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映画のはなし:たまにはフランス映画『最高の花婿』

配信されているのを発見し、思わずまた観てしまった作品。改めて観直したけど、やっぱりこの映画大好き。

パリから遠く離れたフランスのある田舎街。
昔気質で保守派のクロードには4人の美しい娘がいる。上3人は既に結婚。しかしその相手は、イスラム教徒、ユダヤ教徒、そして中国系。敬虔なカトリック教徒で、娘たちには自分が理想とするフランス人と結婚してほしいと願っていたクロードだったが、今まで誰も教会で結婚式を挙げられず、娘婿たちにも人種差別的な発言を繰り返していた。
そんななか最後の末娘の結婚が決まった。今回の相手はカトリック教徒とだという連絡を受け、クロード夫婦は大喜び。しかし実際に会ってみると、相手はコートジボワール出身の黒人。
その現実に再び絶望するクロード。そしてそれを見た姉夫婦たちも総出で、末娘の結婚を阻止しなければと大騒ぎ。はたして末娘の結婚の行方は……?

家族総出で異文化やら異人種やらが入り乱れています。
文字にするとシリアスに感じるストーリーだけど、そこをうまく逆手にとったコメディ。バランス感覚が素晴らしい!
原題は『Qu'est-ce qu'on a fait au Bon Dieu ?』。「私たち、神様になにかした?」みたいな感じらしいです。エスプリ!

超保守派で、自分と同じようなフランス人と結婚してほしかったが故に、娘婿たちに対して過激な発言を繰り返すクロード。
義父のクロードはもちろん、3人の娘婿たちも、最初は互いに険悪な関係。国民性の違いを笑うエスニック・ジョークより1歩進んでお互いの皮肉や批判を言い合う日々。

でも、目に見えて文化や宗教、国民性が違うことに触れず触らず、避けて通ることって、なんか健全じゃない感じがするのは、私が単一民族国家で育った日本人だからなんですかね?
自分と違うことは変えようのない事実なんだから、お互いへのリスペクトを持ったうえで、その違いを楽しんだり、ブラックジョークとして笑い飛ばしたりするのは、至極まっとうなことなのではないかなと思う。
もちろん、経験したことがないので偽善的な考え方なのかもしれないな、と感じる部分もあります。
でも、「臭いものにフタ」じゃないけど、家族として生きていくなら、宗教や民族の違いを笑い飛ばせるような関係が理想的だとも思う。

私は異文化の家族はいないけど、別の国の友人と「日本人は●●だからね」みたいなネタで笑いあったりもするし、友人でなかったら許されないような内容のジョークを言ったりもする。
でもそれは、信頼関係とかリスペクトがあるとお互いに理解しているから成り立つことで、親しくない人には絶対に言わないし、私だって初めて会った人に「日本人はうんぬん……」とか言われたら、ムッとして言い返します(実際、旅先で何回か言い返したことがある)。

人それぞれだから国民性じゃないよね、と言ってしまうと、この映画の「異文化や異人種の」という部分が複雑になるので、ステレオタイプと思われる人たちがメイン。
でも、そんな保守的でステレオタイプな、個性豊かすぎる人たちが巻き起こすあれやこれやを、コメディという軽いベールで包んでくれる佳作。

現実はこんな大団円になるか?と言われたら、まぁどうでしょうねぇ……と思う部分もあるけど、そこは「映画って大人のおとぎ話だから」と素直に受け入れたいところではないかと。

てゆーか、移民の国であるフランスだからこそ作られた作品よね。
作中で出てくるセリフ(言う相手とシチュエーションが最高!)、

「冗談は好きだが相手を選ぶ」

ホント、すべてはこのひと言に尽きるのよ。もうちょっとつけ足すとすると、「相手と場所」を選ぶ、じゃないですかね。

ホントにさぁ、その辺のデリカシーが欠けてる人っているのよ。
だからいろいろ炎上するんだって!
なんてことを改めて感じたのでした。

ちなみにタイトルからも分かる通り結婚式のシーンがあるのですが、メンデルスゾーン先生の「結婚行進曲」がバーン!と流れるシーンがあります。
この曲、いつ聞いても感情高まるよね。
結婚式の曲といえば、ワーグナーよりメンデルスゾーン先生派。


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