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富山市LRT南北開通〜SDGsから富山を考える〜【持続可能な地域のつくり方 Vol.2】

こんにちは。

今回はvol.1に続く記事として、2018年6月にSDGs未来都市(2018年に内閣府地方創生推進事務局が、SDGsの達成に向けた優れた取り組みと提案する29都市が選定された。)に選定された我が富山市を例に持続可能な地域を考えていきましょう!

これまで何度も紹介してきましたが、富山市は中心的な取り組みとして

コンパクトシティ

を掲げています。

日本の人口は2050年までに3000万人減少する見込みであり、富山のような中核都市は激しく減ると予想でき、現富山市長就任当時の一番の問題意識でした。

この問題を解決する施策として3本柱を設定しました。↓

その1:公共交通を軸としたコンパクトなまちづくり
その2:その便利な交通沿線に住む人を緩やかに誘導すること
その3:高齢者から見ても若者から見ても魅力的な中心市街地を作り、外出機会を増やすこと

その最初の取り組みとして2006年4月に富山駅から富山港までの約8キロメートルを結ぶLRT(light rail transit:次世代型路面電車)を導入し、2009年には市内電車の環状線化を行いました。又、電停の数を増やし、バリアフリー化を進め、高齢者を含めたあらゆる市民の使いやすさ、取りやすさを高めるための様々な取り組みを現在まで継続的に行っています。

そして先月21日、富山駅の南北を走るLRTがつながり、市街地の一体化が進んだことで、市が進めてきたコンパクトシティ政策の1つの到達点に達しました。

このLRTなんですが、象徴的な取り組みとして65歳以上を対象にどこから乗車しても中心市街地で降りれば運賃が100円になるおでかけ定期券、というものがあります。

この取り組みの成果で昼の時間帯に中高年女性が郊外から都市部へ遊びに来るという新たな習慣が生まれ、LRTの利用客は初年度の2倍になりました。

又、中心部にある富山唯一の百貨店の隣が再開発事業の対象となり、その場所に全天候型の多目的広場を整備しました。今では休日はほぼ100%、平日でも75%の市民のみなさんが何らかのイベントを開催しています。土日の中心部は本当に賑わっており、こうした政策の積み重ねで自然と中心に人が集まり、中山間地域の市民が公共交通機関で街に出るスタイルが定着しています。

そうすると、ガソリン消費量も減り、温室効果ガスの排出量も減少し、健康増進にもつながります。郊外や中山間地域の人から見れば不公平だと感じるかもしれませんが市全体としてメリットが多数あります。

医療面では、保健師が行う在宅医療・介護の保険サービスを効率的に巡回でき、行政コストを抑えることができます。

一番大きいのは税収です。固定資産税と都市計画税が市の税収の半分近くを占めており、中心市街地が活性化して店舗の売り上げ上昇、民間企業の投資が増え、税収が増えるのです。

こうして効率的な組織で生まれた財源を中山間地域で暮らす人のために使うこともできます。

このように、交通政策を中心としてコンパクトシティの取り組みが行われていますが、それだけではありません。

富山市は持続可能な地域実現のために、市の総合力を上げることを一番のポイントに挙げており、産業の活性化や高齢者の生きがいと健康促進、若者の雇用、住環境の整備、教育水準の上昇など、包括的な取り組みを実現しなければならないと森市長は述べています。

日本一の福祉水準の街を作っても、そこに雇用がなければ人は来ません。雇用があっても教育水準が低く、子育て環境が良くなければ家族で住みたいとは思いません。どこか一領域ではなく総合的な力が必要です。

高齢者が孫と一緒に動物園や科学館などの施設に行くと入場料が無料になる制度や、まちなか総合ケアセンターの取り組みの一つとしてある、仕事中に子どもが発熱したときにお母さんの代わりに看護師と保育士が揃ってタクシーで迎えに行き、指定病院に連れて行くという日本で初めてのサービスなどがその良い例です。

お迎え型病児保育事業、教育分野では生活保護家庭と1人親家庭の子どもを対象に中学在学時から就職まで市の職員との面会や学費・資格、所得費用の支援を行い、貧困の連鎖を断ち切ることにも取り組んでいます。


私自身もまだ勉強段階なのですが、
富山のコンパクトシティ政策が今後どうなっていくのか、富山に住む1人としてとても楽しみで、関わっていきたいと思います!


