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#3 鹿児島大学医学部学士編入試験:体験記[1次試験・2次試験]【医学部学士編入/社会人/複数正規合格】

はじめに

はじめまして。ご覧いただきありがとうございます。2022年度4月より国立大医学部医学科2年次に編入学予定の「くま太郎」と申します。
 医学部学士編入試験を受験した経験が、少しでも今後学士編入を検討されている方々のお役に立てればと思い、記憶がまだ残っているうちに、この度のnote執筆に至りました。

 私は、文系/仕事との両立/生物未履修という背景の中、1年の勉強期間で運にも恵まれて合格をいただくことができました。
 一方でなかなか厳しい状況からのスタートであったため、それなりに勉強には悪戦苦闘をいたしました。そうした背景もあり、誠に僭越ではございますが、今後学士編入試験を志す方に向けて私個人の体験も踏まえて微力ながら情報提供をさせていただこうと考えた次第です。
  同じような境遇で奮闘なさっている方々にとって、私自身の体験が少しでもお役に立つことがあれば幸いでございます。

 本記事は体験談の第四弾の記事となります。

 R4年度鹿児島大学医学部医学科2年次編入学試験を受けた記録をなるべく詳細に残します。記憶を頼りにしている部分もございますので、一部不正確な部分もあるかと存じますが、ご了承いただけますと幸いです。
 また、鹿児島大学は例年、ホームページに過去問がアップロードされ閲覧可能ですので、2022年度試験がアップロードされましたら、そちらを直接ご参照なさるといいかと思います。
 医学部学士編入試験は、なかなか情報が手に入りにくい入試であるので、ここに記す情報が少しでも今後受験をなさる方々のご参考になれば幸いでございます。

【医学部学士編入体験記】(※執筆予定)
#0 総論
#1 筆記試験対策
#2 面接試験対策
#3 鹿児島大学医学部編入試験体験記
#4 大分大学医学部編入試験体験記
#5 長崎大学医学部編入試験体験記

1次試験(筆記試験)

 筆記試験となります。募集要項には、「「学力試験Ⅰ・Ⅱ」により、30名程度を第1次試験合格者として選考します。」とあります。

試験科目は、
学力試験Ⅰ:英語の基礎学力と国語の表現力をみる問題:90分、100点満点
学力試験Ⅱ:理科の基礎学力をみるために、理科(生物学を中心に、関連分野を含む。)の内容から出題:90分、100点満点
 R4年度入試では、この1次試験で232名→31名に絞られました。

 下記、筆記試験の詳細でございます。

[学力試験Ⅰ]

○第1問《英文を1つ読んで、各設問に答える》
(出典:Colony-specific dialects of naked mole-rats, Science. 2021; 371:461-462.)

問題1:該当語句を本文中から探し出す問い
問題2:日本語で100字以内で説明する問い
問題3:日本語で200字以内で説明する問い
問題4:日本語で30字以内×2つを説明する問い
※文章の後に、単語ノートと題して、語彙説明があります。
令和4年度鹿児島大学医学部医学科第2年次前期学士編入学試験
○第2問《英文を1つ読んで、各設問に答える》
(出典:Study homes in on ‘exceptional responders’ to cancer drugs, Science. 2020;370: 1020-1021.)

問題1:日本語で50字以内で説明する問い
問題2:日本語で110字以内で説明する問い
問題3:日本語で120字以内で説明する問い
※文章の後に、単語ノートと題して、語彙説明があります。
令和4年度鹿児島大学医学部医学科第2年次前期学士編入学試験
○第3問《英文を1つ読んで、各設問に答える》
(出典:Optimizing age-specific vaccination: Vaccination strategies are not one-size-fits-all, Science. 2021; 371:890-891)

問題1:日本語で80字以内で説明する問い
問題2:日本語で150字以内で説明する問い
問題3:日本語で、2つの内容を挙げて説明する問い
問題4:日本語で200字以内で説明する問い
問題5:問題文に即して、本文中にあるグラフからAとBのいずれかを選択する問題
※文章の後に、単語ノートと題して、語彙説明があります。
令和4年度鹿児島大学医学部医学科第2年次前期学士編入学試験

[学力試験Ⅱ]

