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目的別 システム構築のポイント③

今回は「働き方改革・医師や職員の業務効率化」を目的としたシステム構築のポイントについてです。

■入退院支援業務における業務効率化のポイント

コロナで埋もれてしまった感がありますが、2020年度の診療報酬改定において「働き方改革」は最優先課題の一つでしたね。
特に勤務医については2024年4月から時間外労働時間を「原則、年間960時間までとする」ために、管理部門の方は色々試行錯誤されているのではないかと思います。
もちろん、働き方改革は医療機関全体の問題です。
少なくとも私が担当した病院の病棟看護師さんや入退院支援部門の看護師さん、MSWの方で日中のんびり仕事をしておられたり、残業が皆無というところはありませんでした。
そのため、業務を効率化したいというのは医療機関の全ての職員さんの思いではないでしょうか。実際、現場の方にヒアリングすると、やはりご自身の担当する業務がいかに大変で、効率化の必要に迫られているかということを訴えられることはとても多いです。

業務効率化について最初の課題は、電子カルテシステム内でどこまで業務効率化を行えるかということです。
私が、システムにおいて業務効率化に最も寄与できていると感じる機能は、データを連携する機能です。

入退院支援においては、同じような情報が繰り返し活用される傾向にあります。
例えば、入院前の患者さんの居場所やご自宅の状況、ご家族の介護力、利用している介護サービスや、行っている医療処置など。それらは入院前説明の際などにヒアリングし、カンファレンスで参照し、退院支援計画書や介護支援等連携指導書に記載します。
つまり、同じことを何回も何回も入力しているということです。

もし、それぞれのデータを連携する機能があれば、一度入力した情報は何度も入力しなくてもカルテ記録や文書に反映させることができます。
さらに、入院を繰り返す患者さんの場合、前回入院時に入力した情報も活用できるので、入力業務の効率は大幅に向上するのではないでしょうか。

現在使用している電子カルテシステムにそのような仕組みがなくても、入退院支援業務に関するシステムを単体で販売しているベンダーもあるので、一度調べてみることをお勧めします。

■運用構築における業務効率化のポイント

前述のように、入退院支援業務に合った電子カルテシステムを導入する以外にもできることはありそうです。

これは入退院支援業務の現場担当者ではなく、業務をよく知っている管理部門の方や看護部長さんの目線でやってみてほしいことなのですが、業務量に不均衡が起こっていないか確認してみてください。
医師・病棟看護師・入退院支援部門職員のどこかに業務の比重が偏り過ぎてはいないでしょうか?
特に多忙な医師や病棟師長のタスクが多すぎると、運用のボトルネックになりやすいです。これは、「システム構築のポイント②」でお話したように、平均在院日数短縮の妨げにもなりがちです。
これは各病院の文化にもよるので、なかなか改革は難しいかもしれませんが、各業務を標準化し、裁量権を委譲していくことは働き方改革において必須となります。またこれは現場の方には難しく、病院の管理部門の方が采配を振るう必要があります。
もし、やられていない場合はぜひ一度、入退院支援業務に関する運用フローを作成し、どこかに効率化・標準化できる部分はないか検討してみてください。

もう一つ、運用を構築する上でできるだけ減らすべきと思うことがあります。これは、「判断」と「情報共有」です。

まず「判断」についてですが、「判断」するためには考える時間が必要となります。これは個人の特性にもよりますが、「判断」に至るまで時間が必要なタイプのひとや、ストレスがかかるひとって案外多いですよね。特に病院業務のように、なかなか一つのことに集中できない環境では、思考→判断の時間は後に後に追いやられてしまいがちです。
入退院支援業務においては、「退院支援を行うか?」「介入をするか?」「ケアマネに連絡するか?」「退院調整を開始するか?」「どこに退院調整の依頼をかけるか?」などの判断を始終行っていく必要があります。これらひとつひとつについて、患者さんの個別性などから判断するのではなく、できるだけ標準化して、「この条件があればこうする」という運用を構築すればするほど、「判断」に要する時間は減ります。

また「情報共有」についてですが、これは「共有する情報」を減らすのではなく、「情報を共有する手間」を減らすと考えてください。
例えば、「退院調整を開始してください」「退院先が決まりました」などの連絡、「ケアプランを受け取っているか?」「指導書の記載は完了しているか」など他部署の業務進捗を確認する手間を減らすのです。
そのためには、入退院支援に関する進捗や連絡は入退院支援専用の進捗確認画面などを、入退院支援に関連する全ての職員が確認できるような仕組みが有用だと思います。
エクセルなどに入力している病院も多いですが、エクセルの場合、複数の職員が同じファイルに入力することができませんし、何よりエクセルに入力するための時間が、実業務とは別に必要となります。
入退院支援業務専用のシステムが導入されればその点はずいぶん楽になりますが、もしなくても「情報を共有する手間をいかに減らすか」ということを基準に業務フローを見直すことで、できることがあると思われます。

■まとめ

働き方改革・医師や職員の業務効率化を目的とした入退院支援業務の構築においては、下記のポイントをおさえましょう。

・重複入力をできるだけ減らすことができる電子カルテシステムを導入する。
・高い視点で業務フローを見直し、効率化・標準化できる点がないか確認する。特に「判断」「情報共有」に時間をとられない運用を構築する。



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