帝王切開について

 病室で一晩明かしたのですが、つい数時間前までこれでもかというほど出っ張っていたおなかがすっかり跡形もなくなっていること、寝返りを打てないほど手術跡が痛むこと、水が飲めなくて氷を舐めていたこと、同じ部屋で夫が寝ていること(見えないけど)、ほんの少し歩いた先の保育器に息子がいること、なのにまだこの腕に抱けていないこと、あらゆる事実が現実ではないような、ぼんやりとした一晩でした。麻酔の副作用?みたいなものもあったのかもしれないし、発熱していたこともあったかもしれないし、なんだかとってもふわふわとした心地でした。そう、この発熱。結局退院する直前くらいまでは38度くらいのままだった記憶があります。本人いたって元気だったので発熱の実感はなかったのですが、毎日何度か体温を測ると毎度そのくらいでした。「まだ熱ありますねー。しんどくないですか?」とやたら助産師さんに聞かれたけれど、「え、まだそんなありますか」と言っていたくらい。こちとら、そらおなか切ったんやから熱くらい出るわなーくらいの感覚でした。熱より手術跡の痛さのほうが勝ってるんですけど。

 朝のうちに本来泊まるはずだった部屋に移動し、用事を済ませるためにひとまず家に帰る夫を見送り、なんだかぽっかりとした時間を過ごすことに。夫もいなければ赤子もいない。うーーーん、暇。すると、手術のときについていてくれた助産師さん(帝王切開経験者)がやってきて、赤子にはお昼前には会えることを伝えに来てくれました。あぁ、ようやく会える、でもまだまだ先やなぁなんて思っていると、助産師さんが、「帝王切開になったこと、後悔してませんか?大丈夫ですか?」と訊ねてきました。「あ、はい、大丈夫です、息子も無事産まれたしー」と質問の意味もよくわからないまま答えたのですが、どうやら世の中、帝王切開で子を産んだことに得も言われぬ感情を持つ方が多いようなのですよ!!これは私びっくりしたのですが、自然分娩で産むことが素晴らしい!とされているようなのです。

 確かに、私も陣痛で苦しんでいるときは「帝王切開にして!」と、さもそれが楽なことでもあるかのように思って叫んでしまった経験がある(そっちのほうが後で辛いよ!と助産師さんに諭された)。出産に関しても、最初は助産院がいいなと考えていたし、無痛分娩も選ばなかったから、どちらかと言えば自然分娩賛美寄りの思想だったのかもしれない。下から産めないってなったときは、よくわからない涙も出た。でも、何が大事って子どもが無事に産まれてくれることが一番で、分娩方法なんてなんだっていいというのが産まれてきた子どもの顔を見たときの率直な感想。無事に産まれて来られない子だっているし、無事に子どもの顔を見られないまま亡くなってしまう母親だって世の中にはいるんだし。母親も子どもも無事なのが絶対に一番なはず。どんな方法で産まれてきたかなんてどうでもいい。

 だけど!世間には「帝王切開ママの会」という会が存在するらしく、なんでも「帝王切開による出産で、手放せない想いを抱えている方が沢山いる」らしい・・・。帝王切開ってそんなにダメなんですかね?そんなにモヤモヤな思いを抱えないといけないほどの事なんですかね・・・?聞いた話によると、義母に「満足に自然分娩もできないのか」と嫌味を言われた人もいるようで(ちょっと年齢上の方ですが)、残念ながら「自然分娩>帝王切開」という優劣が当たり前に浸透している模様。なんのこっちゃ!とちゃぶ台ひっくり返したくなります。幸い、私は術後の経過は順調で(発熱と貧血はあったけど本人はまったく自覚なし)、麻酔の副作用でよく聞く頭痛もありませんでしたが、助産師さんがおっしゃったように術後に辛い思いをする方が多いよう。帝王切開は楽して産んだ、なんて言われることが多いけれど、全然そんなことない。

 なんにしたって、命を産み落とすって簡単なことじゃない。人によって出産ドラマはそれぞれだし、分娩方法だってそれぞれ。それでいいじゃないか。自然分娩が偉いわけでも、帝王切開が楽なわけでもない。出産お疲れ様!だけでいいじゃない。と声を大にして言いたいです、私は。そして、これから出産する方には、全力で無痛分娩をオススメします!!!

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