良いマーケターと名医の共通点は、見立て力
名医は見立て力が高い
良い医者というものは、見立て力が非常に高いと言われます。見立て力とは、症状の背後にある原因を全体の文脈の中で理解して、適切な処置を施す能力を指します。例えば、患者がのどの痛みや鼻詰まりを訴えたとき、良い医者はこれらの症状をただ聞くだけでなく、その背後にある病気を見極めて適切な治療を行います。
一方で、見立て力が低い医者、いわゆるやぶ医者は、症状を表面的にしか捉えられず、総合感冒薬を処方するなどの対処療法に終始してしまうことが多いのです。
見立て力とは、全体最適化の力
「見立て力」をもう少し掘り下げると、それは「全体最適化」を行える能力と言い換えることができます。良い医者は、患者の複数の症状に目を配り、それぞれに比重をつけながら病気を診断しています。
これはまさに全体最適化のプロセスであり、局所的な症状にとらわれず、全体として最適な解決策を見出します。逆にやぶ医者は、一つの症状に過剰に焦点を当て、それが全てであるかのように扱ってしまうことで、局所最適の落とし穴に陥ってしまいます。
マーケターにとっての見立て力とは
この見立て力、つまり全体最適化能力は、マーケティングの世界においても重要です。良いマーケターは、様々な定量・定性データに目を配り、全体を俯瞰して問題の原因を見つけ出す能力を持っています。
例えば、売上が下降傾向にある場合、良いマーケターは単にその事実に焦点を当てるのではなく、顧客セグメントごとの売上の推移、購入数、顧客あたりの単価など複数のデータを総合的に分析します。
そうすることで、売上減少の背後にある真の原因を突き止めることができるのです。
仮に、購入数は変わらず、顧客あたり単価が下がっているという結果が得られた場合、良いマーケターはさらに周辺の事象と紐づけて仮説を導き出します。
例えば、売上現象が11月であった場合は、歳末セールを控えた買い控えなど、特定の市場動向が原因である可能性を見極めることができるのです。
分析・検証を繰り返すことで勘所が良くなる
このような分析・検証作業を何度も繰り返すことで、マーケターや医者たちはその分野における直感、いわゆる「勘所(かんどころ)」を養っていきます。最初はデータを隈なく分析し、多くの時間を費やして原因を見つけ出す作業が必要かもしれません。しかし、経験を積むにつれて、「これが原因ではないか」と直感できるポイントが見えてきます。これは、過去の経験から得た知識と洞察が蓄積され、必要な情報を素早くピックアップできるようになるからです。
例えば、ベテランの医者は多くの患者を診てきた経験から、特定の症状が現れた時に、それがどのような病気を示している可能性が高いかを素早く見極めることができます。同様に、経験豊富なマーケターも、売上の変動を見た瞬間に、市場のトレンドや顧客行動の変化など、その背後にある要因を即座に推測することが可能になります。
スピードが生むアドバンテージ
見立て力(全体最適化能力)が高まると、その分野における検証サイクルを素早く回すことができるようになります。これは、医療現場においてもマーケティングにおいても、大きなアドバンテージをもたらします。時間は常に限られているため、素早く正確な判断を下し、適切なアクションを取る能力は、競争が激しい環境においては特に重要です。
総じて、良いマーケターや名医が共通して持つ見立て力は、単に経験だけでなく、深い洞察と全体を俯瞰する視点を持っていることから生まれます。この能力は、様々な情報を統合し、正確な原因分析を行い、最適な解決策を導くことを可能にします。そして最終的には、この能力が強化されることで、個々のプロフェッショナルは自分の分野における達人へと成長していくのです。
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