○第1問《培養細胞に関する問題》
リード文あり。血球計算盤の図と血球計算盤を光学顕微鏡で観察した図あり。

問題1:表を参考にした計算問題。「継代に必要な細胞混濁液の量を計算しなさい」
問題2:細胞A(増殖が止まる)とB(増殖し続ける)の2種類の実験結果を考察し、性質について推察し説明せよ。
問題3:細胞Aを細胞Bのような性質を持つ細胞に変化させる方法を100字以内で答えなさい。
令和4年度鹿児島大学医学部医学科第2年次前期学士編入学試験
○第2問《COVID-19の検査に関する問題》
リード文あり。検査に関する表あり。

問題1:鼻咽頭拭い液での感度が95%、特異度が99%。唾液拭い液での感度が90%、特異度が90%と仮定する。有症状受診者200名中、100名が感染者である場合、各々の検査で陽性であった受診者が実際に感染者である確率(パーセント表記)で述べなさい。
問題2:鼻咽頭拭い液での検査を鹿児島県及び東京都全体で行うと仮定する。検査陽性であった場合に実際に感染者である確率(パーセント表記)を各々の自治体ごとに述べよ。
※条件設定あり。
問題3:検査法の一つである核酸検出法は、ウイルスに特異的なRNA配列をRT-PCR法などで増幅して検出する方法である。感度は高い上に、増幅に必要なサイクル数(Ct値)をもとに、検体中に存在するウイルス遺伝子数を推定することができる。低いCt値で陽性になる場合はウイルス遺伝子数が多く、Ct値が高い場合にはウイルス遺伝子数が低い。低いCt値で陽性になる場合はウイルス遺伝子数が多く、Ct値が高い場合にはウイルス遺伝子数が低い。ある研究でのCt値とウイルス検出データを参照し、ウイルス陽性と判断するCt値をどの値に設置するべきか。根拠とともに述べなさい。
※データが記載された表あり。
令和4年度鹿児島大学医学部医学科第2年次前期学士編入学試験
○第3問《血管系に関する問題》
リード文あり。脊椎動物の血管系の模式図あり。

問題1:動脈の平均血圧は約100mmHgで、毛細血管入口では約30mmHg、毛細血管出口では約20mmHgである。この毛細血管の血圧値の意義について、「圧差」と「血漿タンパク質」の用語を用いて100字以内で説明しなさい。
問題2:毛細血管の血流速度は動脈のそれの約1/1000である。その理由を100字以内で説明しなさい。
問題3:手掌や足底の皮膚の毛細血管では、細動脈と静脈を直接つなぐ動静脈吻合が発達している。その意義について100字以内で説明しなさい。
問題4:細動脈では、血管平滑筋が発達し、交感神経の支配を受けている。交感神経末端からは神経伝達物質[X]が分泌される。この[X]の代表的な受容体にはα1とβ2があり、多くの部位の細動脈の平滑筋にはα1受容体が分布しているが、骨格筋ではβ2受容体が分布している。その意義について100字以内で説明しなさい。また、[X]は何か答えなさい。
問題5:右心室の発生圧は左心室の1/5程度である。その理由について100字以内で説明しなさい。
令和4年度鹿児島大学医学部医学科第2年次前期学士編入学試験
○第4問《細胞分裂に関する問題》
リード文あり。

問題1:「非対称分裂」の機構を100字以内で説明しなさい。
問題2:「誘導」の機構を100字以内で説明しなさい。
問題3:二層性胚盤から三胚葉はどのように形成されるか150字以内で説明しなさい。
問題4:内部細胞塊の細胞が異常分裂などによって細胞死に至った場合、その後の発生を正常に進めるために死細胞が適切に除去される必要がある。どのような死細胞除去機構があると思われるか150字以内で推論しなさい。
令和4年度鹿児島大学医学部医学科第2年次前期学士編入学試験

[対策・準備]

[英語]
 上記の問題からもお分かりいただけると思いますが、時間に対して相当量の読解と記述が求められます。筆者も本番では2つほど空欄で提出した覚えがあります。
日頃からNature、Science、NEJMといった英語論文に読み慣れておく、また短い時間で読みやすい日本語でまとめられるようにしておく、などが有効な対策であるかもしれません。
 一方で、語彙については、文章末に難しい単語の日本語訳が与えられているので、基本的な語彙をおさえていれば問題ないかと思います。

[理科]
 理科については、過去、生命科学の問題に加えて物理化学の問題も出題されていました。
 しかし、上記の通り、R4年度入試については物理化学の出題はありませんでした。
来年度以降、どういった傾向になるかは読めず、志望度の高い受験生はホームページに掲載のある過去問を参照して、出題範囲となりそうな部分については学習するほうが安心であると思います。
 ただし、筆記試験を突破することだけを目的とするのであれば、必ずしもそこまで手を伸ばさなくとも、とれる問題をしっかり得点していけば十分であるのかもしれません。