さて、おさらいですが、持続可能な地域とは

「人と経済の豊かな生態系が息づいた地域」

と定義されており、その持続可能な地域に根付く4つの「生態環境」を生態系を例にとって以下のように設定しています。

土:つながり協働し高め合う 地域コミュニティ
陽:道を照らしみんなを導く 未来ビジョン
風:一人ひとりの生きがいを創る チャレンジ
水:未来を切り拓く力を育む 次世代教育

それぞれがどんなものを指すのかざっと書き出したので下に載せます!↓


【土】
人と人がつながること、地域に強いコミュニティが存在することには5つのメリットが存在する。
①幸福度を高める
②生命力を高める
趣味関係のグループへ年数回以上参加すると、その地域で介護が必要となる人は減少する傾向がある。
③生産性・創造性を高める
④利他性を高める
⑤経済的利益を生む

〈キーワードの紹介〉
地域内経済循環:持っているお金の8割を地元内で消費し、2割が地域外で使われるとする。消費額がはじめ1万円だとすると、8000円が残り、次には6400円残り、これをゼロになるまで繰り返すと約5万円が地域で消費されることになる。割合が逆だと地域内消費額は約2万円となり、約3万円分が地域外に漏れていることになる。

行政は組織の壁を超えて1つのチームになることに積極的取り組む役割があり、富山市では市長のリーダーシップのもと、組織にとらわれない視点で施策を検討・立案するために、様々な部局の職員から編成されるタスクフォースを設置しています。


【陽】
ビジョンの役割は5つあります。
①持続可能な未来への道しるべ
②現在思考から未来思考への転換
③住民のエネルギー源、行動の動機、地域愛の醸成
④チーム力を上げる絶好の機会
⑤地域外から求心力を生む


【風】
持続可能な地域づくりに必要な生態環境3つ目は「風」であり、住民の人生を豊かにする自己実現、チャレンジを意味しています。

風を起こすために必要な2つのことは以下の2つが挙げられる。
・熱=個人の思い(風を呼び起こす熱)
・仲間(熱を起こし持続させる仲間の力)


【水】
地域の子どもを取り巻く社会環境変化として以下のようなものが存在しています。
(教育分野に興味があるので少し長くなってしまいますがご容赦ください。)

①拡がる学習機会の地域格差
学習意欲とつながりに関する調査(2017年実施)によると、都市の人口規模と中学生・高校生の学習意欲、困難なことへの挑戦意欲、将来の展望などに差があり、人口規模が小さくなればなるほど、多くの項目で低下すると報告されました。また、将来展望、自己肯定感、学習意欲の3つの間には一定の相関関係がみられ、学習意欲を高めるためには、自己を肯定し自分に自信を持つこと(自己肯定)、そして将来の夢を描き自分の未来に可能性を見出すこと(将来展望)が鍵を握っています。そして、大都市圏と町村部の間で、自分の明るい将来を描き大きな夢を持つ機会、自分自身に自信を持ち自分を肯定できる機会が不足しており、それが原因で子どもたちの学習意欲、さらには学力の格差が生まれている可能性があるのです。

②弱体化する育の生態系
子ども時代は大きく2つのハコに分かれるといい、4歳〜9歳の赤いハコ期は頭と心をのびのび育てる時期、11歳〜18歳の青いハコ期は、じっくり考える力を養う時期です。青いハコ期は多くの大人や複雑な人間関係の中で育まれるので、①での
調査のように中高生になると地域格差が生じてくるのです。
さらに、急速に人口減少が進み、地場産業の衰退が進む地域では、進学、就職のタイミングで多くの若者が地域を離れる。進路を意識し始める中高生にとって自分が進む道を示すロールモデルの役割を果たす人が少なくなっているのも問題と
なっています。


以上のようにこれら4つの「生態環境」にアプローチすることが、

人と経済の豊かな生態系が息づいた地域

を実現させるために重要であり、富山市の活動と重ね合わせてみても、富山市が未来ビジョンを掲げて次世代教育、チャレンジへの支援のために地域で協働しているなどの実践が様々な場面で見られています。

私たちも、今月4月より有志の学生によって

「社会的処方」

という活動を進めていきます。
地域コミュニティを大事に、ビジョンをもって年代や国籍、性別に関わらずみんなで関わりながら作り上げていけたらいいな、と思っています。

この本で学んだことをきっと活かせそうなので、また何かしらの形で報告します。
それでは。

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