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映画、本、マンガとか

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#映画感想文

『(ハル)』

画面に映る景色/それぞれの人生とパソコン上でのやりとりが、普段は切断されていてたまにリンクする、そのバランスが心地良い。他の映画なら役者の実力が発揮される重要な「セリフ」となる部分を文字に委託しているから、演技くささが取り払われているし文学的な味わいがあった。

『アメリカン・ビューティー』
滑稽でちっぽけな人生の中で、その背後に存在する人智では捉えきれない大きな力の一端に触れられる機会に巡り会える。それだけで生きた意味がある。

『パーフェクト・デイズ』
間主観な関係から適度に距離をとって、もっと世界を眼差してもいい、そういう楽しみだってあるって安心した。

一方で、普段は自然と笑みがこぼれていた平山が、最後の場面ではどこか覚悟を決めて笑っているかのような表情を浮かべていたのが印象的だった。

『野獣死すべし』
狂気を宿した、というより狂気が松田優作にふれたみたいな。そんな感じだった。細長い手足と、奇妙に首を傾げた姿がとても人間とは思えない佇まいだった。

『ミスター・ノーバディ』(2009)
最後、老人ニモが「アナ」とつぶやいたのがひっかかる。少年の想像の世界にいた可能性を秘めたままの何者でもない存在としてのニモが、少年がある人生を選び取ることを決断したことでその人生が現実化して「誰か」になれたことを表しているように見える。