[その他]
・試験時間について
→英語、理科ともに時間がかなり厳しい試験でした。得点できる問題を取捨選択して、確実に点を積み重ねていく戦略が必要となりそうです。

・キャンパスへのアクセスについて
→鹿児島中央駅からキャンパス最寄りの宇宿駅までは電車の本数が限られているため、時間は要注意です。また、宇宿駅からキャンパスまでも結構な距離があります。私は徒歩で参りましたが、タクシーで直接向かってる方も多かったように思います。ご友人がいらっしゃる方はタクシー乗り合わせるのも手かもしれません。

・服装について
→私は気合いを入れるために筆記試験もスーツで行きましたが、かなり暑かったので(笑)、リラックスできる服装がいいと思います。また、試験の時期は暑い時期だと思いますが、教室内は冷房が直に当たる席もあるので、温度調節がしやすい服装が好ましいと思います。

[成績開示結果]

※こちらは、今後の申請になるので、判明したら記載いたします。
筆者の所感としては、合わせて50%にも満たないと思います。

2次試験(個人面接)

 個人面接(20分)となります。
この試験によって、最終合格者10名が決まります。
R4年度入試では、1次通過者の31名が午前組と午後組の2つに分けられて面接が行われました。
受験者は、ざっとみる限り20代〜30代の方で占められていて、男女比は2:1ほどでした。

なお、個別面接は100点の配点があり、1次試験の200点と合計し、計300点満点で合否が判定されます。過去の合格者の方々のお話を伺っていても、面接で大逆転ということも少なくないようです。したがって、鹿児島大学は2次試験にも重きが置かれている大学のうちの1つといっていいでしょう。(総合点が同点の場合は、面接の得点が高い者が上位になるそうです。)

 面接は、1つの教室に全員が集められ、その教室から2名ずつ順に呼ばれて面接を行います。待っている間は、スマートフォン等の電子機器は電源を切ってカバンに入れることになるので、本や紙の資料などをご準備なさっておくことをおすすめします。
何も持っていかないと、ひたすら長時間待ちぼうけをくらう恐れがあります。

 面接室は2つ準備されています。
前の人が面接中であるタイミングで面接室前に案内され、教室前の椅子に座って待つ形となります。試験官の合図があって、教室に入る形となります。
なお、荷物は教室内には持ち込みませんでした。

 面接官は4名で、試験官のお手元には、出願書類(履歴書)や筆記試験の結果もあると考えられます。
なお、鹿児島大学は事前に志望動機書の提出がありません。したがって、20分間の面接の時間内で全ての思いの丈を伝える必要があります。

主な質問内容は以下の通りです。

□鹿児島には来たことがあるか。
□医師志望理由
□なぜ鹿児島大学を志望するのか。
□高校生時代に、どうして出身大学を志望したのか。
□卒業論文の内容について説明してください。
□職場の人には編入のことは伝えているのか。また、その反応は。
□入学後は、仕事はどうするのか。
□〜業界(現職)から医療にどう繋げていきたいのか。(こちらの質問を3回別々の人から聞かれました)
□看護師の方と意見が合わなかったとき、どうやって対応するか。
□なるべく相手の気持ちを尊重しながら伝えるとのことだが、明らかに相手が誤っている場合はどう対応するのか。
□文系なのに、医学の勉強についていけるのか。
□最近、興味ある生命科学の内容について30秒で説明しなさい。

 質問内容については、個人によった部分も多くあったので、その場の状況に応じて試験官に裁量が任されているものと推察されます。

 面接の雰囲気についてですが、筆者は全3校の面接を受けましたが、鹿児島大学が1番圧迫気味の面接でございました。周りの受験者や過去の先輩方にお話を伺っても同様の感想でしたので、受験なさる方はある程度そういうものだと割り切って心の準備をなさることをおすすめいたします。
 筆者は心の準備と挫けずに元気に対応する、という当たり前のことが実践できませんでした。面接直後は自分の不甲斐なさに対してあまりのショックに何もする気が起きず、面接終了後の待合室でただただうなだれておりました。

その他の注意事項としては、午前組になると、面接終了後も午後組の人が完全に入室するまで電子機器を利用したり帰ることもできず、ただ待合室で待つことになります。(情報共有されることを防ぐため)
したがって、本を持ってくるをおすすめいたします。

[対策・準備]

