10人インタビュー企画 ④佐藤学~にかほを拠点にめくるめく世界を、めぐるめぐ世界へ~
株式会社めぐるめぐ 代表取締役 佐藤学(さとうまなぶ)さん
にかほ市出身の学さん。昨年の4月に「株式会社めぐるめぐ」を設立し、活躍されています。様々な情報が溢れ、それを追いかける“めくるめく世界”を地域の風土・歴史からの学びをもとに循環する“めぐるめぐ世界”へ。山・海・水が暮らしの傍で循環するにかほ市から取り組み発信されています。そんな学さんの生い立ちや現在の取り組み、学さんからの感じるにかほ市の魅力について深掘りしていこうと思います。
Q: どんな学生時代でしたか?
行先の起点は「食」になっていた
大学では“都内に出て、良い企業に行きたい”という想いから、高校から親元を離れ秋田市内の高校へ進学しました。高校卒業後は東京に出て、1年の浪人期間を経て中央大学総合政策学部へ進学しました。そこでは国際関係、アジアのODA、戦後日本の復興について学んでいました。元々旅行にいくのが好きで、友達と四国一周したり、海外の友達に会いに行ったりしていました。その中でも食べることが好きで、行先や宿を選ぶ時も食べ物が一つの起点となっていました。
Q: 地元に戻ろうと思ったきっかけは?
仕事以外の時間を充実させたい
初めは大学を出て街のランドマークをつくる仕事がしたいと思っていましたが、もっと個人に寄り添った仕事をしたいと思い、住宅メーカーに新卒で入社しました。しかし、働き方に疑問を感じるようになって2年で退職しました。
もっと自分の好きな食・旅行・アクティビティなど、仕事以外の暮らし方を大切にしたいと思い、それが実現できるにかほへ25歳の時に戻りました。地元なら季節の食も溢れているし、バイクやスキーなど自分の好きなことが気軽にできるから良いなと思ったのです。
地元に戻った後は1年間公務員試験の勉強をし、最終的ににかほ市役所に勤務しました。市役所では主に企画課(現:総合政策課)で市長が始める新しいことや、市全体の総合発展計画を作っていました。後半は地方創生の計画や廃校の活用などの新規事業に携わりました。
Q: なぜ市役所をやめる決断をしたのですか?
問題を解決するプレイヤー側に回りたい
市役所は税金を扱っている以上、困って相談に来てくれる個人や1つの企業だけに肩入れすることは難しいです。どうしても公平・公正が重視されて、地域の人たちから相談を受けてもピンポイントで対応しにくいケースがあります。個々の問題を解決できる地域のプレイヤーが少ないことがこの地域の課題だと感じて、プレイヤー側にシフトチェンジしようと考えました。
行政が課題の把握から、計画づくり、実行まですべてを完結させることはマンパワーの面でも無理があります。行政がやるところ、民間でやるところ、一緒にやるところの役割分担をしていかないと、特に地方は何でも行政にかぶさってきます。でも、行政では対応しにくい、行政はやってくれないという悪循環になります。よく話題になっている他県のまちの状況を見ると、地域で活動しているプレイヤーが鍵だと思っていました。そのようなまちを見たり、その方とお話しする中で、やっぱり「地域で動ける人」が必要だと感じました。映画のセリフにもあるように、「事件は会議室で起きているんじゃない。現場で起きているんだ!」まさに、地方の現状を一言で言うなら、これだと思います。ネットで検索しても答えは出ません。現場サイドで当事者と話して、情報をキャッチし、いろいろな方の協力をいただきながら動いてみる。それでも行政からの支援が必要なところを相談するという、現場主導の流れを作っていきたいと思っています。このような動き方が、自分の仕事のやりがいとしても性に合っていると思っています。
周りからも「安定している職業を捨ててまで?」と聞かれますが、この地域も人口減少が進んで、このままだと昔からあった地域のコミュニティが維持できなくなる。実際に住んでいる集落で消防団が解散したことがにかほ全体の縮図だと感じ、今後若い人たちがこの地域に帰ってきたいと思うかな、と考えたときに危機感を覚えました。地域の魅力をもっと磨き上げて、人の動きを作っていかないといけない。経済が回らないと課題も解決の方向に向かないので、そこを回していくプレイヤーになろうと思ったことがきっかけです。
Q: 今のお仕事内容を教えて下さい!
