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女心謎すぎプルプル座衛門の憂鬱

最近妻が疲れている。

病み上がりで体力がなくなっているというのもあるが、特に精神の方が疲れている。心がヘロヘロな感じなのだ。

疲れの原因はなにか。ひとつは次女が病気に次ぐ病気で、なかなか調子が戻らないことだ。コロナの後遺症が続くなと思っていたら溶連菌に感染していた(家族みんなそうだった)。次女はそこから元々荒れがちな皮膚がさらに荒れ、微熱とヘルペスが治らないのでしばらく保育園に行けていない。

このせいで、妻は仕事を本来の退職日に退職できなくなった。人に迷惑をかけるのを何より嫌う妻にとってこれがかなりのストレスになっている。私も看病や通院などできることをしているが、どうしても妻にしわ寄せがいってしまうところが多い。

看病に退社にこれからくる引越しの準備にと、環境も大きく変わることの漠然とした不安も加わりしんどいと言う。そうか、そうだよな。ピリピリしている妻に、私はこんな話をした。

「あのさ……昨日、職場のビルのエレベーターに乗ったらさ、もう1人どこかの会社の男の人が一緒に乗ってきたんだよね。つまりエレベーターには私とその男の人の2人きり」

「……うん」

「その男の人さ、階を押すボタンの前にいたんだけど、乗ってすぐにでっかいくしゃみをしちゃって。ボタンのとこがキラキラしてるんだよ。ちょっとついちゃったの、ツバ」

「えっ」

「だからその男の人慌ててさ、『後でアルコールで拭きますんで、すいませんすいません』って謝りながらとりあえず持ってたハンカチでボタンを拭いたの」

「……」

「でもさ、ハンカチでボタン拭いたから全部の階のボタンがついちゃって。1階ずつ止まるからなかなか職場のフロアに着かなくてさ。なんか気まずくて途中で降りちゃったよ」

「で?」

「……えっ?」

「それで何が言いたいわけ?」

「あっ、いや、その………それだけの話なんだけどさ」

「急に神妙に話しだすから何かと思ったら……今じゃないよねその話、絶対」

「うん、今じゃなかったね。ごめん」

こういう時、私は原因から目をそらして適当な話で気をまぎらわせたいタイプだ。でも妻はそうではなく、むしろモヤモヤする原因の一人がなにのんきなことを話してやがるんだよ……となる。私は女心謎すぎプルプル座衛門なので、妻の元気を出したいと思ってもかける言葉がわからず、だからなんなんだという話ばかりして空回りしてしまう。プルプル。

妻はハァ…と大きくため息をついて、言う。

「もっとこう、イトーダーキさんみたいになってほしいわ」

「イトーダーキさんって、noteの?」

「そう」

妻は私が三毛田というアカウントでやっているこのnoteを読んでいる。書くつもりはないから自分のアカウントは持っていないらしいが、聞くとたまに他の人のnoteまで読んでいるみたいだった。

「イトーダーキさんの0日婚の記事を読んでさ、あなたに足りないのはこれだと思ったよね」

「こんな俺に任せろって感じでもっと引っ張ってほしいのよ。あなたはいろいろ決断して行動はするけど、自分勝手なのよ。イトーダーキさんとの違いはそこよね。人の気持ちを汲み取ったうえでやってくれるところ」

…………ぐぅ。こんなかっこいい結婚エピソードをnoteに書くんじゃないよイトーダーキ。工事現場でまわりがうるさくて全く聞こえてなかった私のプロポーズと雲泥の差じゃないか。

「で、でもさ。イトーダーキさんはうんこ漏らすらしいよ」

「でもあなたも漏らしたじゃない」

…………ぐぅ。イメージを悪くしようとして墓穴を掘った。嫌なことまで思い出してしまったじゃないかイトーダーキめ。

私も妻をぐいぐいと先導して、安心感を与えるような人になりたい。なりたいが、私には女心がままならぬ。そして、ままどおるはおいしい。ままどおる、と牛乳はさいこうに、おいしい。うむ。

しかしあれだ。少なくともこういうことを言ってるうちはダメだということだけはわかるな。プルプル。

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