは、中学生くらいから金縛りや霊体験をするようになった私の恐怖を頭ごなしに否定しては「お母さんにはまったく理解できない。どうしてあんたばっかりこんな風に育っちゃったんだろうね」と、怖くて真剣に困っている娘の悩みそのものではなく、私の人格そのものをばっさり切り捨てられたことだ。


 成長と共に、私は徐々に完璧に、母に心を閉ざしていった。

 だけど…


 その夜、用事で友人宅へ届け物をした帰り、住宅街をひとり歩きながら私はとうとう意を決して母に電話をかけた。

「…もしもし?私。
今日の日づけわかる?あきらが運ばれて今日でちょうど二年だよ。
 あのさあ、この二年間、確かにいろいろ大変だったけど、それでも私はあきらを産んで、出会えてよかったと思ってるのね。
でもそのためには、私がちゃんと生まれてないことにはあきらに出会えてなかったってことでしょ。
 私、そっちに育ててもらったやり方は、今でもいろいろ疑問が残ってるから育ててくれてありがとうとはまったく思ってないし、言いたいとも思えない。
だけどあきらと一緒に過ごせるってことは、遡るとそういうことだから、これだけはちゃんと伝えようと思ってそれで電話したの。

 私を産んでくれたことには感謝してる。」


 自分でもわかる、呆れるほどの天邪鬼。それでもすごく勇気を出して頑張った。反吐が出そうになりながら、なんとか最低限、言うべきことは言おうと思った。
スサノオやタケミカヅチの精算を見せてもらって、私も自分なりにできることをやってみようと思ったのだ。


 言った自分に若干気持ち悪さを覚えていた。呼吸もまだ、おかしいままだ。
蒸し暑さに加えて緊張までまとわりついた肌の上を時折心地よい風が通り過ぎていく。
 ひと気のない夜でよかった、ただあの人にだけは見られてたけど。

 まるい、おおきな月が出ていた。
雲ひとつない空から成り行きすべてを見届けていたのは、物事が大きく動き出す9月の十五夜の満月だった。


written by ひみ



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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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今回のお話は、読むことで嫉妬や抵抗が出る方がたくさんいますね。
母と娘、父と息子は魂の進化を目指す上で課題にしている方がとても多いので、その拒絶反応たるや笑

みなさーん、地球は行動の星ですよ(^-^)
ちょっとずつ、できる範囲であなたのペースで。
大丈夫。私も伴走させていただきますね。

ええと、meetooでは親子関係も、嫉妬心や抵抗感情もけーこさんがゴリゴリゴリゴリ…
はい、お待ちしています♪


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