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映画「海獣の子供」レビュー「ジブリの功罪、『君の名は』の亡霊」

映画「海獣の子供」をAmazonプライムにて鑑賞。2019年劇場公開。五十嵐大介氏の原作コミックを芦田愛菜、森崎ウィン、富司純子ら豪華声優陣によって大胆にアニメ映画化。原作未読の方はこちらも要チェック。

江ノ島をモチーフとした海沿いの街で暮らす少女・琉花は、ハンドボール部の仲間にもなじめず、どこか孤立した日々を過ごしていた。

そんなある夏の日、琉花は父親が勤める水族館を気まぐれに訪ね、「海」と名乗る奔放な少年に出逢う。思春期の悶々とする心と体を持て余している琉花は海に導かれるままに大海原の奥底でひそかに息づくある謎へとたどり着き、そして、海の兄・空と彼らを見守る研究者たちに巻き込まれるように壮大な使命を背負っていく……。

一言でいうと、じめっとした映画である。いや、「じとっとしている」といったほうが正確かもしれない。

思春期女子を主人公にしたアニメーションだというのに、青春特有のさわやかさというか、カラッとした感じがまるでないのだ。少女のグラフィックはそれなりにかわいらしく、絵柄には躍動感もあるというのに、青春っぽさが1ミリも伝わってこないのだ。

それはなぜか。こたえは簡単。とにかく、テーマがドロドロしているのである。

物語の中盤、琉花は空から大海原の異変の中核となる隕石を口移しで託され、その身に宿す。作中でも明かされているがそれは妊娠のメタファーであり、隕石は精子である。

いくら哲学的なテーマとはいえ、中学生の少女を堂々と孕ませる映画があるものか。それに、これが妊娠だとしたら琉花は行為そのものすら同意していないわけで、まぎれもなく強制妊娠である。

隕石というとてつもないものを押しつけておきながら、空は相変わらず涼しげな顔で「腹を割って取り出すといいよ」とほざく。これはまさに、同意なしに妊娠させておいて出産まではノータッチという、無責任な男そのものである。

アニミズムと結びついた母胎信仰、処女性の礼賛、登場人物のキザなセリフ……私にとってはそのすべてが嘘くさく、ただひたすらに気持ち悪いのである。


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