超高齢化社会で求められる健康寿命の延伸 ~トレーニングからヒントを探る~

はじめに

昨今、日本では高齢化社会について取り上げられることが増えてきています。
少子高齢化により、現在、日本の高齢化率は28%を超え“超高齢化社会”、エイジレスに働ける社会の実現や介護現場での外国人人材の受け入れ拡大、健康増進に関する調査研究などの対策が講じられています。
私が携わる介護現場では介護保険財源の不足や介護現場の労働力不足の二つの不足が課題に挙げられていて、そのようななかで、求められているものの一つが“健康寿命の延伸”。

日本の平均寿命は男性80.98歳、女性87.14歳。それに対し、健康寿命は男性72.14歳、女性74.79歳。その差は男性8.84歳、女性12.35歳。つまり、この間は日常生活に何らかの支障を感じながら生活をしていかなければなりません。
高齢者の方が身の回りのことがご自身でできる自立した暮らしをサポートできれば、その方らしい生活をより長く営んでいただけることになります。

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出典:https://www.taisho.co.jp/locomo/ba/sp/q1.html

フレイル

“フレイル”という 日本老年医学会が2014年に提唱した概念があります。健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のことを指し、筋力低下などの身体的要素、認知症やうつなど精神的・心理的要素、独居や経済的困窮などの社会的要素で構成されると言われています。
フレイルの始まりは社会とのつながりが少なくなってしまうことと言われ、活動範囲が狭まり、人とかかわることが減って孤立し、活気がなくなり、話すこともしなくなるため、口腔機能も低下。食欲減退し、食事量が低下、低栄養となり、身体機能が低下していく悪循環にあると考えられ、これを“フレイルサイクル”と呼びます。

つまり、フレイルの進行を予防するためには、これらの身体的要素、精神的・心理的要素、社会的要素の3つ側面から総合的にみて対応する必要があります。

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出典:https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/genin.html

フレイル予防

フレイルの状態になると、転倒や骨折あるいは慢性疾患の悪化をきっかけとして要介護状態になる可能性が高くなります。その反面、早く対処をすれば、元の健常な状態に戻る可能性もあります。
 
栄養つまり食事、運動、社会参加のこの3つを対象となる方の生活とうまくかけ合わせて、フレイルサイクルから脱却できるよう取り組んでいくことが大切です。

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出典:https://www.minnanokaigo.com/guide/disease/frail/

トレーニングにフレイル予防のヒント!?

少し話は変わりますが、皆さん、不思議に思ったことはないですか?トレーニングしている人がどうしてあんなにも体が大きくなるのか。若い方なら、まだイメージできますが、70歳を超えても何十kgというバーベルやダンベルを持ち上げる方もいます。年齢にかかわらず、正しくトレーニングを積めば、筋力アップすることができるんです。

私もトレーニングを趣味にしているのですが、筋力アップ、筋肥大を狙って、“トレーニング(運動)”と“栄養素”を考えて取り組んでいます。トレーニングのため、スポーツジムに行くのであれば、社会参加にもなるでしょう。これらはフレイル予防の観点と重なる部分であり、何らかのヒントになるものがあるのではないか思い、次の項では探っていってみようと思います。

トレーニング(運動編)

トレーニングでは個々にあった方法で取り組んでいきます。ひたすらに重たい重量を扱う人もいれば、軽い重量も扱ってメリハリをつけて行う人もいますが、大切なのは疲れを感じるほどに“しっかりと追い込む”ことです。それを繰り返していくことで、筋力アップ、筋肥大していくのです。

高齢者の方でもトレーニングを積むことで重い重量のバーベルやダンベルを扱うことができるようになると思います。ですが、ここでは運動習慣のない高齢者の方を想定し、自身の体重を重りにして運動する“自重トレーニング”について書かせていただきます。

