バレなければ浮気をしても良い? 4

絶対にバレない、という幻想に惑わされ。

浮気はバレなきゃいい。そう思ってる人は少なくないと思う。

自分が浮気をしている時は何故だか、絶対にバレるわけがない、という変な自信に満ち溢れる。おそらく、違法薬物などを使用した人が口を揃えて、自分は依存症に陥るわけがないと思っていた、というのと同じようなものだと思う。人間は、自分のことを過信しやすい、そして自分のこととなると途端に正悪の判断ができなくなる生き物なのである。

しかし、現実はそう上手くはいかないものだ。自分はバレるわけがない、自分だけは大丈夫、と思っている時ほど危険なことはない。

私も例外ではなかった。

私は完璧に隠し通している、パートナーにバレるはずがない、気づかれるはずがない。そう思っていた。

パートナーは、私が連絡先を交換するかしないかのあたりから、私の浮気に気付いていたにも関わらず。

私は、私に好意を寄せているであろう会社の同僚と連絡先の交換をし、その後食事に誘われた。

何をしたら浮気になるのだろうか、逆にどこまでなら許されるものなのだろうか。

そんなことを考え、返信に戸惑っていた。今思うと、どこまでが許されどこからが浮気なのかを考えている時点で下心が有るため、すでに浮気をしていることに他ならないのであるが。

しかしながら、モテることの少なかった私は、このチャンスを逃したら、この先このような気分を味わうことはないのかもしれない。せっかく好意を寄せてくれる相手であるから、この時間を楽しまない手は無い、そんな考えに支配されていった。

そして同僚の誘いに対して返信をした。

「是非、行きましょう。」

その後、私は同僚との食事の日を心待ちにし、日々過ごしていた。

今思うと、その頃からだったであろうか。パートナーの顔から少しずつ覇気が薄れていったのは。

パートナーは、私がいうのも何だが、あっけらかんとした性格で、毎日元気で笑顔でいてくれることが多かった。感情の起伏はもちろんあるものの、悩みなんてあまり無いように見えた。特に、私が落ち込んでいる時や、精神的に苦しい時に、いつも支えとなってくれたのは、間違いなく彼女だった。長年の仲ではあったが、まだお互いの家を行き来していた時は、彼女と一緒になりたい、一緒に暮らしたい、と強く願っていたことを今でも覚えている。

そんなパートナーの異変に気づけなかったことについては、特に、今でも悔やんでいる。むしろ、自分に都合の悪いことについては、気づかないようにしていたのかもしれない。

同僚との食事の日、私は、友人と食事してくるとパートナーに嘘をつき、出かけた。すこし心臓が跳ねたものの、最大限、自然を装ったつもりだった。パートナーは、「いってらっしゃい」と送り出してくれた。今思うと、すこし不自然な笑顔だったのかもしれない。


約束の場所についた時、同僚はまだ店に着いていなかった。早く来ないかな、と待ち焦がれる気持ちとともに、来ないでほしい、という気持ちも存在した。まだ、ほんの少しだけ、自分を客観的に見ることができていた。

同僚は、私にパートナーがいることを知っている。私は、同僚を騙しているわけでは無いのだ。同僚も、私にパートナーがいることを承知で好意を寄せているのだから、同僚も同罪であるし、さらに、私が本気で無いことぐらいわかっているはずである。

そんな考えを巡らせ、自分をどうにか正当化しようとしていた。

そんな私の気持ちの葛藤をつゆほども知らずに、同僚は予定時刻にすこし遅れてやってきた。同僚の顔を見たその時、来ないでほしいという気持ちは何処かへ消えてしまい、この時間を存分に楽しみたい、とだけ思うようになっていた。

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