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みつばち🐝☆パニック

virusの特効薬「大根のはちみつ漬け」

virusによる感染症が全世界に蔓延し、感染を食い止めるため人々が外出を控えているその時、エヌ国の科学者Aが、同国エヌ県エヌ郡Z村では、周辺地域の罹患率・死亡率に比して感染症発症率がゼロのまま推移していることを発見した。すぐさまAを含む県の調査チームが派遣され、Z村村民の生活状態を聞き取った。科学者Aに、村民は「私たちの地域では、少しでも喉の痛み・咳・だるさを感じたらみな『大根のはちみつ漬け』を食べています。ただ、大根のはちみつ漬けには『多くの蜜をすすらんとすれば災い飛来せん』という言い伝えがあります」と話した。Z村村民における他地域との特異的な生活特性は、「大根のはちみつ漬け食」以外にはみられなかった。

作り方は特殊ではなく、市販の大根をさいの目切りにし、はちみつにつけるだけのシンプルなものであった。調査チームがそれを持ち帰って研究した結果、大根のエキスがはちみつに溶解する過程で出る酵素が、virusがからだに及ぼす効果を鈍化させ、発症しない程度にまで1日で弱体化させることがわかった。この酵素は、他の食品では見られないものだった。

大量製造による弊害―変種発生

これが全世界に報道されると、世界各国で「Z村特産 大根のはちみつ漬け」の製造が開始された。畑はほぼ全て大根栽培に切り替えられ、使用されていない山林地域を活用して、大根の大量生産、ミツバチの大量養蜂が全世界で競争的に繰り広げられた。原料は乱立した大根のはちみつ漬け工場に搬入され、加工され、医師の診断の下に処方される医薬品となり、医療保険の対象ともなった。
大根のはちみつ漬け効果により、世界の一部地域では感染症が収まり、人々は外出禁止が段階的に解除される方向になった。しかし、原料を生産できない地域では、大根のはちみつ漬けが作れず、感染症の広がりを止められない。世界には「大根のはちみつ漬け格差」が生じ、緊張が高まりつつあった。

しかしちょうど同時期、急激に増加した養蜂により、ミツバチの個体数は自然のバランスの閾値を超えた。あたかもイナゴが大量発生すると攻撃的な個体に変化するように、ミツバチも変異。凶暴な変種ミツバチは養蜂場から町に出て人を襲うようになり、大根も食い荒らしていった。

人は再びおこもり生活に入らざるを得なかった。外には出たい。でも、出れば変種ミツバチに襲われる。今度は買い物にも出られない、完全な軟禁状態だ。全世界で絶体絶命の恐怖。「Z村の言い伝え通りだった」と、科学者Aはつぶやいた。

ミツバチの危機

町に出た変種ミツバチは、数日の間にありとあらゆる食品を食べ尽くした。次第に食べるものが少なくなると、免疫が低下。そこへ、人間にのみ流行していたvirusに、変種ミツバチにのみ感染する亜種が生まれ、変種ミツバチ間で感染症が流行しはじめた。

ミツバチは、種の一部が感染症とわかると、本能的な集団行動を取りはじめた。健康なミツバチだけ完全にぴったりとハチの巣にこもり、感染した変種ミツバチは、回復すればハチの巣に戻りうけいれられたが、その他は自発的になるべく巣から遠いところに行き、死んでしまうのだった。

ときおり、健康なミツバチの数匹だけが巣から外に出て、仲間の死骸の上で、犠牲者を鎮魂するかのように旋回するのを、各国の無人カメラは捉えていた。その映像は、全世界に放送された。

ミツバチに教えられた連携

変種ミツバチの数が減り、人は外に出ることができるようになった。ただし、ミツバチの集団行動に教訓を得て、「こもるべき時はこもる」を全世界で徹底することとし、ロボット等による完全な自動配達化で食料・生活必需品等の配給システムが構築された。

また、あやまちを繰り返さぬよう、国連の第1回世界大根のはちみつ漬け会議にて、大根のはちみつ漬け製造のスピードを全世界で計画的に行うことが採択された。巣におこもりしていた間に、健康なミツバチは豊富なローヤルゼリーを多く摂取し、適応力が増して、極地以外ほぼ全世界で養蜂可能になった。大根は変わらず一部地域でしか栽培できなかったが、検疫を緩和、生鮮品の空輸を一部解禁し、現地で飛行場の近くに施工された大根のはちみつ漬け工場に直接搬入し加工することで外来種が入り込むリスクを軽減した。

第2回世界大根のはちみつ漬け会議にて、「大根のはちみつ漬け、持てる者は、持たざる者に」というスローガンで一致。ミツバチは全世界の連携のシンボルとなり、ミツバチ柄のロゴマークが作られた。大根のはちみつ漬けと協力体制をもって、全世界は感染症の危機を乗り越えたのだった……。


っていう夢を見ました(うそ)。


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