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#0 総論【医学部学士編入/社会人/複数正規合格】文系社会人の医学部編入試験体験談

はじめに

 はじめまして。ご覧いただきありがとうございます。2022年度4月より国立大医学部医学科2年次に編入学予定の「くま太郎」と申します。
医学部学士編入試験を受験した経験が少しでも今後学士編入を検討されている方々のお役に立てればと思い、筆をとりました。

 医学部学士編入試験は、なかなか情報が手に入りにくい試験であると思います。
一方で、情報の有無が試験結果に少なからず影響を与えるような情報戦の要素も多分に含む試験だと思います。実際、私も限られた情報を得るために、それなりのコスト(時間とお金)を支払いましたが、コストに見合った十分な情報を得られなかった苦い経験もしており、情報収集の難しさを身をもって感じております。

 私個人の思いとしましては、なるべく入試における情報格差を埋めて、フェアな環境で公正な選抜が実施され、その中で志高い方々が医学部編入への権利を掴み取っていかれることを望んでおります。

 また、文系/仕事との両立/生物未履修という背景をもち、なかなか厳しい環境での受験となりましたので、同じような状況で奮闘していらっしゃる方のお気持ちも大変よく分かります。

 そうした背景もあり、誠に僭越ではございますが、今後学士編入試験を志す方に向けて私個人の体験も踏まえて微力ながら情報提供をさせていただこうと考えた次第です。
私は、運にも恵まれて合格を頂けただけではございますが、同じような境遇で奮闘なさっている方々にとって私自身の体験が少しでも励みになれば幸いでございます。

 これから記すものは、一般論ではなく、一つの個別論としてお考えいただけばと存じます。

 また、これから掲載予定の記事を執筆するにあたりまして、頼もしい受験仲間に編入試験情報提供のご協力をいただきました。この場を借りましてお礼を申し上げます。

【医学部学士編入体験記】(※執筆予定)
#0 総論
#1 筆記試験対策
#2 面接試験対策
#3 鹿児島大学医学部編入試験体験記
#4 大分大学医学部編入試験体験記
#5 長崎大学医学部編入試験体験記

プロフィール

[経歴]
 高校卒業後、現役で国立大文系学部に進学しました。大学卒業後は、一般企業に就職し、仕事と並行しながら約1年の勉強期間を経て、3校の医学部編入試験を受験し、2校から正規合格をいただくことができました。

[受験勉強スタート時の学力]
基礎学力
 高校時代現役時のセンター試験得点率は87%です。
ただ、現役時の受験から10年近く経っていたため、当時の知識はほとんど抜けており、編入試験にどれだけ寄与したかは正直よくわかりません。
英語
 TOEIC800点、TOEFL47(受験勉強を始めて70点まで上がりました。)
この数字だけ見ると、編入試験合格者の平均からはだいぶ下回っていると思います。
ただ、今回の編入試験を経験し、こうした英語資格試験だけでは測れない英語力もあると思いました。(詳細は後述いたします。)
生物/物理/化学
 文系出身であり、現役時センター試験では地学を使用していたため、生物・物理・化学はいずれも未履修の状態でした。

医学部編入試験は、受験する年齢層も幅広ければ、受験者のバックグラウンドも多岐にわたると思います。受験勉強スタート時の学力や背景によっても必要な勉強が変わってくると思いますので、巷に溢れる勉強のプロセスをすべて鵜呑みにして実行されるのではなく、皆様ご自身の状況に合わせて戦略を練ることが大事であると思います。

勉強時間や模試成績

今回の医学部編入試験に要した勉強時間は、
週20時間×4週×12ヶ月=約1000時間程度
です。
 10時〜22時まで仕事をしていたため、帰宅時間が23時ごろとなり、仕事がある日は多くて30分〜3時間しかできず、休日に6時間〜8時間程度まとめて勉強をしておりました。
 とはいえ、仕事が忙しく、ただ仕事をして寝るだけのなかなか勉強が手につかない時期、一方で焦りから無理をして朝一でカフェの開店と同時に入店して始業前に勉強をした時期など、勉強時間にも多少の波がありました。

 模試を受験し、英語はTOEFLのための勉強しかやっていなくとも点数がとれていた一方で、生命科学の学習が追いついていないことが判明したので、ほぼ全ての勉強時間を生命科学に割くことにしました。

 医学部編入試験受験者層の中で、私はTOEICやTOEFLの点数が高い方ではないですが、今回の編入試験を通して英語では苦労を感じず、むしろ英語がアドバンテージになったと感じている背景には、大学受験時に培った英文を精読する力+問題の意図を汲み取る国語力+要点を掴んだ記述力によるものと分析しております。

筆記試験対策で詳しく記述予定ですが、英語については、国立2次試験レベルの英語に対応する力があれば、医学英単語などを知らなくとも十分に対応できるというのが、私見でございます。

受験校/結果

※個人の特定にもつながるため、詳細な受験校と結果につきましては2022年4月以降に公表させていただく予定です。何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。

受験したのは全3校、筆記試験通過3校、正規合格2校でございました。

受験戦略[志望校選択]

