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【読書】『英仏百年戦争(佐藤賢一 著)』〜歴史は史実に基づいた物語として楽しむ。

「英仏百年戦争」と聞いて、単純にイギリスとフランスの戦争か、と想像をしました。
もちろん、その通りといえばその通りの部分もあるのですが、今現在の国家としてのイギリスとフランスの戦争のように考えると、話はなかなか理解をすることは困難になります。
どうしても戦争というと、20世紀以降の国家間の戦争だと想像をしてしまいます。

「英仏百年戦争」が起こった14世紀から15世紀にかけての頃は、国という概念が、現在のようにはっきりとしていませんでした。
ただ、フランス国王やイングランド国王が存在していたのは確かです。
簡単に言ってしまうと「英仏百年戦争」は、イングランド国王が、フランス国王という王位を欲したことによる、王位継承権争いなのです。

そして、イングランド国王といえども、元々はフランスの領土内にあるノルマンディという地方を統治していたフランス人なのです。
いや、ノルマンディ自体も、フランスがノルマン人(ヴァイキング)に与えた土地なので、歴史を遡れば遡るほど話はややこしくなります。

まだ、フランスだとかイングランドとか言っているうちは、話はわかりますが、アキテーヌだとかブルターニュ、ブールゴーニュ、フランドルとかいうフランスの地方名が出てくると、私にはもうついていけなくなります。

そして国王の名前が、フランスに於いてはルイとシャルル、フィリップしかいません。
イングランド王については、ヘンリー、リチャード、エドワードです。
それぞれ名前の後に2世と3世・・・というように数字になっています。
2、3日この本を読まないでいると、「えっ、何あったけ?」となってしまい、両王家の家系図を見ながら、復習から始めないといけないようになります。

「英仏百年戦争」の英雄といえば、ジャンヌ・ダルクです。
確かに、ジャンヌ・ダルクの活躍は奇跡的なもので、戦争の行方を大きく左右したようですが、歴史上はあまり重要視されていなかったようです。
ジャンヌ・ダルクを有名にしたのは、あのナポレオン・ボナパルトです。
ナポレオン・ボナパルトが皇帝に就くために、宣伝に使ったというのです。

ナポレオンといえば、ジャック=ルイ・ダヴィッドの絵画が有名ですが、あれも宣伝に使ったと言われています。
ナポレオンは、イメージ戦略がとても上手だったのです。

そして「百年戦争」という呼ばれ方をするようになったのも、20世紀に入ってからだそうです。
シェイクスピアが題材にしているのは有名ですが、「百年戦争」という言葉は使っていないようです。
確かに「百年戦争」というのは、後からわかりやすくするように、意図的に歴史を区切ったような気がします。


こうして考えると、歴史というのは史実をもとにして、後世の人が作り出した物語でしかないとうことです。

本に書いてあることは、どこまでが事実なんでしょうか。
今現在、誰もその時代に生きている人はいなかったのだから、どこかに誰かの想像や作り話が入っていても、それが事実であるかどうか、確認する術は限られています。
また、事実であったとしても、小さな出来事が誇張されていたり、大きな出来事が矮小化されていることは、沢山あると思うにです。

歴史を学ぶということは、半分くらいは、物語として楽しむくらいがいいのかもしれません。

知識を得ると、どうしても人に自慢をしたくなるものですが、歴史に詳しいからと言って、それほど自慢できるものではありません。
あるひとつの物語を読んだことがあるかないかの違いだけです。
「英仏百年戦争」のことを知っていても知らなくても、日本で暮らしていて何も困ることはありません。
現に、私は何も困らずに生きてきました。

しかし、知らなかったことを知ることは楽しいことです。
歴史を知るからこそ、小説や映画を楽しく見ることができます。
そして美術館へ行くことや、旅行の楽しみ方も幅が広がります。
上手くすれば、人脈を広げることも可能です。
歴史だけでなく、知識を身につけることは、人生を豊かにします。

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