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第10話 RPG

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 その週末、あきらは旦那と一緒に都内で行われるアニメイベントに行くという。身体を起こせない入院生活において、アニメはあきらの大切な友人だった。それが高じてすっかりファンになった作品シリーズのステージイベントや関連ゲーム展などを、まるまる二日をかけて遊び尽くすというのだ。
 ならば、その二日間を一人旅に当てられないかと考える。旦那からもあきらからも問題ないから行っておいでとの返事をもらえたことで、さっそく宿を手配した。


 茨城県の鹿島神宮へは、風水にはまっていた約二十年前にも一人で行ったことがある。当時住んでいた所から真東へと地図を辿るとそここそが鹿島の地だった。
 境内のお団子屋さんから教わったことで、帰りは東京駅まで二時間の高速バスが出ていることがわかったが、行きはたくさんの電車を乗り継ぎ、ローカル線のホームでは何十分も待たされやっとのことで辿り着いた。
 立派な鳥居と楼門、思っていた以上に広大な境内への驚きは、ネットの情報が乏しい時代ゆえの嬉しい副産物だった。



 「お側に参りました。」
あの時と同じ大鳥居をくぐる。鹿島には、手前の本殿及び拝殿にはタケミカヅチが。そのずっと奥、清々しい参道の先にある奥宮には、タケミカヅチの荒魂(アラミタマ)が祀られている。

 荒魂とは魂の一つの面。荒魂と和魂(ニギミタマ)の二面でひとつと捉える見方と、さらに幸魂(サキミタマ)と奇魂(クシミタマ)を合わせて四面で捉える見方とがある。
 人間関係でも、人ひとりの人物像はそこに関わる人間の数の分だけある。荒魂と和魂それぞれに、別の名前がついた神さまだっていらっしゃる。
ここ鹿島神宮も、統合されたタケミカヅチにお詣りしたと思ったら、今度はその分離した荒魂が出迎えてくれるのである。
 日本人特有なのかどうなのか、なんとおおらかにお祀りすることか。この、分けているようでごちゃ混ぜな神と人との繋がりを、私はけっこう気に入っている。

 境内には大きな腕に守られているような、まさに男前と呼ぶに相応しいエネルギーが満ちている。緑の気がまた心地よい。
 当時の私は今ほど神々とコミュニケーションが取れるわけでもなかったが、切り絵の完成をお伝えすると、本日はゆっくりしていってくださいと頷いてくれたのが伝わった。特に奥宮からはその感覚が多く感じられ、離れ難いほどの長時間、私はひとり佇んでいた。



 旅を終え、家に帰宅してからおや?と思った。
どのタイミングでなのかわからないけど、いつの間にかタケミカヅチから剣を預かった気がする。洗面所の鏡の前で、妄想だと思いながらも剣を意識すると、ボコボコっと少しえずいた。どうしたらいいものなのかもわからないので、イマジネーションで剣を体内に収める。
 そしてそれきり満足してしまい、剣のことは日常生活に紛れてすっかり頭から抜けおちてしまった。

 この剣を次に思い出すのは、もう少しだけ先のことになる。



written by ひみ

⭐︎⭐︎⭐︎
実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

男前インパクトはこの時がいちばん感じたなぁ。。また鹿島に行きたいなー。

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