 合格を勝ち取る上で、受験校の選定は非常に重要になります。医学部編入試験を受験するにあたって、真っ先に考える必要があることと言えるかもしれません。
 そもそも医学部学士編入試験は全ての大学で実施しているわけではありませんので、特定の大学のみを志望されていらっしゃる方は、ご自身の志望校が編入試験を実施していない場合、一般入試を選択せざるを得ないと思います。

 私自身は、文系出身/フルタイムの仕事(月残業80時間程度)と両立という背景がありましたので、捻出できる勉強時間も限られていたことからも2科目校を軸に大学を選定しました。結果的には受験しませんでしたが、文系出身者でも合格実績があり、大学受験レベルの物化で対応できる4科目型の学校も視野には入れておりました。

受験戦略[予備校利用]

 医学部学士編入試験を検討する上で、圧倒的な合格実績を誇る「河合塾KALS」を利用するかどうかは非常に悩むところだと思います。

 「入学者の約半数がKALS受講生」なんて謳い文句を見れば、「受講しないといけないかな」と不安になるのも当然だと思います。一方で、コースで受講すると約100万前後の費用がのしかかるので、誰もがすぐに利用できるものでもないと思います。

 実際、私も何度か説明会に足を運んで、テキストを直接手に取ったり、合格者の人に話を聞いたり、某フリマアプリでテキストを購入してみたり、なんとか受講せずとも合格できる方法はないか探っていました・・・。

 予備校を利用すべきかについては、人による、というのが結論だと思います。

 実際、独学で勉強なさって合格されている方にも何人か出会いました。ただ、独学の方もKALSのテキストは何かしらのツテで持っていらっしゃる方が多く、また薬学部出身など生命科学の素養が備わっている方も多い印象です。
 文系出身や生命科学が未履修の方は、受講に関わらず少なくともテキスト等の入手だけでもおすすめいたします。
 結局、私は、予備校利用をする決断をいたしました。その理由は以下の通りです。

経験豊富な講師による解説
→KALSテキストは演習問題形式になっていて、テキストだけを持っていても生物未履修の人にとっては、問題と簡易的な解説だけでは行間が埋まらず、十分な理解に至るまで時間がかかります。

学習範囲選定のアウトソーシング
→「生命科学」と一口に言っても範囲が広すぎて、志望校の試験に必要な学習範囲を絞り込むことが難しいです。

勉強の最適化
→仕事が忙しく、闇雲に勉強に時間を捻出できず、試験に関する情報を得て、限られた時間で少しでも効率的な勉強をしたいという思いがありました。

情報格差による不利益の排除
→過去の受験経験から合否を分けるポイントは、いかに受験生の大半が得点できる問題を落とさないかが大事であると考えていました。予備校利用で過去問や最新の試験情報などを集め、大半の受験生が知り得ている情報を入手し、情報がないことで不利になることは避けたいと考えておりました。

 ただし、利用するにあたって、少しでも費用を減らしたいと考えたため、受講したものは生命科学の完成シリーズと実戦シリーズを通信での単科受講+オプション講座にいたしました。
 もちろん時間やお金に余裕のある方は、コース受講の方が安心だと思います。

 私は単科受講で特に困ることはありませんでした。というのも時間的制約が大きく、結果的に生命科学ですら全部を学習し切ることができなかったため、医学英語、小論文、物理化学などには手が回る余裕はなかったと思うからです。

 また、あくまで2021年実施の入試に限った話ですが、2科目校は基礎的な生命科学の知識+ベーシックな英語力が合否を分ける形となり、生命科学の完成シリーズの知識だけで十分に筆記通過可能であったことも理由としてございます。

 ちなみに、私は通信受講+カウセリングなどもほぼ全く利用しなかった+過去問を解く時間的余裕もなかったため、他のKALS受講生と比べても、予備校を使い倒したとは言えないところがございます。

 それでも私は先程記載した理由からもKALSを受講してよかったと思っております。文系出身/仕事と両立/勉強期間1年、という背景で、ありがたいことに複数合格をいただけたのは予備校利用し、しかるべき方向性で学習を進められたことが大きな要因だと考えております。

受験戦略[仕事との両立]

 社会人で医学部編入試験を検討されている方は、仕事を続けながら受験に挑戦するか大変悩まれると思います。実際、合格体験記などを見ると、かなりの方が退職もしくは勉強と両立しやすい仕事に移行されていらっしゃいます。
 実際、環境が許すのであれば、仕事を減らし勉強に集中する方と仕事を続けながらの方とでは、確保できる勉強時間に何倍もの差が生まれるのは紛れもない事実です。
 したがって、精神的・肉体的負担も考えると、勉強だけに集中できる環境にあれば、私はそちらを選択することをおすすめいたします。
 とはいえ、全員が仕事を減らして勉強に集中できる環境にあるとは言えず、仕事を続けながらの受験を選択される方もいらっしゃると思います。私もその1人でした。

