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生成AIが幻滅期に。テクノロジーが幻滅期に入る理由

生成AIが幻滅期に。かゆいところに手が届かないChatGPT?


先日ガートナージャパンから「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年」が発表され、生成AIが過度な期待のピークに位置づけられ、これから幻滅期に入るであろうという予測が立てられました。

出典:ガートナージャパン

ハイプ・サイクルとは、ガートナーが作り出した言葉で、特定のテクノロジーが社会にどの程度適用しているかのフェイズを表しています。関心が高まりはじめる黎明期、世間の注目が集まる流行期を経て、世間からの期待に応えられずに関心が失われる幻滅期、テクノロジーがメリットをもたらしはじめる啓発期、そしてテクノロジーが主流となり投資が回収される生産性の安定期のフェイズに移ります。

この各フェーズにおいて、生成AIが過度な期待のピークであるという発表がされたのです。

これは、なんとなく肌感覚とも合致するところがあり、さかんにテレビでChatGPTがもてはやされていましたが、最近はあまりマスメディアに登場することがありません。
知人のエンジニアに聞いてみると、ふつうに嘘をつくから正規化など単純作業には使っているけど、その他は参考程度という話でした。
ChatGPTのプラグインを使っても生成AIの精度が悪いという話もあり、工夫したプロンプトを用いればまた話は変わるのかもしれませんが、現段階では割とかゆいところに手が届きづらいという感想が増えているようです。

なぜ新しいテクノロジーは、過度な期待からの幻滅期を経るのでしょうか。それは、テクノロジー自体と、ハードウェア、ソフトウェアそれぞれの問題に分かれるように思います。

インターネットの幻滅期は、回線速度とソフトウェアが要因


例えば、インターネットというテクノロジーが普及するまでの流れを見ると、1990年代後半からインターネットが一般に普及するようになり、IT企業への過剰な投資が集まりましたが、2000年にドットコムバブルと言われたバブルが崩壊して多くのIT企業が資金繰りに苦しむことになります。
ドットコムバブルの崩壊は、アメリカで生じた同様のバブル崩壊の影響も受けていますが、投資が実態よりも過剰に行われていた要因もあります。
インターネットというテクノロジーは、2000年に一度幻滅期を通過していたのです。このとき、テクノロジー、ハードウェア、ソフトウェアという3つにおいて、足りてなかったのはテクノロジーとソフトウェアの2点です。

2000年当時はインターネット通信はNTTがISDNという多少早い回線のサービスを提供しはじめたくらいで、まだダイヤルアップ接続が多い状態でした。インターネットの速度も遅く、料金も高かったのです。その後、2001年にYahoo! BBが格安ブロードバンドサービスを掲げて価格破壊を引き起こすことによって、一気に一般家庭にも安価で高速なインターネットが広がります。
この時点においては、インターネット(の早さとコスト)という、テクノロジー自体は不完全だったのです。
そして、ソフトウェアの点においても、まずインターネット回線速度が不完全である以上、今のような動画プラットフォームはこの時点では存在していませんし、インターネットサービスも企業の情報を提供するものが主で、今よりも個人サイトの存在が目立っていました。
Googleのドル箱事業であるリスティング広告が日本ではじまったのも、2002年です(アメリカでは2000年)。2000年当時は、検索サービスは儲かるという認識はなかったのです。
テクノロジーが未発達で高価だから利用者が少ないという鶏と卵の関係で、ソフトウェアのバリエーションが広がらないと、新しいテクノロジーは実用足りえない遊びの範疇にとどまります。
その後、回線スピードが上がり、価格が下がるとともに一般にも普及し、インターネットサービスを提供する企業やジャンルも増えて、実用化されていきました。

テクノロジーと、ソフトウェアのピースを揃えていたiPhone


次に訪れた大きなテクノロジーの波は、スマートフォンでした。iPhoneが発売されたのは2007年ですが、スマートフォンに関してはほとんど幻滅期を経ずに一気に拡大しています。それは、スマートフォンは日本の通信回線という完成された土壌に生まれたハードウェアとしてのテクノロジーだからではないでしょうか。
この時点ではまだ3Gであったため、現状のような動画コンテンツや据え置き型ゲーム顔負けのグラフィカルなゲームなどはありませんでしたが、ブラウザベースのゲームコンテンツであれば2010年代前半には遜色なく動くレベルになっていたと記憶しています。

速度が担保された日本の通信回線という土壌があり、そこに革新的なハードウェアのテクノロジーとして登場したのがiPhoneでした。残るピースはソフトウェアになりますが、Appleは日本でもiPhone3Gの発売とともに2008年にストアを立ち上げています。日本のimodeの成功を学んでいたため、ソフトウェアのプラットフォームを立ち上げるのも早かったのです。

生成AI普及に足りないピースは何か


ということで、テクノロジーが普及するためには、テクノロジー自体の進化(及びそれにより価格が下がる)、ハードウェア、ソフトウェアの普及という3軸が必要になってきます。

生成AIの普及において何が足りないのかといえば、おそらくテクノロジー自体の進化とソフトウェアの普及なのでしょう。
テクノロジー自体の進化についていえば、AIが人間の知能を超えるというシンギュラリティが2045年に来るというのが定説でしたが、加速度的に進化しているためもっと早まるであろうという予測もあります。

ChatGPTの変遷を見ると、初代のパラメータが1.1億、GPT-2が15億、GPT-3が1750億となり、GPT-4については非公表ながら5000億~1兆に達するのではないかという話があります。AIにまつわるテクノロジーは進化を続けているのですが、現在においては各社ともAIに多額の投資をしており、先日ChatGPTを提供するOpenAIでは1日最大70万ドルもの費用がかかっており(主にサーバー費用)、OpenAIのLLMを利用する法人は毎月多額の費用を支払っています。今後、費用削減が進むことが、さらなる普及の鍵となってくるでしょう。

また、ソフトウェア側については、ChatGPTで生成AIのプラグインが使えるようになったものの、精度が今ひとつという声が聞かれます。このプラグインに限らず、プラグインの挙動が今ひとつのものが散見されるという所感なので、今後ソフトウェア側もアップデートされていき、正解のソフトウェアの型のようなものが発明されるのではないでしょうか。

ちなみに、ハードウェアについては、現状は個人利用においてPCを主軸としてチャット型インターフェースですが、今後はこれを超えるインターフェースが出てくるか、もしくはあらゆるハードウェアにAIが組み込まれて、特定のハードウェアを用いるという形態ですらなくなるのかもしれません。

ちなみに、冒頭のガートナージャパンのパイプサイクルの図について、生成AIについては幻滅期にあるものの、人工知能についてはテクノロジーがメリットをもたらしはじめる啓発期に入っています。
医療領域において、AIと相性の良い画像診断が保険適用されていたり、広告代理店においてLLMを用いて広告素材を自動生成したり効果を予測するなど、本格的な導入が始まっているようです。

出典・参考URL

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02466/052600002/
https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20230817
https://digiful.irep.co.jp/blog/111641464440#:~:text=%E6%98%A8%E5%B9%B411%E6%9C%88%E3%81%AB%E5%85%AC%E9%96%8B,%E3%81%A8%E3%82%82%E8%A8%98%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82
https://www.businessinsider.jp/post-269008
医療AIとは? (aist.go.jp)

https://www.gartner.co.jp/ja/research/methodologies/gartner-hype-cycle
https://jp.reuters.com/article/openai-chatgpt-idJPKBN2YL1EE
https://www.japio.or.jp/00yearbook/files/2020book/20_5_06.pdf
https://www.businessinsider.jp/post-269008


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