 一般的な面接で聞かれる内容については、事前に受け答えを準備しておくといいと思います。また、鹿児島大学の過去の面接での質問内容についての情報を持っていらっしゃる方は各質問に対して自分なりの答えを考えておくといいと思います。

 筆者は、想定質問とそれに対する応答をankiというアプリに入れて、質問をランダムに表示させて、何度も声に出して練習しました。
 筆者の失敗談をお伝えしておきますと、想定問答を完璧に覚えようとして、徹夜して面接に臨むという愚行をおかしました。そもそも完璧にしたところで、当日想定外の質問に柔軟に対応できないということがあります。
 また、徹夜ですと当然頭も回らない+顔色も良くないで二重苦ですので、これをご覧になっている方はそんなことなさらないと思いますが、しっかりと睡眠をとって面接に臨んでください。 

 個人的には、この経験も踏まえ、想定問答も一語一句覚えるのではなく、ざっくりとこんなことを話そうかなとキーワードぐらいをおさえていた方が自然な形で話しやすいと感じました。

筆者が事前に回答を用意した想定質問は以下の通りです。

□自己紹介をお願いします。
□鹿児島にはどうやって来ましたか。
□鹿児島に来たのは何回目ですか。
□将来、鹿児島に残るつもりはありますか。
□地元に戻って地域貢献しようとは思わないのですか。
□医学部志望理由/なぜ医学部編入を考えたのですか。
□鹿児島大学を志望した理由を教えてください。
□併願校について教えてください。
□簡単に自己アピールとこれまでの経験をどう医学に活かすか教えてください。
□卒業論文の内容を説明してください。
□なぜ現在の仕事を選んだのですか。
□最もアピールできる仕事はなんですか。
□仕事のやりがいはなんですか。
□大学時代、勉強以外に頑張ったことを教えてください。
□いつから編入を考えましたか。
□勉強は大変でしたか。
□どんな医師になりたいですか。
□臨床と研究はどちらに進みたいですか。
□希望診療科で問題になっていることを知っていますか。
□鹿児島の医療問題について知っていますか。
□生命科学で最も興味のある分野はなんですか。
□医療に今求められていることはなんだと思いますか。
□チームの中で一人が失敗した時どう対処しますか。
□チーム医療内でどのような役割を担うつもりですか。
□複数合格したらどうしますか。
□今年不合格ならどうしますか。
□年齢が高いと記憶力も低下するが、勉強についていく自信はありますか。
□一般生よりも勉強が遅れていることに対してどう対策しますか。
□学費面は大丈夫ですか。
□一般生とどう接しますか。どうリーダーシップを発揮しますか。

[その他、試験の感想など]

・面接試験の顔ぶれ
→皆様スマートな感じで、どの方も優秀そうだなと強く思った覚えがございます。
また前半戦ということもあり、鹿児島の筆記試験を通過している方は総じて筆記力があるのか、琉球、富山、大分など他の大学の筆記試験も通過している方が多かったです。

・透明性の高い大学
→編入を行なっている大学の中で、過去問をホームページに掲載し、配点も公表し、得点開示も行っているという大学は多くないと思います。その点でも鹿児島大学は受験生に対してオープンで良心的な大学であるといえると思います。

受験に際してのおまけ情報

・東京からも九州内からもアクセスしやすいです。
→格安航空会社もあり、東京からも1万円以内で2時間かからず到着できます。また、新幹線もあり、九州内からのアクセスも比較的便利です。

・鹿児島中央駅は、かなり盛えています。
→飲食店やホテルも多く、宿探しやご飯屋探しには苦労しません。スタバ等のカフェもあり、前日の勉強場所も見つかると思います。

最後に

 医学部学士編入試験は、情報がなかなか出回らない試験であるため、情報収集に苦労されている方も多くいらっしゃると思います。また、そうした情報を手に入れようとしてもそれなりのコストを強いられ、ただでさえ受験のために色々な部分で切り詰めている受験生に負担がかかってしまうことを心苦しく思っておりました。

 個人的な思いとしましては、なるべく情報格差を埋めて、フェアな環境で公正な選抜が実施され、その中で志高い方々が医学部編入への権利を勝ち取っていかれることを望んでおります。
少しでも皆様のお役に立てますと幸いでございます。

そうした背景もあり、原則無料(一部試験開示成績は除く)で情報提供を行わせていただきますが、noteには「サポート」という金銭的支援の機能があるようですので、もしこちらをご覧いただいた方の中で、「役立った」「応援したい」と思ってくださる方がいらっしゃいましたら、サポート機能を活用してご支援いただけますと大変嬉しく思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

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