家にこもりつつ、野菜の旬が味わえる料理本1(ミールスの舞台裏#2)
こんにちは。ミールス料理人のMitsukiです。
今回から3回、南インド料理を専門にする私が、インド料理以外のジャンルから、野菜をテーマにした料理本を紹介します。
自分にとって野菜が一大テーマになったきっかけは、松戸の眞嶋農園さんの野菜に出会ったことで、いかに素材の味を生かすかを考えて料理をするようになったのもそれ以来のことです。
試行錯誤をしていて思うことですが、おいしい野菜は、インド料理にしても美味しい一方、その素材を一番よく味わう方法とは言いがたいこともよくあります。
特に春先などは、例えばレタスなど、サラダとして味わって美味しい野菜も多く、インド料理の調理法はピンとこないのです。
これから紹介していく本は、イタリアン、フレンチ、中華とジャンルはバラバラですが、「野菜を使ったシンプルな料理」という共通したテーマがあります。
自分にとっては、素材本位で作る料理に目覚めさせてくれた本であり、野菜に更にハマるきっかけになった本でもあります。
野菜炒め天国
今回紹介するのは、中国料理の人、河田吉功さんの『野菜炒め天国』。
前回紹介したレシピアンソロジー本『このレシピがすごい』で知った料理本の一つでもあり、読んで字のごとく、野菜炒め本の決定版とも言える本です。
中華ならではの下ごしらえ
「下のほうの葉や茎はどうするんですか」
「このへんは筋っぽいからゆっくり煮込んでスープなんかにするといいよ」
(フライドポテトのみそ味 のクレソンの処理)
「トマトがかたいようだったら、ちょっとつぶすようにしたほうがおいしいよ」
(なすとトマト のトマトを炒める工程)
料理人とインタビュアーのカジュアルな対話がレシピの合間に挟まり、素材の個体差や、料理には使わない部分の処理など、実際に料理をする段階で気になるポイントもフォローされています。
さながら、実演式の料理教室です。
また、プロのレシピでよく登場する、油通しや合わせ調味料は、あまり出てこないのですが、面倒でもぜひ、と敢えて面倒な工程を勧めるレシピもあります。油を通した際の色つや(ナスなど)や、揚げて水分の抜けたシワシワの質感(いんげんや椎茸など)を目指す場合などで、なるほど手間をかけただけの成果があります。
個人的には、じゃがいもを水にさらして、でんぷんを徹底的に抜く処理(じゃがいものサラミ入りシャリシャリ炒め)がお気に入りで、インドやネパール風の炒めを作るときにも、よく使っています。
また、油をたっぷり用いる野菜炒めで、後半に熱湯やスープを足す工程が出てきたり、水気が出やすい素材の炒めで、水溶き片栗粉を仕上げに少し入れたりと、料理にまとわせる油分と水分のコントロールが繊細なのも印象的です。
手間とコスパ
料理では、手間のコスパを知ることが大事です。どんな時でも、いくらでも手をかけられるわけではないですが、美味しい料理は食べたいものだからです。使える時間や体力に制限がある中では、どの手間がより味に効いてくるのかを知っていることが、より良い結果につながります。
『野菜炒め天国』には、味わいにきちんと効く、コスパの良いひと手間が詰まっています。普段の野菜料理がさりげなく美味しくなる、良本です。
(オススメのレシピは「じゃがいものサラミ入りシャリシャリ炒め」です)
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