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Mediiが届ける「E-コンサル」の有用性~事例集より~

地域医療における専門医不足問題の解決を目指し、専門医の知見を最大化することで医療へ貢献する株式会社Medii。
今回は「E-コンサル」についてと実際の症例をご紹介させていただきます。

E-コンサルとは?

「E-コンサル®︎」は、Doctor to Doctorのオンライン相談サービスです。
1:1の匿名で気軽にMediiに登録する認定専門医に相談できるプラットフォームで、Medii側で医師確認を行っていますから、匿名でも専門医師という信頼を担保できます。医師は無料でコンサルを依頼することができ、回答した医師には、アマゾンギフト券などに交換できるポイントが付与される仕組みとなっています。

E-コンサルをより詳しく

チャット形式なので、質問や回答がわかりやすく、一度の質問回答で解決しない場合には追加質問を行うことも可能ですし、必要に応じて通話することも可能です。

病院単位の契約では、医療格差となる専門医不在の地域の病院では、自治体の補助によりサービスを導入しているケースもあります。また、2022年3月18日(金)に発表した通り、現在製薬企業との連携を進めており、専門医の知見を必要とする地域に利用料は無料で知見を届け、知見を提供した医師には謝礼が支払われる仕組みの構築をすすめています。

無料で『E-コンサル』を利用してみる!

「E-コンサル」は専門医の地域偏在を是正することが可能となっており、
既に全国で多数の医療機関で導入されています。
それでは実際にどんなコンサルがされているのでしょうか。

《事例1》呼吸器内科 
特発性肺線維症、今後の治療方針の相談

60 代 男性 特発性肺線維症
既往:DM(糖尿病)
仕事:元電鉄会社職員、粉塵吸引なし、アレルギーなし
喫煙:40本/日×48年 1年前から禁煙 
現在の処方: PSL 50mg/日、バクタ 1 錠、ウルティブロ吸入

【病歴】

糖尿病で近医通院中、7年前から労作時呼吸困難があり間質性肺炎指摘され呼吸器内科受診を勧められるも拒否。3-4年前から労作時呼吸困難が強くなり農作業ができなくなり、3か月前から近医へ通院できなくなり当院へ
紹介。この間、糖尿病治療はHbA1c 10台でコントロール不良、昨年末から
労作時呼吸困難に対してICS/LABA/LAMA吸入を開始した。

【身体所見】

受診時SpO2 94 (O2 4L/分)、RR 30/分、皮膚所見なし、関節所見なし

【検査所見】

特異抗体は陰性、KL-6 940 U/ml、SP-D 183 ng/mLと高値を示す

【画像所見】

CTでは両肺辺縁に蜂巣肺が見られ、下葉の蜂巣肺の変化が最も著しく蜂巣肺と正常範囲は突然に移行しており、肺気腫が背景にあるかもしれないが
通常型間質性肺炎UIPの進行型との所見と考えます。

以上より、特発性間質性肺炎と考え、また炎症所見を軽度認め、感染契機の増悪可能性を考え、現在はTAZ/PIPCとステロイドパルス療法を行い、
その後、PSL 1 mg/kg/dayを内服しています。

HOT導入に向けて呼吸リハビリを行い、安静ではSpO2 94%(O2 4L/分)、
労作時85%くらいとなりますが、それ以外は全身状態は保たれており、
リハビリに取り組まれています。

主治医(相談者)

①経過からするとIPFの急性増悪というよりはIPFの進行した状態を見ているように感じるのですが、そう考えるのが妥当でしょうか?
また、ステロイドは効果が明らかでなければ減量、中止が望ましいと考えているのですが、いかがでしょうか?

②IPFの進行した状態と考えた場合、抗線維化薬はこの時期でも有効で導入した方がよいのでしょうか?

③免疫抑制剤併用も考慮しましたが IPFの進行型なら効果が証明されていないと考え、併用していないのですが、これについてはいかがでしょうか?