主に「観光」と「資源循環(サーキュラーエコノミー)」の2つの軸で取り組んでいます。
観光では色々なアクティビティを体験する機会提供ができるように計画をしていて、今はe-バイクを使って海岸線や高原を走ったり、鳥海山への登山をしたりするツアーを考えています。
具体的には、5合目までe-バイクで行って、そこから登山。途中で山小屋に1泊して頂上まで目指すという内容です。1泊することで体力にゆとりも持てるし、鳥海山の星空や日の出も楽しめます。ツアー中は地元のおいしいお店を挟んだり、地元の人と交流したりして。
道の駅によってお土産買って終わりというのではなくて、どうしたら地域にお金が落ちるのか、地元の人には当たり前な鳥海山の魅力をどう他の地域の人に発信していくのか、どうしたら来てもらえるのかを考えながら、地元に溶け込んだ体験と地元の人との繋がりが生まれるようなツアーにできるよう計画中です。
資源循環では農家さんから出る規格外の野菜の取引をしています。主に玉ねぎ、キャベツ、長ネギ、ミニトマトを扱っています。野菜は生産したものの約3割が規格外で廃棄されてしまっているんですよ。そのような規格外のものを飲食店などに提供しています。
普段はスーパーに並ぶ野菜しか見えないので、規格外のものが存在することはなかなか知られていないんです。飲食店や地域の主婦さんに紹介すると、「全然それでいい!」と言ってもらえます。「これ捨てられちゃうの!?」って。
なので、まずは捨てられる食材があることを知ってもらう機会を増やしていこうと思っています。自分の販路が増えれば流通量も増えて、救える食材も増えます。生産者さん側で今まで0円だったものが少しでもお金に変わってお金とモノが循環する。そして生産者さんも家庭のお財布も喜ぶWin-Winな仕組みを作れるように取り組んでいます。
Q: やりがい、苦労は何ですか?
一人でやれるところは、どうしても限界があります。
しかし、地域の方たちとの横の連携ができるのは個人でやっているからこそで、楽しい部分です。現場に足を運ぶと、生の情報を聞くことができます。行政の頃にはできなかった部分を自分が担えることにやりがいを感じます。
Q: 今後やりたいことは?
新しい「人材」の雇用形態
今後は「人材」の課題にも取り組んでいきたいです。
今の企業と人材が1:1の雇用形態ではなくて、複数の企業で人材をシェアして色んな方面で関われる人を増やしていくことが必要だと考えています。人材不足をAIで解決というのもありますが、とりあえずは今いる人材で回して補っていく必要があると感じています。
水と同じで、野菜も人も1つのところに留まっているとよどんでしまう。いかに無駄なく循環させるかが大事で、そのためには地域でお互いが利他、共助の気持ちを持つことが大切になってきます。
田舎は人のつながりが濃い分、共助という考えが浸透しやすいと思うので、人材、資源のシェアであったり、みんながWinになるような仕組みが作りやすいと思うのでそこを引っ張っていきたいです。
Q: 読者へのメッセージ
「まず、けぇ!」
一回にかほに来てほしいです。今まで来てくれた人たちは、にかほ良いよね!って言ってくれる人が多いです。ネットの情報だけだと記憶にも残りにくいから来ないと分からない!だからこそ五感でにかほを楽しんでほしいですね!来てくれたら私がフルでご案内します!!
インタビューしてみた感想
鳥海山とその恵まれた豊富な水、海と暮らしの傍で自然のエネルギーが循環しているからこそ、美味しい季節の食にも恵まれた豊かな地域であること、そしてその循環を意識し地域をより良くしていくために活動している姿は、今後のにかほを引っ張っていくキーパーソンであると感じました。普段から私たちの活動をいつも手厚くサポートしてくださる学さん。そんな学さんのご活躍に期待しています!
執筆者:メディアラボインターン 松田穂花
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