7月9日【1】

明け方になるにつれ、なぜか陣痛の間隔が空いてくるようになりました。眠れる時間が少しでも長くなることは嬉しいけれど、果たしてこれはいいのか?よくないよね?赤ちゃんの心拍を確認してもらうと、問題はなさそうで一安心。子宮口チェックをすると、まだ開いてはいないけれど、頭は触れる、と助産師さん。赤ちゃんも頑張って出てこようとしてくれている。そう思うと超絶疲れてはいるものの、母ちゃん頑張る!という気持ちになるものです。

陣痛促進剤を早めに投与できるように、早朝から院長先生に診断してもらうことに。エレベーターは使わずに、少しでも陣痛を促そうと階段で向かいました。まだ開いていない院内を歩くのは不思議な感じ。夏休みの、人がいない学校みたい。心が静かになるような、でも少しざわつくような。そんな私のセンシティブな気持ちをばっさり断ち切るように、朝から元気な院長先生。うん、まぁ確かに、元気はもらえたんだけど・・・。「できるだけ下から産めるようにしましょう。ただ、もう破水もしているし、念のため、帝王切開の準備もしながらね。でも、できるだけ下から産めるように頑張りましょうね。」と言っていただきました。破水して病院に来てすぐは、あまりの痛さに「帝王切開にする!!」と言っていた私ですが、ここまで痛いのを耐えてきたんだから、下から産みたい!隣の分娩室で起こった出産劇を、私も体験したい!!「頭見えてるよ!」とかいうの、したい!!!

そして再び、分娩室へ。おなかにセンサーをつけ、点滴の針を刺し、いざ、促進剤を投与。ついに、やっと、今日こそ、あの出産劇が私にも!!と嬉しいような怖いような気持ちで陣痛を待つ私。がしかし、助産師さんの顔がなんだか暗い。促進剤を入れると、どうも赤ちゃんの心拍が下がるというのです。え、どういうこと?じゃあどうしたらいいの?赤ちゃん、どうなるの?恐れていた死産とか絶対に嫌!と思っていると先生がやって来て、助産師さんと相談。そして子宮口チェック。「促進剤を入れると赤ちゃんがしんどそう。これだと促進剤はもう入れられない。破水してから時間も経っているし、赤ちゃんのことを考えると帝王切開にしたほうが良さそうです」と。院長先生もやって来て、「帝王切開がよさそうだね」と。

そんなこと言われたら、もう同意するしかない。赤ちゃんが無事に産まれてくれるのが一番なんだから。夫と少しだけ話をして確認し、「帝王切開にします」と伝えると、先生が同意書を読み上げてくれました。万が一にでも起こり得ること、子宮破裂とか、なんだか怖いこと。めったに起きることではないであろう事柄が次々に読み上げられ、それを私は涙を流しながら聞いていました。自分でも何の涙かわからなかった。人生初の手術に対する恐怖なのか、下から産めない悔しさなのか、ゴールがやっと目の前に来た安堵なのか。わからないけど、涙が溢れて止まらない。きっと全部なんだろう。そして、もっといろいろなんだろう。夫が右手を握ってくれている。左後方では母も泣いている。まさかこんなことになるとは夢にも思わなかった。三日間も陣痛に耐えてきたのに、結局帝王切開になるだなんて。そんなことを考えながら、なんだか思うように力が入らない右手で同意書にサインをしました。

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