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【医療物資のドローン物流】2018年に実施された世界初ワクチンのドローンデリバリー

オーストラリアのドローン物流(drone logistics)企業Swoop Aero社が民間企業として世界で初めてワクチン(vaccine)のドローンデリバリー(drone delivery)を実施してから2021年12月18日で4周年を迎えた。

これまで【医療物資のドローン物流】シリーズとして『コロナ禍で加速したドローンによる医療サプライチェーン変革』[序章][機体篇]および『医療物資のドローン物流』[救急ドローン篇][移植用臓器篇]とドローンデリバリーによる医療物資のサプライチェーン変革を見てきた。本稿では[ワクチン篇]として医療分野におけるドローン活用の重要な使命のひとつであるワクチンのコールドチェーン空輸の始まりとなった世界初のワクチンドローンデリバリープロジェクトを振り返る。

世界初ワクチンのドローンデリバリー

世界初となる民間企業によるワクチンのドローンデリバリーはUNICEF(ユニセフ)、バヌアツ共和国政府オーストラリア外務貿易省などの協力のもと、2018年12月18日にオーストラリアのドローン物流企業Swoop Aero社によってバヌアツ共和国の島嶼部で行われた。

離島で構成された島嶼国バヌアツ

バヌアツは1,300kmに渡る80の島々で構成された島嶼国で、ワクチンのコールドチェーン輸送が課題となっていた。

輸送時間を2日間から数時間へ短縮

世界初となったこのワクチンのドローンデリバリープロジェクトによってこれまで2日間かかっていたワクチン輸送が数時間に短縮された。この成功により、これまで予防接種を打つことがかなわなかった子供たちにユニセフは小児用予防接種ワクチンを届けることができるようになった。

拡大する医療物資のドローン物流

これら実績の積み重ねにより、現在では医療物資のドローン物流は医療サプライチェーンにとってなくてはならない存在となった。Swoop Aero社だけでもバヌアツの他にマラウイ、モザンビーク、コンゴ民主共和国、シエラレオネ、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、EUなどの国や地域で医療物資のドローン物流を行っている。さらに来年(2022年)からはナミビア共和国での医薬品など医療物資のドローン物流開始が決定している。

もちろん、今ではアフリカなどで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンや検体のドローン搬送が行われていることは広く知られた事例である。

因みに、医療物資のドローン物流ではアメリカ企業のZipline社も有名だが、Zipline社のドローンデリバリーサービスは一方的に物資をパラシュート投下で配達するだけの一方通行なのに対し、Swoop Aero社はVTOL(垂直離着陸)機を使用してお互いに物資を受け取り送り合える双方向ドローン配送なのが特徴である。現状の医療物資のドローン物流では後者の双方向ドローンデリバリーが主流である。

Swoop Aero社の新型機「Kite」

また、Swoop Aero社は『【医療物資のドローン物流】デリバリーで活躍するドローンたち 〜 コロナ禍で加速したドローンによる医療サプライチェーン変革[機体篇]』で紹介した最大ペイロード3kgのドローン機体(UAV)「Kookaburra」から可搬重量5kg(5kg積載時の最大航続距離130km)となった新型機「Kite」を今年(2021年)8月に発表している。

命も地球環境も救うドローンデリバリー

医療サプライチェーンに変革をもたらしたドローンデリバリーは一般の商用ドローン宅配サービスにおいても環境への負担が少なくエコでクリーンな特性がある(以前の記事『【ドローンデリバリー】が環境イニシアチブ賞受賞』を参照くうださい)。

さらに、これまでのデータでは配達コストまで抑えられる。ただ、都市部で頻繁に使用されるようになると社会全体でのコストは上がるかもしれないという研究も出てきたが、それでもドローンを活用することで自動車の交通量削減と排ガス低減によるゼロエミッションが推進され、社会全体における環境負担(環境負荷)軽減が実現できる確度が高いとされる。

ドローンの活用によって命も環境も救われる社会の到来を期すると同時に、私たちの「救急医療ドローンプラットフォーム」(Emergency Medical Drone Platform)もドローンで命が助かる社会の実現を目指している。


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