私が仕事と両立することを選んだ理由は以下の通りです。

小規模企業に勤めていて、会社で責任ある立場にあった。
→気軽に有給も取れないような環境に身を置いております。今回の編入試験も隠れて受験なんていうのは絶対に無理な環境にあったので、受験を決意した1年ほど前に、上司・役員にはきちんとお伝えしました。当然ものすごく勇気と覚悟がいる行動であり、今でも上司にメールを送る際に手が震えてしまい、なかなかメールの送信できなかったことを鮮明に覚えております・・・
 結果的に、上司にはものすごくショックを与えてしまい、当然会社にも迷惑をかけてしまうことは必至でしたので、それを取り返すべく、なるべく受験に関わる休みも必要最低限にとどめ、少しでも会社の仲間に貢献できるように仕事にもより一層邁進いたしました。

人に直接関わる仕事をしていて、その責任を放棄したくなかった。
→ある一種、人の人生にも関わる仕事をしており、自分の医学部挑戦のために、すでに関わりある方々に対しての責任を放棄しては、患者に尽くす医師を目指すにあたって本末転倒であると考えました。単純にやっている仕事が好きであることも大きかったです。

受験や進学に関する一切の費用を確保する必要があった。
→予備校代、受験費用、生活費、入学後の学費など一切の費用を自分自身で捻出すると決めていたため、仕事をして十分な収入を確保することが必要でした。
また、費用確保のために、当時住んでいた賃貸よりも3万円ほど安い物件に引っ越し、駅にも近い場所を選んで、時間とお金をなるべく節約しました。

 私のやっていた仕事は月残業時間も80時間ほど、また祝祭日の休みはなかったため、肉体的・精神的な負担はかなり大きく、ただ漫然と暮らすと自身の身を滅ぼすと考えていたため、精神衛生を保って両立するために自分にルールを設けていました。
 以下の通りです。

勉強は勉強、仕事は仕事。メリハリをつけてどちらも手を抜かない。
→勉強したいという気持ちを優先して仕事で手を抜くと、結局、自己嫌悪に陥ったり、どちらも中途半端になる未来が見えていたので、なるべく仕事も一生懸命に取り組みました。

職場や家族など周りの人に弱音を吐かない。
→医学部受験を決めたのは自分自身であったので、とにかく前向きに、他の方に余計な心配をかけないことを心がけました。ただ、実際のところ、私もそんなに強くなく、何度も心が折れそうになり、勉強SNS上でいつも仲間に温かい言葉で励ましていただきながら、なんとか受験を乗り切ることができました。仲間の存在は私の受験に非常に大きかったです。感謝してもしきれません。

受験のための時間は惜しんでも、お金はなるべく惜しまない。
気になった参考書や書籍はためらわず購入し、また有料noteなども積極的に購入し、情報収集をしました。仕事をしている分、お金は使うところにはしっかり使うようにしていました。また、時短を優先するために、食事は自炊せず、外食や買ってすぐに食べられるものを優先して購入していました。食事は、唯一の娯楽といってもよかったので、たまに美味しいものを1人で食べてリフレッシュしておりました。

 ちなみに、仕事を続けるメリットはお金だけではないと編入試験を通して感じました。
 実際、合格をいただけた2校では、面接で仕事に関する質問を深掘りされましたが、現職に精一杯向き合っている分、自信を持って仕事に関する受け答えをすることができ、仕事に対して誠実に向き合う姿を少なからず評価していただけたと感じております。
 大学側は編入生に対して一般生を引っ張るリーダーシップ、課題解決能力、協調性などを求めていらっしゃいます。
 今お仕事をなさっている皆様のご経験は必ず面接や入学後の生活にも活きてくると思いますので、大変だとは思いますが、心から応援しております。

最後に

 長い文章になってしまいましたが、ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
 くどいようで恐縮ですが、あくまでこちらの記事の内容は一つの個別論にすぎません。皆様の置かれた状況はそれぞれ異なると思いますので、必要な情報を取捨選択してお役立ていただけますと幸いでございます。

 医学部学士編入試験は、情報がなかなか出回らない試験であるため、情報収集に苦労されている方も多くいらっしゃると思います。また、そうした情報を手に入れようとしてもそれなりのコストを強いられ、ただでさえ受験のために色々な部分で切り詰めている受験生に負担がかかってしまうことを心苦しく思っておりました。

 個人的な思いとしましては、なるべく情報格差を埋めて、フェアな環境で公正な選抜が実施され、その中で志高い方々が医学部編入への権利を勝ち取っていかれることを望んでおります。

 そして、医学部編入試験受験生は、仕事、家庭、子育て、研究、学業などあらゆることと並行しながら、それぞれ何かを犠牲にしながら目標のために努力なさっていることと思います。皆様の努力が結果として結びつきますことを心より祈念しております。

 今後も無料で情報提供を行わせていただきますが、noteには「サポート」という金銭的支援の機能があるようですので、もしこちらをご覧いただいた方の中で、「役立った」「応援したい」と思ってくださる方がいらっしゃいましたら、サポート機能を活用してご支援いただけますと大変嬉しく思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

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