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進撃の巨人と虐殺器官で考える選択と自由

『進撃の巨人』読んだことor観たことないやついるの?
いねえよなあ!!

かつてこれほどまでに興奮と驚きと共感を持って鑑賞できた作品はあっただろうか、否!というくらい、私にとって『進撃の巨人』は大好きで特別で大優勝な作品だ。

そして先日、伊藤計劃の『虐殺器官』を読みながらふと、『進撃の巨人』と通底するものを感じた。
どちらの作品も、選択と自由について語っているような気がした。

自由とは何か?

って聞かれたらなんて答えるだろうか。
『虐殺器官』に以下のような記述がある。

自由とは、選ぶことができるということだ。できることの可能性を捨てて、それを「わたし」の名のもとに選択するということだ。
『虐殺器官』伊藤計劃

また、『進撃の巨人』においても、「自由」、それから「選択」という言葉が要所要所で出てくる。

『進撃の巨人』諫山創

自由と選択の関係性

自由とは言わば無限の可能性が存在する場(時空)のようなもので、我々は常にその可能性の中で取捨選択をしながら生きている。
何かを選ぶと同時に、その他の可能性を捨てている。
私がイマ、ココに存在しているのも選択の連続の結果だ。
父と母の選択の結果によって私という存在が生まれ、遺伝子の取捨選択によって私は形となった。

堕落した人間は家畜であり奴隷

『進撃の巨人』諫山創
人々は見たいものしか見ない。世界がどういう悲惨に覆われているか、気にもしない。見れば自分が無力感に襲われるだけだし、あるいは本当に無力な人間が、自分は無力だと居直って怠惰の言い訳をするだけだ。だが、それでもそこはわたしが育った世界だ。スターバックスに行き、アマゾンで買い物をし、見たいものだけを見て暮らす。わたしはそんな世界を愛しているし、そこに生きる人々を大切に思う。
『虐殺器官』伊藤計劃

ただ与えられたかりそめの自由を甘受するだけで、この世界に何も疑問を持たずに、あるいは見ないフリをして生きている人間を、エレンは家畜呼ばわりするし、そんな世界をジョン・ポールは堕落した世界だと言い切っている。
めちゃくちゃディスるやん。

飼い犬や飼い猫は、屋根とご飯と安全を与えられているが、自由は奪われている。
自分だったらどうだろう。飼い犬や飼い猫になりたいだろうか。
それとも、苦難が待ち受けていたとしてもこの広い世界を駆け周れる自由な犬猫になりたいだろうか。
なんて考えながら今もネコチャンを撫でている。

私たちは常に選択を迫られている。
赤い薬と青い薬、あなたはどちらを選ぶ?

戦争と愛

少々ネタバレになってしまうので、嫌な人はこの章は読み飛ばしてね。

・・・

『進撃の巨人』の主人公も、『虐殺器官』の主人公も愛を選択した。
そして、愛する人を守るという選択が引き起こすものとして、戦争と虐殺が描かれている。

ここでトロッコ問題を見てみよう。

Wikipediaより「トロッコ問題」

ここで分岐器を切り替えるという選択をすれば1人が死に、切り替えないという選択をすれば5人が死ぬ。
どちらを選択する?

『進撃の巨人』と『虐殺器官』ではトロッコ(危険)は少数の愛する人達に向かっていた。
主人公たちは、愛する人を守るために多数を犠牲にする(虐殺する)という選択をした。

実際に、愛する人を守るため、愛する国家を守るため、そんな大義のもとにドンパチしてきたのが人間だ。

愛するが故に殺す。
それが戦争であり虐殺であり、我々人類の歴史だ。

両義性のこの世界

両義性をわかりやすく言うと何だろ?ツンデレ?(違うか)
常に思うのだが、何か理想を突き詰めようとすればするほど最終的には真逆の結果になるということがこの世界の仕組みのような気がする。

例えば生と死。
私たちは死ぬために生まれて、生まれるために死ぬと言っても過言ではない。
生きるという道程の辿り着く先は死である。

例えば天国と地獄。
地獄への道は善意によって舗装されているとよく言うが、ユートピアを求めるほどにその様相はディストピアに近づいていく。

例えば進化と退化。
人類は知能と技術によって文明を発展させてきたが、文明が発展すればするほど、人間の知能と技術は衰えていく。
もはや私たちは大名行列とかピラミッド建設とか体力的にムリゲーだし、暗算も出来ないし漢字も書けないくらいにはバカだっぴ。

こうした二律背反の世界を『進撃の巨人』と『虐殺器官』は描いている。
真実を選べば苦痛がある、安楽を選べば虚構がある、愛を選べば戦争がある。

『進撃の巨人』のミカサは言う。
「この世界は残酷だ、そしてとても美しい」
美もまた残酷さと同時にあり、それはこの世界の自然の理そのものである。

はっ!前回記事に引き続きまたミカサの言葉を引用して同じこと言ってしまった。
どんだけミカサ好きなんだ!!



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