準備運動をする、筋肉痛があるときはトレーニングをしない、休息は・睡眠はしっかりととる、などのルールがありますが、オススメは“呼吸を止めずにゆっくりと体を動かす”ことです。

呼吸することでしっかりとエネルギー生成してくれるようになり、無呼吸時と比べる約38倍のエネルギーが生成できるとも言われ、それだけ運動時の呼吸は大切なんです。

そして、ゆっくり体を動かすことで、それだけ負荷を高め“追い込む”ことができます。楽な運動をいくら続けても、筋力アップにはつながりません。ある程度の負荷は必要になってきます。1セット10回でしっかりと疲れが感じられる程度のゆっくりとした動きからで十分かと思いますので、一度試してみてください。
まずはこれから始めて頂き、運動に慣れ、筋力がアップすればセット数の増やしたり、セット間のインターバルを短くすることで、更なる筋力アップが狙えると思います。

トレーニング(栄養編)

トレーニングでは筋力アップ、筋肥大を促すために強い負荷をかけた運動を行います。それに伴い、多くの栄養素を消費することになります。しかし、この栄養素が不足していると、せっかくのトレーニングが台無しになってしまうのです。これは高齢者の方でも同じです。私は栄養についても考えてはいるつもりですが、食の細い私にとっては体を使うトレーニングよりも、この食事トレーニングのほうが苦手です。

栄養素といってもたくさんありますから、そのなかから身近なタンパク質、糖質、脂質についてお話をしようと思います。

タンパク質
タンパク質は筋肉、内臓、皮膚、髪、骨、歯、腱や髄など、およそ体のどの部分をとってもタンパク質が存在します。体液、ホルモン、酵素など、すべての生命現象はタンパク質が中心となります。タンパク質が不足した状態でトレーニングを行うと、かえって、筋分解を促してしまうという残念な結果にあることもあります。
 
比較的吸収率の高い栄養素ではありますが、体重(kg)×1~1.2g/日は摂取することをお勧めします。体重50kgの方なら、50~60gのタンパク質を摂取します。

トレーニングをする方が飲まれているプロテインですが、タンパク質が1度に摂取できる量に限りがあることと、これだけのタンパク質を摂取しようと思うと、そのほかの栄養素を過剰に摂取してしまうことがあり、それを防ぐために、プロテインで効率よくタンパク質を摂取しているのです。

糖質
体内でエネルギーとして使われている。運動強度が高くなればなるほど、体内で使われる糖質の比率は上がります。糖質はタンパク質分解を抑制することができ、トレーニングの際、タンパク質を効率的に筋合成に使うことができるということです。糖質は運動する種目に異なりますが、体重(kg)×6~10g/日の摂取がおすすめです。体重50kgの方なら、300~500gといった感じになります。

脂質
読んでくださっている方の中には「脂質をとると太る。」と、思われる方もいるかもしれません。もちろん運動をせずに過剰に摂取してしまうと体重は増えてしまいます。しかし、トレーニングにおいて、脂質は大切な役割を担ってくれていて、私は摂取すべき栄養素だと思います。
 
脂質は糖質ほどではありませんが、エネルギー源になります。ホルモンの材料になり、筋肉を大きくするために重要な男性ホルモンの材料にもなります。ほかにもビタミンA・D・E・Kの脂溶性ビタミンの吸収を助けるといった作用もあります。
 
トレーニングにおいては、近々フィッシュオイルが注目されています。吸収した栄養素を筋肉に運ぶ働きや筋肉の損傷や炎症を抑え、回復を早めるなどの作用があり、トレーニングをする人にとってはれしい効果があるためです。私もサプリメントで摂取していますし、オススメです。

終わりに

トレーニングと高齢者の方の筋力アップ、考え方は基本的には同じです。その方にあった運動(トレーニング)方法と、その効果を十分に高めるためにも栄養素をしっかりと摂取することが大切。フレイルの状態にならずに、いつまでも健康で、その方らしい生活が続けられることを願っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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