結婚式場の配膳

そのバイトを紹介してくれたのは、中学校も同じだったヒロでした。高校2年生のときでした。

ヒロには4つ年上のお姉さんがいて、美人で社交的で顔が広いひとだったので、どこからか人集めを頼まれたようでした。

結婚式場で、披露宴の食事の配膳準備やバッシングをするという仕事で、出来る日だけ行けばよく、お給料は帰りに現金でくれるという、高校生には何ともおいしいバイトでした。

結婚式ですから、仕事は土日祝日で、仏滅などにはもちろんありませんでした。

当時の披露宴は、長テーブルをいくつも並べてた席が何列も並んでいる会場が主流で、お客さんはたいがい100~200人。
料理の入ったばんじゅうを片手に持ち、ひたすら同じ料理をテーブルに並べていくという仕事でした。
大安だったりすると、それはもう件数が多く、1つの部屋が終わるやいなやすぐ次の部屋、また次の部屋と移動させられました。

披露宴が終わると、今度はその片付けです。

残った料理や飲み物などを集めたり、それらをよけた食器を回収していきます。お客が手をつけていない料理は、暗黙の了解で、食べても良い感じでした。

私は母子家庭ではありましたが一人っ子で、誰かと食べ物を取り合うような経験もなく、何よりも食べることに全くと言っていいほど興味がありませんでした。
食べるのも遅いし立って食べることに抵抗があったので、自分から残った料理に手をつけることはありませんでした。
ところが、一緒に働いているおばさま方に気に入られ
「ほら、これとっといたよ!食べな!」
なんて言って渡され、無理やり食べることがとても苦痛でした。
気持ちは有難かったのですが…

披露宴の豪華な食事のための食器は重くて、帰るころにはクタクタになるのですが、高校生にとっては大金の現金を帰りがけに受け取ると、疲れも吹き飛び、誘われるとまた嘘をついて部活を休んでしまうのでした。

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