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苦しい自己防衛

ある田舎町に住んでいた頃、学校で一言も喋らず、ずっと無表情でいた同級生がいました。いつもひとりぼっちの彼女。

狭い社会です。転校してきたばかりの私でしたが、すぐにその理由を知ることとなりました。

「あの子は、施設の子よ!」そう、私に耳打ちする子がいました。

この町では、皆と違っている子は、すぐにいじめの対象となるのでした。

親御さんが離婚し、お父さんの経済力も弱かった彼女。

お兄ちゃんと二人で、施設に預けられていました。

幼くして、彼女が身に付けた処世術なのでしょうか?

決して、自分の思っていることを口にしません。

目立たないようにすることで、同級生たちの攻撃を受けないようにしていることは明白でした。でも、そのような態度でいるのは、彼女だけだったがために、余計目立ってはいましたが・・・。

私は、毎日少しずつ彼女に話しかけていました。しかし、彼女は頷くか、首を横に振るだけで、しばらくの間、声を発することはありませんでした。

ようやく、彼女が心を開いてくれた頃、私はこの町を去ることになってしまいました。

本当は、とてもおしゃべりで、よく笑い、根は明るかった彼女。

一体どんな思いで、学校生活を送っていたのでしょうか・・・?

その後、彼女は中学を卒業すると、すぐに働きに出たと聞きました。

集団生活に嫌気がさしていたのでしょう。

周りの大人や同級生たちが、彼女にそのような自己防衛をすることを強いていたことに、怒りを覚えずにはいられないのでした。


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