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映画「ビッグ・フィッシュ」の指輪 〈映画の指輪のつくり方〉第13回

僕はこんな死に方はしない
2003年公開「ビッグ・フィッシュ(Big Fish)
文・みねこ美根(2018年9月1日連載公開)

幼いころ、寝る前は母に本を読んでもらっていた。よく覚えているのが、日本の昔話の怖いやつ。ご飯を食べないお嫁さんをもらった男が、外出のふりをして天井裏からこっそり妻の様子を見ていると、頭頂部にある大きな口から大量のご飯を食べる妻の姿を目撃してしまう話。その時に思い浮かべた光景を思い出すのは難しいことではない。綺麗なお嫁さんの黒い髪がはえた頭が、ぎりぎりと割れて開き、歯がずらりと並んだ大きな口が見えてくる。天井からのぞき込む男の目線で何度も想像した。寝られないよ! 怖すぎて!

 …子供のころ聞いた話、思い浮かべたイメージは、意外と鮮明に思い出せたりする。

ティム・バートン監督作品「ビッグ・フィッシュ」は、奇想天外な身の上話をする人気者の父とその息子の話。幼いころから何度も聞かされたどこか浮世離れした父の話にうんざりする息子が、病に倒れた父と父の人生に向き合う。この父親エドワードの話が、現在の世界と交互に描かれるのだが、これが面白い!巨人や、水の精、怪しげな森を抜けて辿り着く幻の村、サーカス、妻との出会い、息子が生まれた日に巨大な魚を釣った話…。父の語り口から、又は息子が思い出すところから、父親の物語シーンへ私たちは迷い込んでいく。

 若き日のエドワードを演じるのはユアン・マクレガー。「スターウォーズ」のオビ=ワンの時もかっこよかったけど、さわやか青年もまたかっこいい。他にも、息子ウィルの妻は「マリアンヌ」でブラピの妻役だったマリオン・コティヤール、冒頭に登場する魔女役に(ほかのシーンにも出てくるけどネタバレになるので言わない)ヘレナ・ボナム=カーター、サーカス団員の一人には「チャーリーとチョコレート工場」でウンパルンパを演じたディープ・ロイ、同じく「チャーリーと…」でヴァイオレットの母親役だったミッシー・パイル、「マチルダ」で父親役を演じたダニー・デヴィートもサーカスの団長役で、出演している。

思い出話をするとき、時間経過に矛盾があったり、因果関係がなくても物事を結び付けたり、面白可笑しく、自分に都合よく辻褄を合わせたりして話してしまったことはないだろうか。実際に起きたことを何もかも忠実に語ることは不可能だ。大学で、経験などを語ったエピソードから語ったその人を考察する「エピソード記述」についての授業を受けたことがある。残念ながら、私にはちんぷんかんぷん、授業の内容もほとんど忘れてしまったが、なんとなく本作を見て思い出した(これ、教授に見られたらやばい)。話してもらった物語の内容に注目しがちだが、その物語を“私に”話してくれていること、話をしてくれている“その人”自身がここに在ることが、大切なことなのかもしれない。

 私には、いつも面白い話をたくさんしてくれる友達がいる。彼女は「実は、話をするときは3割増しで話している。その方が面白い」と私に言ったことがある。彼女が言うようにいつもは3割増しなのだとしても、その時は、割増なく話していたように思う。どちらの彼女も素敵であることに変わりはない。

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モチーフ:村の入り口にぶら下がる靴、木、ビッグフィッシュのいる池、ジェニファーの傾いた家と巨人カール、サーカス小屋、白い柵、黄色い水仙
音楽:「Man of the Hour」Pearl Jam (オルゴールver. cover)

オルタナティブ・シンガーソングライターの〝美根〟です。
作詞作曲をして、ギターとピアノの二刀流で唄い、自分の世界を届けています。
「みねこ美根」名義で活動していた2018年から、OKMusicさんにてweb連載を続けてきた「映画の指輪のつくり方」。
たくさんお世話になったOKMusicさんのサイト運営終了に伴い、noteに移行して連載を続けています。
毎月、大好きな映画から一つ選んで、それをテーマに指輪を制作。
勝手に皆様へお薦めするレビュー文章、制作作業動画を公開中。動画では劇中歌のカバーも。ぜひ、楽しんでいってください。
私の本業である音楽活動など、さまざまな情報はこちらのリンクからがとても良きです。
私を知るためのキーワードは・・・
オルタナティブ、ライブ活動、ランプ、弾き語りスタイル、バンドスタイル、耳と脳にこびりつく作品たち、心火、焔心の砦、美術館でも展示された指輪たち、自作ストップモーションアニメ、MV、毎週水曜生配信番組、2024年5月24日と6月9日のワンマンライブ、人生初の弾き語りツアー・・・
知りたくなってきた?→ https://lit.link/minelink

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