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【302/1096】傷つくならば、それは愛ではない

302日目。夜になってもまとわりつくようなじとっとした暑さ。寝苦しい夜だけど、ぐっすり眠れるといいなー。


『傷つくならば、それは「愛」ではない』という本がある。

ずいぶん前の本で、チャック・スペザーノ博士が366日分の考え方の秘訣みたいなのを書いている。
内容は、まあそんなに覚えていないのだが。
タイトルがずっと気に入っている。

傷つくならば、それは愛ではないのだ。

眠れなくて困っている人が精神科医を訪れて、相談した。
精神科医は
「あなたは今、自力で眠ることができないから、お薬で眠りましょう」
と薬を処方した。

この話を聞いて、あなたはどう思うだろうか?
私はこれを、普通の話として受け取った。
しかし、これをエンパワメント・センター主宰の森田ゆり先生は、「本当に腹が立つ」と憤っていた。

この相談をした人は、自分が暴力に傷つき、自分も暴力をふるってしまうことで悩んでいる人で、うつ状態になり、眠れなくなっていた。
その話を精神科医も、もちろん知っている。

ゆり先生は、「専門家で権威がある、圧倒的に力のある医者と言う立場の人間が、『あなたには力がない』ということの影響を微塵も考えていない」ということに憤っていた。

しかし、こういう話は、枚挙に暇がない。
私自身、自分がうつになったとき、精神科医に「薬に頼って眠りましょう」と言われた。
「今はもう自分ではなにもできないんだ・・・」と思ったけど、薬に頼れば眠れるのかとホッとした。
実際は眠れなくて、その次の週も、その次の週も薬を変えてもらうはめになったが。

「『あなたは自力で眠る力がない』なんて、どんな人にも言う権利はない。眠れなくなるほどの何かがこの人に起きていると考えるのが専門家だ」というのが、ゆり先生がおっしゃることだ。
実際、この方はそのあと、ゆり先生や支援の方につながり、薬を減らしながら、自分で回復する力を取り戻しつつあるそうだ。誰にも回復する力はあるのだ。

医者など、本来支援する側の人から傷つけられる経験をしている人は多い。
患者は、医者を基本的には信頼している。だから、力を奪われると、その後、自力での回復が遅れるという。
ゆり先生は薬を飲むこと自体を否定しているのではなく、(薬漬けにする精神科医には別の憤りがあるが)
専門家が「あなたには回復する力がある」と伝えてほしいし、その力があることに気づいて、その力を出せるようにサポートするのが専門家でしょう?と訴えている。

この話を聞いたとき、私は自分がある専門家に「あなたには、尊厳がない」と言われたときのことを思い出した。
もう何年も前の話だが、あれは、今思い返しても、相当ひどいなと思う。
自己啓発のグループセッションで、権威のある人からの言葉だった。
その専門家は、暴力的なコミュニケーションをやめて、非暴力、対等なコミュニケーションをするために自分を変えるということを謳っていたが、「あなたには、尊厳がない」とグループの人たちの前で言い放たれたことは、暴力以外の何物でもなかった。
力のあるものが、力のないものに対し、行使されたのだから。その場がそういう構造になっていた。
私とその人の間に、対等さは微塵もなかった。
もちろん、役割的には対等ではないのだが、存在として対等であるならば、ベースに尊重があるはずで、尊重があれば「尊厳がない」などと言えるはずがない。
私がその言葉を受け取りがたく拒絶すると、「自分はこのセッションを何千人もやっていて、あなたのような人を見てきている。これを受け取れば変われる」というようなことを言われ、まるで受け取れない私が悪いかのようになった。(と当時は感じた。)
それを切れ味のいい、ほかの人が言ってくれないことを言ってくれていて、受け取れないほうが悪いと言うのは、ただのすり替えでしかない。
でも、当時はそれに気づかなくて、受け取れない自分はだめなのだと否定ループが回っていた。

だいたい、「尊厳がない」などと、なぜ、他人が言い切れるのであろう。
尊厳のない人間など、この世に存在しない。
もし、尊厳が損なわれているとすれば、損なわれるほどの環境があったということに他ならない。
そのとき、「愛から関わる」とその人は言っていた。
傷つくならば、それは愛ではない。
その人のそれは、少なくとも私にとって愛ではなかった。
愛と言って暴力をふるうのは、支配したい人間の常套句なのである。
それを愛と言われて受け取らなければならない構造は、支配者にとって都合の良い構造なだけである。
今は、そのことに気づかせてもらえたことに感謝している。
それと、「傷つく」ということにも段階があるなと思う。
その人のその段階で、今の状態でどうか?ということを見極める必要もある。
今の私が、「あなたには尊厳がない」と言われても、傷つかないし、そんなことを言う人の言葉を受け入れようとする必要性すら感じないだろう。
へえ、あなたはそう思うのですね、くらいだ。
しかし、当時はそのような状態ではなく、心身ともにぼろぼろの状況だったので、ぐっさり傷ついたのである。

力を奪う言葉ではなく、力を与える言葉を。
全方位に傷つかない言葉はない。
けれども、今、目の前のこの人に、どんな言葉を送ったら、この人の力になるだろうか?という問いを自分に投げかけ続けることを忘れないでいたい。
私の尊厳は、私のものである。

では、またね。


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