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なんでも「はい」と言ってしまう弊害。

金曜日の連絡帳に「洋式トイレの蓋をしたまま放尿して、事業所から苦情が出ました。おうちでもしっかり指導お願いします」と書いてあった。

うちの彼に限ってあり得ない。

とは思ったが、念のために彼に確認してみた。
「蓋におしっこかけたの?」「はい」
「蓋におしっこかけてないの?」「はい」

そう、彼は何を聞かれても最初は「はい」しか言わないのだ。

で、よくよく聞いてみると「朝から水」「流しました」「座っておしっこ」「お尻濡れました」などの言葉が出てくる。

結局、いつからかわからないけれどトイレが濡れていて、自分が入ったときも濡れていた。(いつものように)そのまま座って排尿したらお尻が濡れたので、トイレットペーパーを使って拭いた。トイレットペーパーは流した。

ということらしい。

そこで、事業所に電話してそのときの状況を聞いてみると「彼がトイレを使ったあと、すぐに介助員が使おうとしたら様式トイレの蓋が濡れていた。それで、彼に『君がやったの?』と確認したら『はい』と言ったので一緒に事業所に謝った」とのこと。

基本的に彼はトイレを汚さない。人から見れば厳しいくらいにそういうしつけをしてきた。男性用のトイレしかなければ立ってしようと努力するが、洋式トイレが空いていればそちらを使う。

洋式トイレでは、必ず座って排尿する。トイレトレーニングの最初からそのように教えてきたのだ。立って洋式トイレを使っているなどというのは、生まれてから一度もない。小中高校でもずっと「彼のために洋式トイレを設置してもらう」という状況だったくらいだ。

なので、洋式トイレの蓋をしたまま、排尿をするなどということは、「イタズラ」や「嫌がらせ」をしようとでも思わない限りあり得ない。そして彼にはそれが「イタズラ」や「嫌がらせ」になる事象だということを理解する能力がない。

わざわざ『蓋にかける』という行為をする根拠も、技量も、知恵もないのだ。

そして、何事にも「はい」と返答してしまう習癖は、誤解も生めば、冤罪もある。

わかっていたとはいえ、なかなか悲しいものだ。別に彼の他に犯人がいるはずだから探してほしいなどと言いたいわけではない。介助員さんが障害特性を理解しないまま返答を鵜呑みにして、ただ「謝らせてしまった」ことが悲しかった。

なるべく理解してもらえるようにケースで説明もしてきた。嫌なことでも嫌と言えないことも伝えてきた。「はい」しか返答できないことも伝えてきた。それでもこの結果だ。

おそらく、月曜日に彼はまたその件で介助員さんから「本当にやってないの?」などと聞かれ、何度も聞かれると「しました」と答えるのだ。

彼の返答の根本にあるものが「相手の求める返事を言いたい」ということだから、ある意味しょうがない。ただ、そこには重度知的障害と自閉症という障害があることを、普段接する人くらいはわかってやってほしいと思う。

そんなこんなで、かなりナーバスぎみな週末。明日はサッカーだというのに、気が重い。

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