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創作児童ポルノによる、実在する子どもへの人権侵害とは?【現実の事例集】~AI時代に子どもをどう守るか④

実在する子どもを性被害から守りたいなら、AIや漫画、アニメ、ゲーム等の創作物による、児童ポルノ(子どもへの性的虐待)表現のあり方を見直さなければならない。なぜか。創作児童ポルノは、実在する子どもへの人権侵害や犯罪につながり得るためだ。(解説: 渡辺真由子/シンクタンク『メディアと人権研究所MAYUMEDIA』代表)


創作児童ポルノは果たして、実在する子どもの人権を侵害しているのだろうか。
この問題について日本では、「創作児童ポルノが人権侵害を引き起こすという科学的根拠を示せ」との声が大きい。創作物の性表現について、現実の性暴力との関連性を示す研究データは既に明らかになっているので、ここでは「現実の人権侵害事例」を見てみよう。

実は創作児童ポルノが、実在する子どもへの性犯罪に影響したとみられる事件は、枚挙にいとまがない。それらの内、2000年代以降に報道された主なものを紹介する。

創作児童ポルノが、子どもへの性犯罪に影響したとみられる事件

・高崎小1女児殺害事件(2004)
<加害者> 幼女のキャラクターが登場するパソコンゲームや、ランドセルを背負わせた等身大の少女の人形を使って、性行為の疑似体験を重ねていた。それだけでは満足できなくなり、「少女なら自分を受け入れてくれる」「子どもと性行為がしたい」という妄想にとりつかれた。

・奈良小1女児誘拐殺害事件(2004)
<加害者> 児童を性的に描いたポルノ漫画や雑誌を大量に所有。「ロリータのポルノビデオやアニメを見るのが好きだった。まねしてみたくなって、女児を探した」などと供述。女児を性的対象と見なすようになったきっかけは、高校2年生の時にアダルトアニメ(中学生くらいの兄と小学校低学年くらいの妹が性交し、妹が性的快感を得る内容)を鑑賞して、「子どもも大人と同じだ」と思ったため。

・少女監禁・性的虐待事件(2005)
<加害者> 監禁相手に犬の首輪を付け、自身を「ご主人様」と呼ばせていた。女性を監禁・暴行して思い通りに育成する、「調教もの」と呼ばれるジャンルのアダルトゲームに熱中し、監禁相手に同様の行為をしていたとされる。

・熊本3歳女児わいせつ殺害事件(2011)
<加害者> スーパーのトイレで女児を殺害。加害者の部屋からは、少女の裸などを描いたポルノ漫画が多数見つかった。

・広島小6女児かばん連れ去り事件(2012)
<加害者> 女児をわいせつ目的で旅行かばんに押し込み、連れ去り。「少女をかばんに入れる場面がある漫画を参考にした」などと供述した。

・札幌小3女児監禁事件(2014)
<加害者> 女児を自宅アパートに連れて行ったときは、粘着テープのようなもので目や口をグルグル巻きにしたとされる。「アダルトゲームの影響もあり、かねてから女児を思い通りにしたいと思っていた」と、裁判で検察側が指摘。

・埼玉女子中学生わいせつ事件(2017)
<加害者>「放射能の調査」と称して女子中学生の自宅に入り、体を触ったとして逮捕。「インターネットに掲載された成人向けの同人漫画を読み、手口をまねした」と供述。埼玉県警は同漫画の作者に対し、作品内容が模倣されないような配慮と、作中の行為が犯罪に当たると注意喚起を促すことなどについて、異例の要請をした。

・大阪小学生女児10人性的暴行事件(2023)

<加害者> 1人で留守番する小学生の女児を狙って性的暴行を繰り返した。「アダルトサイトで見た漫画の内容をまねて、小学生の女の子の後をつけたりして、住んでいる家や家族構成など女の子の行動を何日も確認したのちに、女の子を待ち伏せして犯行に及んだ。」と供述。

(報道資料より渡辺作成)

実在する子どもが、創作児童ポルノに使われたとされる事件

創作児童ポルノに描かれるのは、架空の子どもばかりではない。実在する子どもへの性的虐待が、創作児童ポルノに使われたとされる事件も発生している。

41人少女性的虐待事件
2006年から2007年にかけ、「女児愛好団」と称されるメンバー41人が、小学生を含む少女たちへの強姦、強制わいせつ、児童ポルノの製造、提供などの容疑で宮城・埼玉両県警に摘発された。メンバーは主にインターネット上で知り合い、中心人物とされたのは漫画家の男だった。漫画家は「見ず知らずの男達に女児が襲われ、やがて父親も暴行に加わる」といったストーリーの漫画を、市販用に描いていたとされる。

愛好団の中には、彼の作品の登場人物さながらの行為に及んでいたメンバーもいるという。自分が女児を襲った際の映像を、この漫画家に提供した者もいた。元メンバーは「構図もストーリーもリアルで群を抜いていた。彼は我々が見せた実写で描いていたのだと思う」と述べている。

(報道資料より)

この事件からは創作児童ポルノが、実在する子どもへの性的虐待を「ネタ元」にすると共に、実在する子どもへの性的虐待を「誘発」していた可能性が伺える。漫画に誘発された者が新たに実在の子どもに性加害をし、その模様をネタとして新たに漫画が創られ、それを見た別の者がまた新たに実在の子どもに性加害を……と、性的虐待のループが発生していた疑いすら否めない。

最近は生成AIにおいても、画像を創作する基となるデータに、児童ポルノが使われていたことが報じられた。実在する子どもへの人権侵害や犯罪の懸念は、より深まりつつある。

渡辺 真由子 (twitter)
(出典:『メディアと人権ジャーナル』2023 Vol.1 No.1、p.4 /一部加筆修正)


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