見出し画像

鳥…。

雨が降る寒い日のこと。
部屋の空気がこもりがちなので、薄く窓を開けながら仕事をしていると、その隙間から鳥の鳴き声が聞こえてきた。聞こえてきたというより、鳥の声がやけに大きく、否が応でもその声が耳につくのである。

それもそのはず、ベランダの物干し竿に一羽の鳥がとまっていたのだ。あろうことか、その鳥はそこで離れた仲間の鳥と会話をするように鳴き声を交わしているのである。まさに雨宿り中といった様子で、降りしきる雨に向かって一定のリズムで鳴き声を放つその鳥の頭はボサボサ。雨に濡れたからその形なのか、もともとそういうヘアスタイルの鳥なのか、わたしには分からなかった。

しかしながら、こんなに近くに野鳥がいるというのは、なんだかワクワクする。忍び足で窓に近寄り、鳥の様子を撮影するも、こちらを警戒して逃げていく様子はない。
そこでわたしは一旦デスクに戻り、ネットで「鳥 頭 ボサボサ」と調べる。するとすぐさま、ベランダの鳥と同様の見た目の鳥の名前が出てきた。どうやら彼は「ヒヨドリ」のようだ。ヒーヨヒーヨと鳴くという特徴はあまりピンとこなかったけれど、十中八九ヒヨドリだろう。なるほど、なるほど…と思いながら再び窓辺に立ち、今度は静かに窓と網戸を開けてみる。もっと近くで撮影してみたかったのだ。
網戸を開けている最中、もともと物干し竿の中央部にいた鳥は、飛び上がって右側の竿へと移動した。少し遠くなったけれど、まだ撮影できる範囲内なので早速撮影を始めるも、先ほどより口数が少ない。そして数回鳴いたのち、鳥は雨の中に飛び出し去って行ってしまった。

残念…と思いながらスマホをポケットに入れ、窓を閉めようとした時、何か違和感を覚えた。最初に鳥がいた場所、物干し竿中央部の真下には室外機がある。その室外機の上に鳥のフンがあったのだ。
あいつ。
たくさん鳴いたあと催してしまい、排泄をし、その場に留まるのは居心地が悪いからと、竿の右の方に移動したようだ。野鳥だヒヨドリだとはしゃいでいた気持ちが一気に冷め、ベランダをトイレにされたことへの怒りが湧く。
鳥を許すな。
最後はその気持ちだけを胸に、キッチンペーパーでフンを拭き取り、除菌シートで消毒し、窓を閉めた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?