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『風のかけら』 03 背い高リガン - Re-gan The Tall Man


背い高リガン - Re-gan The Tall Man

雨の日のダウンタウンは少しだけ浮き立つ。降雨量の少ないカリフォルニア砂漠では横殴りの飛沫もひとつのイベントと化す。

雨に濡れる Street People も愉快だ。

色鮮やかなレインコートに
茶目っ毛たっぷりの傘をさし
今日は冷たい雨だね
今年は多いねよく降るね
明日はきっと晴れるよね

急ぎ足の通行人に笑顔で声をかける腹ぺこアーティストのレーガンは、昔の大統領と同じ名前は気に入らないらしく、自分の画に『Re-gan』と署名する。

ジョージアの生まれさ
今はひとりで暮らしてる
父が故郷にいるけど、たまに電話で話すだけさ
彼は退役軍人でね、ガキの頃から一度も近しく感じたことはなかったよ
1986 年の夏に交通事故でね、翌日にはスッパリさ
1986 年の夏にね、この足は
クリスマスシーズンが一番実入りが良いね
雨の日は悪くはないけど、今日は寒いからね
俺はホームレスじゃないよ!
アパートに住んでるよ!
路上の民ストリートピープルさ!
ああ! 今日は! 良いいちんちだった!

立ち上がって伸びをした背い高リガンの足元の、一枚しかないヘタな虎の画を所望する。

鼻筋の太いただの猫に見えるその孤高の野獣は、リガンのように透きとおる青ではなかったけれど、やっぱり悲しい目をしてこっちを見ている。

やっぱり悲しい目をしてこっちを見ている

Love & Peace,
MAZKIYO
©2023 Kiyo Matsumoto All International Rights Reserve


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