Medii登録専門医(回答者)

①御呈示いただいたCT画像が今回入院時のものであれば、間質性肺炎の急性増悪は否定的と考えます。一般に間質性肺炎の増悪時には、
今回、ご供覧いただいたCTの状態にすりガラス陰影が加わってくるのが
通常です。
IPパターンについては、UIPパターンといっても大きく矛盾はしないかと
思いますが、一見末梢肺優位に出現した気腫性変化と見えなくもありません。
重喫煙歴があるようで、CPFE(気腫合併肺線維症)が鑑別にあがるかと思います。可能ならば、拡散能力検査も含む肺機能検査を施行し、
IPに典型的な拘束性障害+拡散障害パターンなのか、CPFEに特徴的なスパイロ正常+拡散能著明低下なのかをご確認されるとよいと思います。
一つご確認いただきたいのが、右心負荷の程度です。
増悪傾向の労作時呼吸困難の原因として、特に気腫性変化の強い方の場合、肺血管床の減少による右心負荷の増大があることがあります。
CPFEでも進行すれば右心負荷が顕著にでてきます。右心負荷による労作時の低酸素血症の場合はHOT導入が第一の選択肢になると思います。

②画像でCPFEの問題が残りますが、抗線維化薬、とくにニンテダニブについては導入可能かと考えます。
薬剤費用が高いため、問題があります。
ステロイドは早期に減量中止が望ましいと思います。
CPFEであることが肺機能で特に疑われる場合は、今のところニンテダニブが有効との知見は得られていないと思いますので、導入しても有益性は低いかもしれません。
それよりも労作時の低酸素血症を評価の上、HOT導入がよいと考えられます。

③免疫抑制薬はIPFで有効性は否定的であり、「使用しないよう推奨」されていると思います。
CPFEについては上述したように有効な治療はわかっていませんので、あえて導入する理由はないかと考えます。

地域柄難しいのかもしれませんが、できれば呼吸器内科の専門医に一度紹介してもらうとよいのではないかと思います。

 

主治医(相談者)

丁寧な御回答ありがとうございます。ステロイドについては減量、
中止の方向にしたいと思います。
呼吸機能検査を早速施行したいと思いますが、現在安静時でも酸素4L/分でSpO2 92-94%、RR 20/分前後でトイレなどの短距離歩行で酸素4L/分で
85%前後まで低下する状態です。
呼吸リハビリの効果もあり、シャワー浴まで可能になってきた状態であり、このままHOTを導入して退院。その後、呼吸器内科に紹介して、難病申請やニンテダニブ導入をお願いする方向で考えたいと思います。
この度は的確なご指摘をいただき、非専門医としては方向性が分かり、
心より感謝申し上げます。

まとめとコメント

呼吸器内科専門医は疾患に比して専門医数が少ない状況であり、
間質性肺炎の鑑別診断や治療に関しては非専門医による対応は困難である
ことが多いのが現状です。
専門医でも診断や治療に迷うこともあり、カンファレンスなどで複数医師により診断・治療を相談して決定していきます。特発性間質性肺炎の診断・治療に関しては、呼吸器専門病理医、呼吸器専門放射線科医と呼吸器臨床医の三者が同じ土俵で十分に議論して、最終的に臨床医が方針を決定していくというmultidisciplinary discussion(MDD)という概念が非常に重視されてきており、ガイドラインにも明示されています[1]。

今回の症例ではUIPとも考えられますが、重喫煙歴と肺気腫がみられ、
CPFEなども疑う画像所見であり、急性増悪を起こしているわけではありませんでした。またステロイドや免疫抑制剤などは有効と考えられない状況であり、慢性進行性による呼吸不全がみられるため、まずは可能な範囲で評価を行いつつ、在宅酸素を導入して今後専門医に紹介し、難病申請や抗線維化薬導入などを検討していくという症例でした。

このように専門医不在時にも専門性の高い疾患の診断や治療、
今後の進め方について「E-コンサル」を活用することで適切な方針へと診療において導くことが可能となりました。ぜひみなさん利用してみて
その有用性を実感してみてください。

執筆者:Dr.心拍@呼吸器内科医
参考:[1]日本呼吸器学会、特発性間質性肺炎診断と治療の手引き(訂第3版)